断髪小説 強制家庭散髪(刈上げおかっぱ)

莉子は小学校4年生、いままでは見た目にあまり興味がなく、ずっと父に適当に髪を切ってもらっていたが、最近、はじめて同級生に好きな男の子ができて、リップを塗ったり、コロンをつけたり、ちょっとしたオシャレにも気を遣うようになっていた。

「莉子、お前、髪伸びたな。切るか」
「え、そんなに伸びてないよ?また今度にしよう!」

あまり気にしていないようなフリをして、話を流そうとした莉子だったが、
父の発言を聞いた母が、いつの間にか、床に新聞紙をひいて、文房具用のはさみと、父用のバリカンを用意していた。

「えっ、なんでバリカン?」
「うん、夏だし、これから中学受験の勉強で髪のケアに時間なんてかけていられないでしょ、私も短くしたほうがいいと思っていたのよ!」
「嫌だよ、短くしたくない!」
「駄目よ、これも家の決まりなんだから、従いなさい!」

莉子の頭の中には、好きな男の子が、綺麗なロングヘアが好きだという情報が駆け巡っていた。

「ならできるだけ長くしてほしい」
「長めにしとくわね」

母のあまりに素直な言い分に、本当にわかっているのかは疑わしかったが、これ以上何か言って、逆鱗に触れるのが怖かったため、しょうがなく引き下がることにした。

子供用の小さな椅子に座り、穴の開いたゴミ袋をかぶせられ、霧吹きで髪をシュッシュと濡らされた。
改めて櫛でといた髪の毛は長く、全体は、腰に届くくらい、前髪も、口のあたりまで伸びていた。

シャキン

大きな音が鳴り、不安になったが、頭を振って確認すると、肩くらいになっていて、一安心した。

シャキン、シャキン、シャキン

母は、その長さでぐるりと一周髪を切り、もう一度、櫛を通した。

「じゃあこれでおわ、「シャキン」
「え」

もう一度、前から入ったはさみは、耳の穴の横の長さを通り、莉子の髪を一気に10センチほど切り落とした。

「ちょっと!やめて!切りすぎだよ!」
「まだまだ切るわよ!」

ゴミ袋から手を出せない莉子は、鏡もない状態で、自分の姿を想像することしかできなかった。
頭を振って確認しようとしたが、母に動かないように強く頭を押さえつけられた。

シャキン、シャキン、と一周、その長さで乱雑にはさみを入れた母は、前髪を持ち上げた。

「ねぇ、前髪だけは長くしてほしいんだけど…」
「駄目よ、勉強の邪魔になるでしょう、乾かすのにも時間がかかるし、目も悪くなったらどうするの」

無理やり目を瞑らされた莉子は、眉のかなり上の方ではさみが閉じるのを感じた。

「もうちょっとかなぁ?」
「ちょっと!どんだけ切ったの?」
「眉にかからない位よ」

そうは言っているが、母が前髪を押さえて調整しても、上を向いた莉子には影など何も見えなかった。

これで終わりか、と思い、ゴミ袋を脱ごうとすると、まだ駄目よ、と止められた。

カチ、ヴィーン…

「え、ほんとにそのバリカン使うの?」
「そうよ、ちょこっと襟足を処理するだけよ」
「絶対嫌だよ!」
「駄目、また我が儘言ったから、もっと短くするわね!」
「ごめんなさい、これ以上、短くはしないで…」

莉子の願いもむなしく、襟足からジョリジョリと莉子の髪に入り込んだバリカンは、アタッチメントの長さも長めで、母が言うとおり、少し襟足を整える程度だった。

しかし、母は先ほどの莉子の生意気な発言と、全体的なバランスを見て、付けていたアタッチメントを外し、3mmのアタッチメントに替えて、刈り上げ直しはじめた。

ヴィーン…ザリザリザリザリ…ガリガリ…ザリザリ…ヴィーン…

頭を前に倒して押さえつけ、何度も何度もバリカンを入れたことで、横から後ろの耳の穴のラインから下は全て、ごま粒のように青く刈りあがった。
もみあげも何度も執拗に剃り落とされた。
襟足の部分は、アタッチメントなしで際ぞりされてしまい、より青白さが目立っている。
いまどきこんな髪形をしている人は、男の子でも見かけないような、とても恥ずかしい姿になってしまった。

「はい!終わり、お風呂で髪流してきな!」

その声にダッシュで洗面所に向かった莉子が見たものは、衝撃的な髪型だった。

分厚い前髪は眉上3センチでピシッと定規で引いたように揃っている。
横は耳たぶがしっかりと見えるくらいで、ボウルを被ったようにまっすぐに揃えて切られている。
後ろはよく見えないが、手で触ったところは、ジョリジョリとした、たわしのような触り心地がした。
莉子の髪は量がかなり多く、広がりやすいため、ダサさがより際立っている。
もはや女の子の髪形とは思えない。

「どうしよう、恥ずかしい…こんな髪型で、学校なんて行けないよ…」

持っていたヘアアイロンでなんとか長さを出そうとしても、ほとんど挟む髪もなく、諦めるしかなかった。
お兄ちゃんのヘアワックスで髪を整えようとしてみても、髪が短すぎて、効果がなかった。

それに反して、母はこの髪型をとても気に入り、父も賛成し、莉子は中学受験が終わるまで、この髪型をキープさせられ続けたという。

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