マガジンのカバー画像

【詩集】宮崎にて

24
宮崎を舞台にした詩の作品集です。
運営しているクリエイター

#現代詩

【詩】熱波

目抜き通りの 真上の陽が すれちがう 波の背中を照らしている 足どりも 羽ばたきも あまね…

【詩】鬼の洗濯板

今日の海はおだやかだ 陽にさらされた 岩のおもてを あおい波が叩いている 砂が磨く奇岩の襞…

【詩】尺蛾(キオビエダシャク)

黒い羽に黄色い帯の模様をまとい 小さいアゲハをよそおって 夏の真昼を舞っている 風にゆらめ…

【詩】岬馬

海を見おろす丘の背で 澄んだ瞳の鼻づらが 黙々と 草の若芽を喰んでいる 葉をむしり取る乾い…

【詩】青田

梅雨の晴れ間のあぜ道を 山風が、駆けてゆく 瀝たる汗を、吹いて運んで 滾ぎるほてりを、拭い…

【詩】水鏡

風もなく、波のない川床に 水面は、ひらたく張りついて 土手のみどりを、うつしている たいら…

【詩】逆流

川は、河口をみつめている 水面を、おびただしく逆立つ波が 山を目指して、のぼっていく 平然と、とめどなく 力にまかせて、流れてゆく 川すじは、穏やかに受け止める 騒ぎ立てることもない 行き場を迷う、岸辺の影に 陽のゆらめきが、目をこらす 押し寄せる、潮目の風 岸辺をさまよう、怒濤の残滓 ひとり、遠いまなざしに 波の行く方を、追いかけて 逆波は、川水流に竭きるだろう 何もなく、束の間にしずむだろう 高みを目指す野望の果て 大地の定めに、あらがうもなく ©2023  Hi

【詩】咆哮

海が、嚆々と鳴っている たたみかける波の向こうから 絶え間なく、波の砕ける向こうから 片時…

【詩】古墳にて

塚は、悠々と横たわっている 胸を張り、足を伸ばし 黙って、空を見上げている なだらかに、草…

【詩】落流

ため池は、さざ波に鎮まり 枯れていく、山の景色を映している 黒く光る鏡に、水鳥が立ち止まり…

【詩】野焼き

遠い田の、畦を焼く煙のにおいが たなびいて、かすかに鼻を突いている 枯れ色の、風にのってや…

【詩】回廊

青々と流れる平らな川面を 波が静かに、遡っていく 水をなでる海風が 川の風とぶつかり合って …

【詩】ぬくもり

冬の川面は浅く、川床に張りついて 鎮んだ水鏡の中を、対岸の車が行き交う 気まぐれなさざ波が…

【詩】出航

埠頭はすでに帳を降ろして 真新しい船底が、赤く照らされている 呼び笛の合図が鋭く響き 口を開けた船腹に、積荷の列が導かれる 太い音色の汽笛が鳴ると 艫綱が解かれて、鼓動を高める 煙のしぶきを噴きあげる 岸壁のむこうは、漆黒の闇 船出を見送るのは、青い標の点滅だけ 東に向かう夜行船は、波に漂う水蜘蛛だ 黒い海原を、頼る灯もなく小さな舵で 約束された夜明けを信じて 行く手に臨む水平線に、朝の光が迸り 明々と、舳先を黄金に照らすだろう 神々しい、日の出の炎を浴びるだろう ヨー