1人プロダクトデザイナー体制で「共創」の場をどうデザインしたか[Designship2024 登壇内容書き起こし]
こんにちは!株式会社スタメンの森田です。
こちらの記事はDesignship2024のスポンサーセッションで登壇した内容をまとめたものです。
私の現状について
この記事では、環境要因的に「共創の場」を作った要素が強いため、まず初めに私の会社での状況について簡単に紹介させてください。
私たちが日々開発している「TUNAG」というサービスは、利用ユーザー数がこの9月に100万人を突破しました。
そして、私はTUNAGに関わるビジネス職や開発職が77人在籍しており、その中でプロダクトデザイナー1人という体制で日々の業務を行っています。
そんな中で、私の普段の働き方は、PdMやエンジニアがいる2つ〜3つのプロジェクトを横断することがしばしば。
この記事では、1人プロダクトデザイナー体制で隣接する職種の人たちとの共創を強化するためにやってきた事例をいくつかご紹介します。
事例1. ノンデザイナーでもデザインができる環境づくり
普段通りに働いていたら、とても困ったことが起こりました。
予想がつくかもしれないですが、「圧倒的にデザイナーの手が足りない」という問題です。
抱えている仕事は、ユーザー画面や管理画面のUI/UX、キャンペーンバナー画像の作成などなど。
打破するための選択肢はいろいろあったのですが、ここで思い立ったのは結局は**「価値を提供することが重要」**という考えです。
今までデザイナーとしては作ることが求められることが多く、個人的にはかなり悩ましかったのですが、デザイナーが手を全て動かす必要はないと考えました。
そこで、「デザイナーが作る」ことを手放して、「ノンデザイナーでもデザインができる環境を作る」ことを始めました。
ノンデザイナーでもデザインできる環境を作るために行ったこと
エンジニアが管理画面を作れるようにガイドラインを整備する
ビジネス側の運用担当がキャンペーンバナーを作れるようにバナーテンプレートを作る
いずれも成果物のデザインレビューは行う
1. エンジニアが管理画面を作れるようにガイドラインを整備
管理画面のUIについてはエンジニアが迷わないよう最低限のガイドラインを作成しました。
これによって、後から当初の予定になかった追加開発についても、デザイナーのリソースなどの問題を気にすることなく引き受けることができて、エンジニアがワイヤーやUIを作る過程からアサインされ、爆速な開発につながりました。
2. ビジネス側の運用担当がキャンペーンバナーを作れるようにバナーテンプレートを作る
キャンペーンにおいてはユーザーへの提供スピードもUXに大きく影響すると考えています。
必要なコンテンツパターンの洗い出しを運用担当の方と行い、中長期的に使えるようにいくつか展開パターンを用意しています。
運用担当がコンテンツを考えてリリースまで一貫して行う体制を早期に作ったことで、スピーディなキャンペーンの配信が可能になったことと、その後も自走できる運用を作ることができました。
3. いずれも成果物のデザインレビューは行う
ガイドラインやテンプレートを整えてもなかなか考慮できないしづらい点があることを想定して、ユーザー視点や中長期的なプロダクトの目線でレビューを行うことでできる限り質を担保しました。
例えば、管理画面の場合は社内でしばらく運用する想定でしたが、中長期的な観点で外部パートナーに依頼する可能性があったので、それに合わせて運用を考慮した設計にするためレビューを行いました。
デザイナーが作ることを手放し共に創ることを選んで得られたこと
エンジニアやビジネス側にかなり助けられての共創の事例をご紹介しましたが、ノンデザイナーにデザイナーが普段制作する時に使っている思考を共有することができました。そして、ノンデザイナーがユーザー視点で考えることに繋がりました。
「ここの体験に懸念があるからユーザー視点での意見が欲しい」などのデザインレビューへの要望や、自ら「ここの体験を考えることが難しいからガイドラインが欲しい」などの意見が出てきました。
自分たちの普段の職種の範囲では考えないようなユーザーの体験について考えるきっかけになったことと、ユーザーの体験のために自分たちにどのような行動ができるかをみんなが考える貴重な機会になりました。
事例2. スピードと質を両立するためのエンジニアとのコミュニケーション
デザインの細かな装飾にエンジニアが気づくことができず、実装もれが起こってしまった経験をされているデザイナーの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ある時、デザイン通りに調整してもらえるように数値を伝えても、「開発生産性を考慮するとこちらの方が良さそうなのでは」という意見をもらいました。
デザイナーとしては細かいけれど品質を左右する部分と認識しているのですが、デザインカンプだけではエンジニアにデザインの意図を伝えきれていないことに気づきました。
この件だけではなく、普段からも開発職種やビジネス職種関係なく、「早くリリースしたい」「開発生産性を大事にしたい」「実現可能性を考慮してほしい」など、周りの要望とデザインの品質が対峙するシーンが多くあります。
私だけでなく、他のデザイナーさんも他職種と対峙するシーンがあるのではないでしょうか。
私が、普段からも多くのエンジニアに囲まれている中でこの状況を打破するために思い出すことは、**デザイナーの強みは「作ること」**であることです。
デザイナーの意志はプロトタイプを見せて伝える
私がデザイナーとしてデザインの価値を伝えなければいけないシーンはたくさんあります。
この時になかなか伝わらないのはユーザー視点です。
私だって完全に理解することはできません。
自分自身としても情報を収集をするため、客観的に判断できるようにするためにしていることでもありますが、他の人に価値を伝えるための手法として、プロトタイプを作って見せて触ってもらうことを大事にしています。
比較したサンプルを作る
この時の具体事例としてやった事としてはすごくシンプルで、比較したもののサンプルを作りました。
Figmaでプロトタイプを作り、スマホを持っていって、比較的リアルに近い状況を作って比較してもらう。
実際に行間の違いを比較したサンプルをエンジニアに持って行ったことがあるのですが、「本当だ…!こんなに違うんだ!」と感動してくれたことがありました。
実際にチームにも体験してもらい、ユーザーにとって価値のあるものを一緒に作っていく
これまでに多くのエンジニアに囲まれる中でデザイナーは私一人で議論したことがありました。その中でデザイナーとしての視点を持っているのは、もちろん私一人です。
今までエンジニアが蓄積してきた知識や経験をもとに議論が進んだり、空中戦になってしまうこともあるのですが、その状態からデザインの価値を証明するために一番強かったものは実物に近いものを作り、体験してもらうことでした。
そうすることで、エンジニアが主張して得ようとしているスピードや質と、得られるユーザー体験を自身で天秤にかけながらユーザーにとって価値のあるものを議論して作ることができるようになりました。
事例3. ユーザーへの価値提供のために行う全社への共有と検証
過去に社内からビジネス職からは新機能について十分に把握できておらずお客様に紹介しづらく感じていることや、開発職からはユーザーの声から課題を特定したいなどの声を社内からもらっていました。
そういった状況で始めたのが、全社を巻き込んだリリース共有会です。
テスト環境をインストールした端末を用意して、全社員に新機能を体験してらもらう社内イベントを行いました。
IS、CS、マーケティング、財務経理などの職種関係なく、自社プロダクトのTUNAGを通して声かけを行いました。
この時は、全社で80人ちょっとくらいだったのですが、東京と名古屋で50人ほどの人たちに参加してもらいました。
写真を見ると、端末を見ながらペンと付箋を持っているのですが、これは操作して疑問に思ったところを付箋に書いてもらっています。
ユーザビリティテストほど厳密ではないのですが、新機能をお披露目すると同時に、課題を収集しています。
この付箋を後で回収してカテゴリー分けをして事業開発やプロダクトチームみんなで分析を行います。
そして社内から出てきた声をもとに、次の開発の参考にします。実際にこの時はフェーズ2への改善に活かすことができました。
実施前はビジネス職へ情報共有がうまくできていないことがありましたが、実施した後は全社が新機能について知ることができ、お客様にも紹介しやすくなりました。また、プロダクトチームがユーザーの声を元に課題を分析できていなかった点も、社内からではありますがプロダクトの改善点を集めることができました。
時間が少ない中でも価値を届けるところまで責任を持つ
デザイナー一人体制なので、正直言って時間がたくさんあるわけではありません。
その中でも、価値を届けるところまで責任を持つために時間を使うことは大切にしています。
プロダクトを作っても利用されなかったら結果は出ません。利用されるために、顧客との窓口になってくれているビジネス職への伝達も、顧客へ価値を届けるためにしっかり行うようにしています。
まとめ
今日ご紹介したのは、豊かな選択肢から選んだというよりも、半ば環境要因なところもあり共創することを選んだ事例です。
その中でも得られた学びとしては、プロダクトデザイナーは1人だけど、チームでプロダクトを作っていることです。
「自分1人しかいない」ではなく、視野を広げて隣接する職種に頼り、共創の場を作ることで、デザインが及ぼす影響を体験してもらい、理解者を増やすことができました。
そして、チームのみんなが同じミッションを達成するために、自然と周りもユーザー視点を持つことに繋がりました。
いつしか、共創を通してデザインを自然と啓蒙することで、誰しもが「人のために設計すること」を組織に浸透することができたらいいなと、個人的に考えています。
最後に
ここまでお読みいただいてありがとうございました!本記事では、スタメンのプロダクトデザイナーが普段行っている共創のやり方についてご紹介させていただきました。
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