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意味が分かると怖いグラフ

0.初めに

まずは、動画をご覧いただけるとうれしいです。

コロナ禍が広がってから一年半がたつのに、いまだに一日の感染者数に一喜一憂しています。これからどうなるのかが見通せず、不安や不満ばかりが募っています。

じゃあ、今の状況がどうで、これからどうなるのか。それが分かるようにシミュレーションしてみました。

1.これまでの感染拡大と今回の感染拡大の違い

昨年末から今年の夏にかけて、大きな感染の拡大は3回ありました。
1回目は昨年の12月末から今年の3月、2回目は今年の4月から6月、3回目は7月から現在です。

1回目は、緊急事態宣言の発出が1月7日(1月8日から実施)となっており、新規感染者数が減少に転じたのは、1月11日からで、新規感染者数が最少になったのが3月2日です。
このときの対策の特徴は、感染リスクの高い飲食店に集中した対策を行ったということが挙げられます。
(参考:令和3年1月4日総理会見

このときの減少率は、1週間で2%程度です。


2回目は、緊急事態宣言の発出が4月23日(4月25日から実施)となっており、新規感染者数が減少に転じたのは、5月14日からで、新規感染者数が最少になったのが6月21日です。
このときの対策の特徴は、飲食店への対策に加え、ゴールデンウイーク期間を活用し、デパート、テーマパーク、商業施設等への休業要請、テレワークや休暇の活用による出勤者の抑制を行ったということが挙げられます。
(参考:令和3年4月23日総理会見

このときの減少率は、1週間で4.5%程度です。


では、3回目(今回)はどうなっているのか。
緊急事態宣言を7月8日に発出(7月12日から実施)し、東京都を改めて緊急事態宣言の実施区域としました。
同じタイミングで、お酒の提供に関する国からの要請が批判を浴び、直ちに国は要請を撤回しました。
((1)金融機関から飲食店に酒の提供を止めるよう働きかけること、(2)酒屋から飲食店に酒の取引の停止を求めること。)

その後、7月30日、8月17日と緊急事態宣言の実施区域の追加が行われていますが、現時点(8月21日時点)で新規感染者数の増加トレンドに歯止めがかかっていません。


2.さらに怖くなる数字

試算によると、12月末時点で約15,000人(減少率2%/週)、約10,000人(減少率4.5%/週)という新規感染者数になります。
過去の状況からみると、楽観的に考えても、1週間の減少率が4.5%を下回ることは難しいと思います。

そうすると、8月15日から12月末にかけて、累計で、216万人(減少率4.5%/週)、255万人(減少率2%/週)以上の新規感染者が出てくるという計算になります。

8月19日時点での新型コロナウイルスの感染者(陽性者数)の累積が122万人です。これは、昨年からの一年半の数字を、これからわずか3か月半で1.8倍~2.1倍ほどの新規感染者がでるということです。

すでに、在宅療養中での死亡や新生児の死亡など痛ましい報道が出ています。若い人も含め、約75%(4人に3人)に後遺症があったとの研究もあります。
(参考:COVID‐19有識者会議HP「新型コロナウイルス感染症後遺症について」森岡慎一郎 国立国際医療研究センター病院 国際感染症センター医員)

この状況は、長くかかる可能性があります。


3.どうすればいいのか


国や自治体の対策にいろいろな批判があると思いますが、まず、一人ひとりがコロナに感染しないように行動することが大事だと思います。

国・自治体の対策がダメなことと、自ら進んで感染したり、感染を広げる動きをするのは別です。

体調が悪いのに旅行に行く。マスクをつけない。お酒を飲んで大声で話す、大勢でわいわいと食事をする。テレワークなんかしないで出勤しろと言う、体調が悪い人に仕事に来いと言う。
そんなことはやめましょう。

今でも外出を控えて、対策を徹底している人は、それだけで多くの命を救っています。

だんだんと、自分のため、周りにいる家族、友人、知人のために、感染予防を徹底しないと、命にかかわる状況になっています。


4.ワクチン接種の効果は?

じゃあ、ワクチン接種が進めばコロナが収まるって話はなんだったのか、との疑問がわいてくるかと思います。
これについては、別途、シミュレーションをしてみたいと思います。
しかし、ワクチンの接種が相当程度の割合まで進み、効果が明らかに出始めるまでは、過度に期待しない方が安全なのは間違いありません。


5.備考 ―データの作成方法(技術的な話なので、読み飛ばして可)―

〇元データ
使ったデータは、新規感染者数については厚生労働省HPのオープンデータ、緊急事態宣言の発令については内閣官房HPの新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言のページからそれぞれ取りました。
新規感染者数については、8月15日までのデータを使っています。

緊急事態宣言については、対象地域が頻繁に追加、変更されているので、見やすさの観点から、東京都を対象に定めと決めた時期を区切りとしています。
なお、緊急事態宣言の実施日とは、ずれています。これは、緊急事態宣言の実施前から報道や総理の会見を通じて公になっていることによる心理的な効果(アナウンスメント効果)を含めた方が適切だろうと思ったためです。

〇7日間平均の考え方
新規感染者数については、曜日によるずれが大きいため、7日間平均(7日分の感染者数を足して、7日で割った数)にした上でグラフを作っています。

〇減少割合
1回目は、1月11日(6488.7人)をピークにして、3月2日(973.9人)をボトムとし、この50日間で減少割合を計算しています。減少割合は、(6488.7-973.9)/(6488.7)=0.85
50日間で0.85減少しているので、一日当たりの減少割合は、0.85^(1/50)= 0.0032

同様に2回目も5月14日(6440.6)をピーク、6月21日(1423)をボトムとし、38日間の減少割合から計算しています(この場合の一日当たりの減少割合は、0.0065)。

なお、例示で出した1週間で15%減や10%減は、比較のために定めた数字です。

〇今後の推移
8月9日(14,198.3)から15日(16514.7)までの新規感染者数の7日間平均の増加割合を一日当たりにすると、1.022。この拡大が8月15日から2週間は続くと仮定しています。
これは、これまでの傾向からすると緊急事態宣言の発令の効果が、伸びの抑制→感染の減少へとつながるまでに一定の時間がかかっているためです。
また、お盆での移動による感染者数の増加も考えられることから、直ちに伸びの抑制にはつながらない可能性が高いと考えたためです。

その後、8月30日から減少に転じるとし、減少率を一日当たり0.32%(1回目と同水準。1週間で2%の減少。)、0.65%(2回目と同水準。1週間で4.5%の減少)として計算しています。

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