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T.M.Revolution×水樹奈々「Preserved Roses」のMV内容を考察してみた話

概要

先日、自動再生にしていたYoutubeから、Preserved Rosesが流れてきたのでつい懐かしくなりました。人気アーティスト同士のコラボということで、当時とても話題を呼んだのを覚えています。あらためてMVも見たんですが、ストーリーの理解が追いつかなかったので少し検索してみました。が…「TMRのMVはいつも謎でその後のリリースツアーを経ても答えが分からない」とする質問サイトの回答や発表当初の設定やトレーラー動画を紹介するサイト記事しか出てきませんでした。発表当初の設定とは、西川貴教水樹奈々両者がそれぞれ過去と未来、黒と白の吸血鬼というものです。

よく分からなかったので


その後、通販で完全版MVが収録されたDVD付きCDがあったので、取り寄せて見てみました。なんとこのMV、全編で10分オーバーと、短編映画並みのボリュームなのです。Youtubeに公式がアップしている動画がフル音源なのにも関わらず[Short Edit]とされている理由がなるほどここに…
全編を見て状況が分かり始めてきたので、時系列の整理や考察をしてみることにしました。
この記事に書いてある各名称(神の男、研究所、科学者、吸血鬼など)のMVの台詞として登場しないものは、便宜上そう記載しているものです。
なお、この考察はMV基準で行っているため、ヴァルヴレイブ本編や西川さんのライブ演出とは矛盾点も出てくるかもしれませんが、そこはご容赦ください。革命機ヴァルヴレイヴは衝撃のラストを味わえるおすすめアニメです。

MV完全版文字起こし


神の男(奥田英二)がどこまでも続く白い砂漠のような場所に立っている。
神の男「解を求めて積み上げてきた膨大なデータは、今では障害という、怪物に成り下がった。勇気ある初期化を選択すれば、私は救われるのだろうか。」

研究所内モニタールーム。モニターに映るカプセル内に眠る白の吸血鬼(以下、西川)にはたくさんのケーブルが繋がれ、科学者達は西川に対するアクションを遂行していた。
科学者「α線開放、β線開放、意識レベル0.75%を維持。
カテゴリーCからカテゴリーHまで、異常ありません。
M効果をクリア。これよりガイドポジションへ移行します。」

神の男の手の上に複数のキューブが出現する。主人公達の世界は、その中に収められていた。

黒の吸血鬼(以下、黒水樹)
パソコンのようなものを操作。そのキーの文字盤は削れ、劣化している。
目の前にカプセルには髪色の違う自分と同じ顔の吸血鬼(以下、白水樹)が眠っていた。黒水樹は眠りに入る前の白水樹の記憶を保有していた。
エンターキーを押下。

研究所モニタールーム
カプセル内の西川の瞼が動く
科学者「主任。侵入者です。」
主任科学者「侵入元は?」
科学者「別のサンプルです。」
主任科学者「………。」

西川が覚醒する。
現場に急ぐ科学者たち。誰もいなくなったモニタールームへ別の科学者が入ってきて、非常ボタンを押す。警報音とともにミストが発生する。
カプセルに入れられている現状に驚く西川。遠隔操作によりカプセルの蓋を開ける黒水樹。

いきなり目覚め状況が呑み込めず混乱する西川。
部屋の扉が開き自分を取り押さえようと駆けつける科学者と戦闘になるが、勝手に身体が動くことに困惑しつつも部屋から逃走する。

近未来の世界の空を、立方体が移動していた。
中は別個体の白の吸血鬼(以下、CP西川)のコックピットになっていた。
座ったままで瞼や眼球を動かすことが出来ておらず、周囲は多数のモニターに囲まれていた。

研究所の通路を行く先も分からず逃げていた西川の脳内に、情報が入り込んでくる。頭を抱えよろける西川。

黒水樹は西川の味方となる科学者を転送する。操作する黒水樹の横に、その科学者のヘルメットについているマークがあった。
味方科学者は科学者達と戦い、西川を逃がそうとするも西川の体が上手く動かず逃走できない。
味方科学者が負け、消される直前に西川に触れ、何か情報を伝達しようとする。
別の科学者に取り押さえられ、薬のような液体を打たれそうになる西川。

神の男はキューブを操作し、研究所の破壊を試みる。研究所の通路は崩壊しそうになるが、停止する。
CP西川が腕を動かし、妨害していたようだった。
自分以外の時の流れが遅くなったことに気付いた西川に、CP西川が脳内に語り掛ける。
CP西川「君は僕で、僕は君だ。痛み、悲しみ。僕たちは、すべてを分かち合う。」
空中に漂っている瓦礫の一つが飛んできて、西川の頬をかすめていく。
西川の頬から流れた血が、細切れになって消えていく。転送先は、白水樹のカプセル動力源の水槽のような場所だった。

CP西川の頬に、西川と同じ傷が出来ていた。CP西川の言葉が響く。
CP西川「君が、欲しいんだ。」

起動した動力によりカプセルが開き、覚醒する白水樹。それを見届けた瞬間倒れる水樹。
崩壊しかけた通路の穴から飛び出していく西川。
飛び出した瞬間に、その肉体は消えた。

転送されてくる西川。
その空間は、神の男のいる場所だった。
倒れたまま、西川の意識は戻らない。神の男は、イレギュラーな事態にただ西川を見つめていた。

白水樹の前に、ホログラムのCP西川が現れる。
白水樹「来たんですね。」
CP西川「何を知っている。」
白水樹「あなたが求めるもの、全てです。コールドスリープの私にアクセスできるなんて、驚きました。」
白水樹「私たちのサンプルは、THE ONEに放たれたウイルスによって、既に崩壊しています。あなたがここにいることが、その証。」
実体のCP西川のシーンへ移る。最初の通り、瞼や眼球は動いていない。
CP西川「THE ONEとはなんだ。」
白水樹「私たちの果たせなかった未来を、思いを、受け取っていただけますか。」
CP西川「…ああ。」
白水樹「私の持つ記憶を与えましょう。」
空間に出現した白い光にホログラムのCP西川が包まれる。同時に、本体のCP西川は全身及び眼球の自由を手にし、ゆっくりと瞬きをした。

考察&解説


・タイトルの「Preserved Roses」とはコールドスリープ状態の白水樹のことだと思われます。
・神の男が最初に言った「障害」とは、CP西川の逃走と白水樹のコールドスリープにより知識データへのアクセス権が失われてしまった状態。
・α線とβ線とは種類の違う放射線の事ですが、ここでは脳波の事を意味するものと推定されます。
・医療における意識レベルの定義について調べたところ「0だと意識清明、1だとほぼ意識清明だがはっきりしない。」とあったので、意識レベル0.75%とは少しぼんやりした状態であると推定されます。眠っている状態ではないようなので、開かないカプセルに閉じ込めておいたのも、この為だと思われます。
・M効果とはメソメリー効果の略称で、化学における共鳴効果のこと。求引性と供与性の二種類があります。つまり科学者たちは捕獲した西川を使いCP西川をおびき出そうとしていました。
・ガイドポジションの意味は調べても出てきませんでしたが、科学者達はそれまで手動作業を行っていたため、自動モードと同義のような意味だと推定されます。
・科学者達も主人公達同様、神の男によって生み出された存在の一つですが、自我を持ち、西川を捕らえその後の行動に移っています。マスクをしているためウイルスに対する耐性は無いものと思われます。
・最初に侵入した別のサンプルとは黒水樹のこと。
・冒頭に登場した科学者にもマークがついていたため、冒頭の妨害工作は黒水樹によるもの。
・西川が収められているカプセルの透明な蓋にはバイタルなどが図で表示されていますが、西川が手を触れた際の文字列は右から左に出現します。これは内側から読むことを想定しているためと思われます。(とても芸が細かい…)
・(余談ですが、西川さんの衣装やヘルメットに繋がれたケーブルやコネクタ類は全て音楽や映像の入出力機材に使用される物です。)
・西川には戦闘能力が備わっているが、意識の混濁により上手く使えていない描写がされています。科学者たちが西川をどうやって無傷で捕らえたのかは不明です。
・黒水樹のカプセルの開閉操作の前に科学者達は飛び出して行っているので、西川は意識が戻っただけもでカプセルを破壊できるパワーの持ち主だった可能性があります。
・黒水樹のPCには白水樹のカプセルや現在地と思われる図形が表示されており、黒水樹はその情報を西川に伝えようとしていました。
・CP西川の搭乗した立方体の飛んでいる場所には空と雲や他の飛行機のようなものが飛んでいるが、黒水樹たちの世界の未来であるのか、神の男のいる空と繋がっているかどうかの描写はなく、不明。
・科学者が西川に打とうとしている謎の液体の効果は、殺してしまう為のものだと思われます。西川も恐れている描写がありますし、動きを止める為だけなら最初から持って行くからです。
・CP西川が研究所破壊を阻止するために腕を動かせたのは最後僅かに残った力を利用したため。(もののけ姫のモロでいうところの「やれやれ…あの女の為に残しておいた最後の力なのに…」みたいな。)
・↑このミラクルを起こすために、普段は瞬きをしない眼球モードにセーブしていた力を解放したため、CP西川は腕を動かしながらも目が閉じられています。
・黒水樹が再三に渡って伝えたかった白水樹の位置情報は、味方科学者を通じて伝えられます。
・黒水樹が白水樹の覚醒に西川の血液を転送する必要があったのはウイルスが血液によって伝染する性質をもっており、自身も感染してしまっていため、未感染の西川の血液が必要だった可能性があります。
・THE ONEとは何かを聞かれた白水樹は明言を避けたましたが、知識が備わった彼女らにとっても神の男は未知の存在、あるいは高次元の存在だったと思われます。

矛盾点


・黒水樹が時空を超えて物質を転送できるのなら、なぜ西川眷属は白水樹に直接会いに行ってデータを奪わないのかという点について。

元々敵対していたからなのか、黒水樹側での準備が必要だったのかは分かりません。「君が、必要なんだ。」とのCP西川の台詞ですが、未来に逃げてもウイルスに感染した自分の体の予後を考え、わざと研究員達に西川を捕まえさせ、その情報を黒水樹に流したのだとしたら話も繋がるかと思いますが、そこまでは分かりませんでした。

吸血鬼設定とはなんだったのか。

ここからは全て憶測(妄想)になります。
西川貴教と水樹奈々という声量オバケ(褒め言葉)と歌唱力の怪物たち(褒め言葉)のコラボ企画が立ち上がった最初の時点で、「相反する二人」という大まかなマーケティングテーマが定められ、それを元に各部署が準備に入りました。それを基に、黒と白、過去と未来、敵対しあっていた二人の吸血鬼が最後に力を合わせるために、未来の西川の血液によって過去の白水樹が覚醒するというMVのおおまかなストーリーが出来上がりました。
そこに神の男という設定や各ストーリーが増やされていった結果、当初の吸血鬼という設定が弱くなってしまったのだと思われます。
また、MV中で西川に告げられたCP西川の「君は僕で、僕は君だ。僕たちは、すべてを分かち合う。」や「君が、欲しいんだ。」の台詞は白水樹へも向けられたものだと推測されます。当初は二つの眷属が一つになるために作られた台詞が、撮影や編集を経て西川脱出へ重きが置かれた結果、このように役割が変化したのだと思います。トレーラー動画内で撮影されている白水樹のリップシンクが一切使われていないのも、編集でカットされた結果です。これはMVではスケジュールやセット準備の都合上追加の撮影が非常に難しく、編集の段階で使える素材を多くしておく為で、目的としては完成のクオリティを上げたいからです。
各種脚本や長編連載の漫画ではしばしばこのような「当初の設定迷子」な状況が起こりがちですが、制作担当の人がいかに話を膨らませ、面白いものにしようとした努力の跡だと私は思います。
この流れの全てを把握できているののはMV監督他少数に限られていると思われ、例え西川貴教さんや水樹奈々さん本人がこの記事を目にしたとしても「そうだったんだ~」となる可能性は高いですし、「全てワシの作戦通りじゃ。」となる場合もあります。

この楽曲の魅力


男女のデュエット曲の多くは低音パート高音パートを分けてハモリを作ります。これはそれぞれ美しいメロディーと、高音と低音を聞きやすくするためのものです。

この曲ではオクターブ違いの主旋律をほぼ同じ音程で歌っているようにも聞こえます(実際にはハモリが多く取り入れられています)。これは水樹奈々西川貴教両者の声量が非常に大きく、またお互いの声を消さないよう発声を調節出来る両者の高い技術力により実現した、まるで奇跡のような現象だと思います。
また音量を大きくして聞いても耳鳴りが出ないところにエンジニアさんの技量も大きく出ていると思います。




今までの考察を踏まえた上での世界観の解説



「THE ONE」と呼称される神の男が作った仮想空間の中では、サンプルと呼ばれる二つの眷属が、それぞれの持つ知識(データ)を奪い合っていた。神の男にとってはサンプル達は有機電子の一つに過ぎなかった。
ある日神の男に放たれた存在によって、ウイルスが撒かれた。サンプルの数を減らすことによって追い込み、知識の統合を謀った為だった。神の男の目的は知識の更なる昇華であり、最終的に自身に「解」をもたらす為のものだった。
ウイルスによる絶滅を恐れたそれぞれの眷属の長はそれぞれ自身を隠すことにした。水樹眷属は白水樹をコールドスリープ状態にし血液を解除の鍵として隠した。西川眷属はCP西川を違う時空に飛べる立方体に乗せ、未来へ逃がした。
水樹眷属は最後の一人となりながらもなんとか逃げおおせていたが、ウイルス感染による症状が進行し先が長くない状態だった。未来では研究者達がウイルスに感染していない西川眷属の一人を捕まえ、CP西川補足の為に利用しようとした。
その情報を掴んだ水樹は、白水樹覚醒の為に西川血液の転送を企んだ。ここからMVのストーリーは始まることとなる。

CP西川が得た白水樹の膨大な知識は、神の男の前で眠る西川にも共有された。かつて自身が生きていた仮想世界を抜け出し、膨大なデータを手に入れた西川が神の男に出す解とは?それはまだ……混沌の中。それが……ドロヘドロ!

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