永遠の灯り(ショートショート)
「あったかい」
桃色のトワはささやくように呟いて私の頬を包んだ。
「あなたもトワなの?」
思わずそう問いかける。
だって私が知っているトワはもっと怖くて不気味で誰もが嫌がる存在だったんだ。
「そう・・・あなた、私が見えるのね。そうよ。私もトワ。桃色のトワって実はたくさんいるの。もしかしたらトワのほとんどかもしれないわ。でもトワは増え続けているからね、最近は違う色のトワも多くなってきてるかもしれないけれど。」
桃色のトワは、またいつか会う時がくるかもしれないと言い残して去った。
トワを知ったのはいつからだろう。
姿形は人間そのものだけれど、人間ではない。
初めてトワを見たとき、腰を抜かした。
全身鈍色のトワだった。
「冷たかろう」
鈍色のトワはボソッと吐き捨て額をコツンと叩いて、顎を突き出し少し上からこちらを見た。
慌ててうつむいたけれど、どんどん怖くなって泣きたくなる。
ポロポロ涙をこぼして逃げた。
何故かわからないが追いかけてはこなかった。
ただしばらくの間、ガサガサと耳の奥から聞こえるはずのない声が響いていた。
それから色んなトワを見かけるようになったんだ。
緑色のトワはだれも見ようとしなかった。
じっと見つめるその先には大勢の人がいるのに、視線は足元から動かない。
炎のようなトワは近づくことさえできないのに、その真っ赤な瞳で睨まれたら吸い込まれてしまいそうだった。
トワは近くを通り過ぎていく。
この瞬間にもトワはいるのだ。
空色のトワ!!!
衝動的に体が動くと、時空に隙間ができた。
ふわりと体が浮く。
おしりにポッと光が灯る。
わ!蛍みたい!
見渡せばあちらこちらのおしりが光っていた。
ゆらりゆらりと揺れるおしりの灯りはたのしそう。
ひゅんひゅんと忙しそうなおしりの灯りはまるでレーザー光線。
ハッとしておしりを見ると私の灯りは知らぬ間に消えていた。
時空の隙間が埋まる。
気づいたら布団の中。
「ねえ!待って!」
叫んだ私にトワは首を傾げる
「キミはまだ灯火になれない。僕はキミのトワじゃないよ」
そう言って消えてしまった。
いつか出会う私のトワに告げる。
「ねえ、トワ。
あなたが何色でも私は受け入れるよ」
(881文字)
初めて創作というものをしてみました。
これまでずっと自分には縁がないものと思ってきましたが、「新しいことにチャレンジ」してみたいと応募いたしました。
そう思ってから慌てて飛び込んで締め切りギリギリになりましたが、よろしくお願いします。
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