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『日本普通化計画』ができるまで

 というわけで表題の通り、春日すももとしては初の非BL作品である『日本普通化計画』が配本されるまでのヒストリーを簡単にご紹介していこうと思います。

◆執筆背景

 まず一番最初に知っていただきたいのは、この作品は私ひとりで作り上げたものではないということです。こちらはNovelJamという企画の中で、チーム制作として出来上がった作品です。要するに、2日間でテーマ発表→着想→プロット→執筆→改稿→完成→発刊を行った結果の作品になります。
 私が鬼畜な執筆(注意:わかってて、参加申し込みしてます)を強いられている中、同時進行でデザイナー様が本にあった表紙を制作し、編集さんは筆者である私にプロットの時点からアイデアを投げ、完成後は、校正して、改稿のアドバイスをくださるという共同作業なので、決していい加減な作品ではありません。
 このイベントの鬼畜具合は、のちに後世へ語り継ぐために参戦記を書きますので、まずは作品についてのお話をさせてください。

◆と、その前に

 この記事は、どちらかと言えば本の内容を知っている人のほうが、存分に楽しめます。そもそもこの作品は220円という値段で、しかも6,000文字にも満たないボリュームなので、10分くらいで読めてしまいます。しかも、記事内では、ネタバレ待ったなし、なので、まずは読んでもらうことを強くおすすめします(衝撃度が違うかと)
 よく頑張ったね、という感じの投げ銭感覚でお買い求めいただけると、非常に嬉しいです。

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◆登場人物紹介

愛する『チーム奪取』のメンバー
くぬぎさん…リアルでも編集のお仕事をされている方(春日すももをガチ指名したことを後悔しているのではないかと今でも心配)、今回の作品においては多大なる迷惑をかけてしまった御方で、なおかつ、この人がいなかったらこの作品はできていなかった恩人。チーム内では《編集》担当
新月ゆきさん…フリーでデザインや漫画を描かれている方で、チームの中ではお母さんのような包容力。頼れるイベント経験者でタイトルホルダーでもある有能な方。チーム内では《デザイン》担当。日本普通化計画では表紙を担当してくださいました。
琴柱遥さん…同じチーム内のもうひとりの《著者》様。私と違って耽美な世界観を持った、雰囲気が妖精さんなファンタジーな御方。創作の経験はまだ少ないとのことで、何度か、くぬぎさんと熱い討論を繰り広げていらっしゃいました(←怯えながら聞いてた)
 そして、春日すももを加えた、4名がチーム『奪取』です。

◆まずは、テーマ発表から

 イベントで発刊する作品は【テーマ】に沿ったものであるというルールがあります。筆者の中にはあらかじめ書きたい話(発表されたテーマに合わせて微調整されるのだと予想)を用意してきた人もいますが、私、春日すももは、まったくのノープランでイベントに臨みました。勝負師です(無謀とも言う)
 そしてイベント内で発表されたテーマは『変』でした。NovelJamにおいても、様々なルール変更があったり、変革を掲げているというところから、という説明がありました。このテーマ発表をもって、私の作品作りが始まったのでした。

◆着想からプロットに至るまで

※会話については、覚えてるニュアンスな場合もありますのでご容赦を。そして敬称略。

 まず、とっさに浮かんだのは『本能寺の変』でした(しかも踊ってる動画つきのアレですね)その話をすると、くぬぎさんが「変と乱」の違いを教えてくれました。非常に興味深かったなぁ。

 すもも「変というと、変化とかそういうのもありますかね」
 くぬぎ「辞書で調べるとこうなりますよ」

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 さっそく辞書で調べた画面を見せてくれるくぬぎさん。思いついた言葉を教えてくれて、私の着想を手伝ってくれます。ありがたや。

 ゆき「テーマで家族を持ってくるとハズレない。万人向けすると言われています」
 すもも「確かに。それなら誰でも読めますもんね」

 ここで私は『家族を含め、組織の中における変』というイメージが固まり始めます。

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すもも「みんなが裸でいる世界で、裸であることに気づいてしまった人、というのはどうですか? 禁断の果実的な」

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 これが最初に浮かんだ話でした。けれど、これだと服を着ている人間と裸の人間がどちらか変なのか、がわかりにくくなるのでは、というくぬぎさんの指摘に納得。確かに。

 なかなかネタが思いつかない私は、作品の方向性を先に決めることにしました。

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 これは私が作品を書くときに心がけていることで、こういう展開の話を、この場で考えていいですかね、とくぬぎさんに確認を取りました。
 そしてネタ~プロットに至るまでを一人で悶々と考えることにしました。
 この間、ゆきさんはチームロゴを作ってくれておりました、琴柱さんは、相談もせず黙々と一人の世界でプロットを書き始めています。早いな。

~ここまでのすもも的所感~
 私の中で、このイベントではBLを書くつもりは最初からありませんでした。決意表明のときにBLを書く人間であることをあえて表に出したのは、このイベントでBLを書きたいからではなく、BLに対して、読まなくても、私というBL文字書きを理解をしてくださる編集様と組みたかったからです。そして、くぬぎさんは私にとって理想の編集者様でした。くぬぎさんに見つけてもらえて本当によかったです。

◆最初のプロット

 同じチームである琴柱さんの作品が、しっとりと耽美な、読み応えのある作品になりそうだったので、私の作品は、どちらかといえば、一発芸のようなコメディ路線にして対比を図ろうという方向性にしました(私が勝手にw)
 そこで最初にできたプロットが、こちらです。

・起
 くぬぎさんと話す中で出ていた『普通の変』という言葉がずっと頭に残っていて、これをベースに考えました。最初はテロリストの話だったんです(笑)

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・承→転
 ここで短編は『序破急』の流れでいこうということになり、まとめる感じでいこうという訂正を入れてます。あと全体のボリュームが少ないので、もっとネタを膨らましていこうということに。

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・結
 ここでの赤は、くぬぎさんからの指摘でした。普通である人間がどちらかのか、というのがよりわかりやすくなりますね。さすが。

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 私は商業作品(公募も含みます)に限ってはプロットを詰めてからじゃないと書き始められないタチでして、プロットが仕上がるまでに、くぬぎさんをいっぱい巻き込んでしまいました。そして、席が隣だったゆきさんに「こういう展開っておかしいですか?」と客観的な意見を聞かせてもらい、いよいよ執筆に取り掛かりました。これで決める、と腹をくくったわけです。

~ここまでのすもも的所感~
プロットを書くときに苦労したのは、大オチでした。男性同士の恋愛では、オチがだいたい決まっていることもあり、一般文芸作品になると最後のオチの引き出しが自分には少ないのだと、つくづく思い知らされました。もっと、一般書を読もう。

◆完成に至るまでの苦悩

《初稿を終えて》
一日目の最後に、初稿を仕上げたのですが、くぬぎさんの最初の感想は「普通だね」でした。(私の中で、読者が読み終わったあとに最初に出てくる言葉が一番素直な感想だと思ってます)
 確かに自分でも、面白いか、と聞かれれば、コメディってこんな感じだったっけ?と疑問に思うくらいに、平坦な内容でした。そもそもボリュームが少ないのです。この時点で3,000文字弱だった気がします。もっと面白くなるはず。そう思って試行錯誤することにしました。

《第二稿で目指したもの》
 もっと面白くしたい。その一心で修正することにしました。
 まずは登場人物のキャラ化に取り掛かりました。読み手が感情移入する、その世界に引き込まれる、のは、キャラクターだと思っています。なので、役所の人間3名にそれぞれキャラクターをつけることにしました。名前がなくても台詞だけで、わかるように、年齢(若い男と昭和の男)、立場(一番偉い人と新人)、性格(まじめと堅物)といった項目を肉付けしていきます。例えば、若い男なら言いそうな口調に変えていく、といった作業です。
そして大オチの前に、この作品のテーマについて今一度、振り返りました。
これを読んだ人が「ああ、くだらないお話だった」と思うのか、それとも何かを考えるきっかけになるのか。堅苦しいお話にするつもりはなかったので、目指すところは、なんだろう。普通ってなんだろう。を深く考える作業に。
 そしてイベントで出来た作品ということを一番大切にしたくて「変」というテーマにふさわしい仕上がりを目指していきました。

◆いよいよ、発刊!!

あらすじは、くぬぎさんが考えてくれました!

『平凡なサラリーマン、国家プロジェクトで【普通】の代表になる!?
平凡なサラリーマン・佐藤太郎が任命されたのは、『日本普通化計画』における【普通】の旗印だった。
政府肝入りの企画、しかも高待遇とあって、依頼を受けようとする佐藤だが、彼には【普通】とは言い切れない気になる部分があって──。
トンデモない国家プロジェクトに巻き込まれてしまった、平凡サラリーマンの密室コメディ!』

 プロットと比べてください(笑)さすが、第二稿で本気出す芸人の名に恥じない変貌っぷり!!くぬぎさんも「すごく変わった!良くなった!」と絶賛してくださいました。何よ、この鞭も飴も変幻自在の敏腕編集様が!惚れてしまうやろ!
 自分でも、ずっと「もっと面白くできる。もっとやれる」と呟きながら書いてた甲斐がありました。

 そしてくぬぎさんのイメージと、私がこんな感じがいいなーという要望も合わせた表紙がこちらです。

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 イメージは人類補完計画です(ネタばらし)
 実は、紙本だと背表紙があるのですが、素敵なゴミ箱の絵がありまして!w
琴柱さんの表紙があまりにも美しい獣人の絵だったので「いいなー! いいなー! すもものゴミ箱も美しく描いて!」とゆきさんにわがまま言いました。

◆発刊を終えて……

 いやぁ、よく2日で作ったよね、が一番の感想です。
 本当に一人じゃ作れなかったなぁと思います。同じく筆者である琴柱さんも、私とくぬぎさんのやりとりを聞きながら、アイデアをくださったりして、本当に皆さんのお力を借りました。
 私自身は、BL以外を書くことに対して抵抗はないのですが、とにかくクオリティに自信がなかったのです。自分の作品を知っている読者様はほとんどがBLジャンルが好きな読者様だし、その人達が興味を持たないかもしれないものを書くことが怖かったんですね。
 でも同じ参加者で拙作を読んでくれた方たちが感想を寄せてくださり、面白かったと言ってくださったおかげで、今となっては、イベントで発刊した本、という位置づけから、春日すももが新たなジャンルに挑戦した本として、自分が受け入れていけるようになりました。
 NovelJamという企画は12/19のアワード(表彰)で完了します。それまでは、チーム毎、個人毎で、イベントへの貢献度が審査されています。そう、今も。
 私個人としては、作品に対してどう向き合ったか、はこの記事を持ってお伝えできたかなと思っています。

 イベントに出た感想については、また別の記事で書かせてもらいます。
 
 ここまでお読みいただきありがとうございました。
 ちなみに本の感想は聞かせてもらえたら、とても励みになるので、マシュマロからでもお気軽にどうぞ!よろしくお願いします。⇒マシュマロ

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