華子の日記「マコトくんとヨウちゃん」backnumber
私は夫が旅立って音楽が聴けなかった。
夫がいなくなって「なぜだかわからない。」というしているのか。
記憶を閉ざそうとしているのか。わからない。
恥ずかしい話だけど。
女性風俗の世界を知って心も扉を開いたのか。青春時代の曲を聴き始めた。
そして子供たちがよく言聞いていたbacknumberを最近聴くようになった。
子育て真っ最中の時は耳にも入ってこなかったバンド。
きっかけは忘れたけど。
マコトくんが「いいよね。backnumber。」と言ってからますます曲を聴くようになった。曲というより歌詞に様々な思い出を重ねる。
パパはいつもこの歌詞いいよねってヨウが言うと
「あ、ごめーん。俺にはメロディしか入ってこないんだよな~。」とヨウが嫌な顔をするのを知ってよくからかわれた。
今、聞いているbacknumberはパパと聴いたことがない。
誰を想って聴いているのだろう。
正直わからない。
マコトくんかもしれない。
はじめて付き合った人かもしれない。
振った人たちの気持ちを想っているのかもしれない。
片思いで終わったっ彼ではないことは確信できる。
もしかしたら自分自身のために酔いしれているのかな。
歌が聴けるというのはいいね。
ちょっと前までは雑音でしかなかった。
子どもたちが家で音を流しているとうんざりしていた。
マコトくんと出会って。
マコトくんと月日が流れていくなかで穏やかになっていく自分を感じる。
夫と重ねることもなく、マコトくんはマコトくん。
でも、もう、お金の関係で恋はしない。
マコトくんと「じゃあね!」って別れたらリセットする。
ちょっと嘘だな。
しばらくは楽しかったことを思い出してにやける。
口角があがる。そして顔が笑顔になる。微笑む。
帰省した子どもが「お、backnumber聴くようになったんだ。」って驚く。
そして「いいじゃん。」って続ける。
「でしょ~。」と微笑みながら食事の支度をする私。
backnumberはだれのために聴いているんだろ。
それはきっと自分自身のためだ。
そう独り言を言いながら「ごはんできたよ~」とにぎやかだった我が家のあの頃のように子供たちに声をかける。
backnumber 戻れるのならパパと聴きたい。
でも、大丈夫。大丈夫。ヨウは大丈夫。
サヨナラは嘘だと言ってほしかった。
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