少女とクマとの哲学的対話「今年のベストnote」

アイチ……高校2年生の女の子。
クマ……アイチが子どもの頃からそばにいる人語を解するヌイグルミ。
春日東風……noteを利用している物書き。

春日東風「以前、お勧めノートと称して、ひとさまのnoteを勝手に紹介させていただいていましたが、それはやめました。でも、今回は、『今年のベストnote』というお題が出たので、特別ということで、再び、ひとさまのnoteをご紹介させていただきたいと思います」
クマ「ベストnoteね」
春日東風「ええ、ぜひ、お二人から一つずつ選んでいただきたいのですが」
クマ「おや、キミは選ばないの?」
春日東風「お勧めノートをやめた身ですのでね」
クマ「そうこだわることはないと思うけど、まあ、好きにするさ。ボクのお勧めは、これかな」

春日東風「ああ、五百蔵さんの記事ですね」
クマ「うん。『エモい』という言葉の実体をあきらかにしているnoteで、それ自体も興味深かったけれど、客観的に観察するということに関して言及されているところが大変面白かった。客観的にものを見るということがどういうことなのか、いくつかの和歌の解釈を通して説明されているんだけどね、これが実に正鵠を射ていると思ったね」
アイチ「五百蔵さんの記事は小難しいことが書かれていないのがいいな」
クマ「小難しいことが書かれている記事というのは、書き手が本当にはその内容について理解していないものなんだ。だから、小難しくなる。小難しいことが書かれていないということは、書き手が本当にそのテーマについて理解している証拠だよ」
春日東風「ものを見るというのは簡単なようでいて、大変難しいことですね。何が難しいと言って、見ているのは常に自分だということを人はついつい忘れてしまうというそのことです」
クマ「そうなんだ。見ているのは常にそいつでしかないのに、『客観的に』ものを見ていると思い込んでしまう。『客観的に』ものを見るなんていうのは、極めて集中力を要することで、朝夕にできるようになることじゃないんだ。よく、『主観を排して』なんて言うけど、そうそう簡単に主観を排することなんてできるわけないよ。仮面の取り外しじゃないんだから」
春日東風「対象を見ているその目を、対象を見ている自分自身にも向け直さないといけない。それを不断に意識的にし続けないと、客観視なんてできるわけもありません」
クマ「そのあたりのことが、和歌という具体例の説明を通して、極めて平易かつ明確に書かれている」
春日東風「じゃあ、アイチも一つ選んで」
アイチ「わたしは、これかなあ」

春日東風「ああ、fuyuno coatさんの物語かあ」
アイチ「どの物語も素敵だから、一つにしぼることはできないんだけど、初めの方に読んで感動したのがこれだから」
春日東風「fuyunoさんの作品を読むと、いつでも落ちついた静かな気分になることができるね」
アイチ「上の『シーフの物語』については、簡単な書評を書いてみたんだ、こんなの」

【fuyuno coat作「シーフの物語」書評】
 偶然と必然は同じコインの裏表である。ある出来事を偶然と見るか、必然と見るかは、見る者に委ねられている。ある夜、手紙を拾った少年は、その手紙が自分のところに落ちたことを、偶然ではなく必然であると見た。そう見たからこそ、街を出たのだ。手紙に何が書かれていたのかは分からないし、何が書かれていたとしても大した問題ではない。それは少年の運命を変える手紙だったことが、ただ一つ重要なことだ。しかし、その運命を変えたのは、他ならぬ少年自身でもある。

春日東風「なるほど」
アイチ「どう?」
春日東風「さあ」
アイチ「ええっ!? ……って、まあ、それはそうか……とにかく、fuyunoさんの作品はお勧めだから、たくさんの人に読んでもらいたいなあ」
クマ「芸術作品っていうのは、実際に味わってもらうほかないね」
春日東風「これからも、色々な人から素晴らしいnoteを読ませていただけるとありがたいですね。ただ……」
クマ「ただ何だい?」
春日東風「もしもそういう素晴らしいnoteに出会えなかったとしても、それはただ出会えなかったというだけで、必ずそういうnoteはあるはずです。現に上の二つのnoteがあったわけですから。わたしも、それらに負けないようにと書くだけです」
クマ「書くことは決して勝ち負けの話じゃないけど、まあ、意識を高く持てるのはいいことだね」
アイチ「どんどん書いたらいいんじゃないかな。下手な鉄砲も数打ちゃ当たるって言うし」
春日東風「ううっ……的確に嫌なことを……まあ、書き始めたからには、力尽きるまで書くつもりですよ。他に取り立ててすべきこともありませんしね」

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