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”トレードオフ”を見つけたら、それは競争優位性のタネかもしれない

トレードオフ(trade off)とは両立困難なことを意味します。

たとえば、鮮魚店では商品の品質(おいしさ)にこだわるほど仕入コストは上がります。逆に仕入コストを下げたければ、商品の品質(おいしさ)は妥協しなければなりません。

このように、価格(コスト)と品質、需要と在庫、仕事と育児、健康と飲酒など、身の回りにはさまざまなトレードオフが存在し、どちらをとるか選ばなければならない場面に出くわします。

しかし、逆にいえばトレードオフの関係性だからこそ、これを突破することで価値(Value)が生まれるのです。これをバリューライン(Value line)を超えるともいいます。

左:トレードオフはA or Bの関係にある
右:A and Bを実現している状態

強い企業はバリューラインを超えている

事例で見ていきます。

「安かろう、うまかろう」という言葉がありますが、値段が安いと品質は悪いだろうというのが一般的な見方です。
こうした中、牛丼チェーンの吉野家は「安い」と「うまい(品質)」を追求し、この二律背反の要素を超えたことで多くの人々を集客しています。

俺のフレンチ・イタリアンでは、「高級フレンチの味を圧倒的なコストパフォーマンスで」というメッセージを掲げ、高級食材を使った料理の品々をリーズナブルな価格で提供し、話題となりました。
飲食店では原価率30%が目安といわれていますが、同店の原価率は40〜60%にのぼるといいます。それでも採算がとれるのは、店舗設計やオペレーションの工夫により高い座席回転率を実現したからです。

アパレルのZARAは「需要」と「在庫」のトレードオフを両立させています。
通常は機会損失(在庫不足により販売機会を逃すこと)を減らそうと、在庫を多く抱える必要があります。一方、在庫を抱える分、保管場所や人件費もかかります。また、予測していた需要を下回ってしまうと、不良在庫となり、値下げや処分をしなければなりません。
ZARAではこうした損失を下げるため、企画・生産から店舗陳列までのリードタイムの短縮や需要予測の精度向上などにより、在庫効率を高めることに成功しています。最低限の在庫で、需要に対して的確にコントロールできているのです。無駄な在庫ロスがないため、トレンド商品を低価格で販売することに成功しています。

OR思考からAND思考へ

このトレードオフの関係性について、少し話を展開したいと思います。

製造業ではQCDという指標があります。品質(Quality)、コスト(Cost)、納期(Delivery)を示します。
あるいは、プロジェクトマネジメントではScope(対象範囲), Time(時間), Cost(コスト)という指標を使ってプロジェクト管理を行います。

どちらも3つの要素を三角形に当てはめて考えます。
たとえば、品質を求めるとコストは上がります。短納期を目指すと、品質とコストは妥協しなければなりません。

このように3つの要素はトレードオフの関係にあり、これら要素のバランスをどのようにコントロールするかを考えていきます。

このトレードオフの考えをもとに、「この品質を求めるなら、納期はこれくらいになっちゃいますね」「人員(コスト)がこの人数しかないので、全部の要件を満たすのは無理です」などと言われてしまうこともよくあります。

しかし、トレードオフの関係性だからといって思考停止してしまっていないかは注意したいところです。

AかBかのどちらかしか取れないというのはOR思考です。
そうではなく、「どっちも目指そう!二兎を追おう」というAND思考の持ち主こそ、バリューを生み出すことができるのではないかと思います。

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