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広い、だけど狭い。

高校2年の頃、好きだった女の子が海外へ留学をした。留学先は確かアメリカだったと思う。当時の自分にとって海外はとてつもなく遠く、どれだけ距離があるのかを想像することも難しいものだった。自分に出来たのは彼女が好きだったレオナルド・ディカプリオ出演の映画を見ることで、彼女が惹かれた世界はどんなものなのだろうと想像するのがせいぜいだった。
その後、帰国した彼女は外国語学科がある大学に進学したと風のうわさで聞いたが、結局今に至るまで再会の機会はないままだ。

急にそんなことを思い出したのは「グッバイ、ドン・ドングリーズ!」の主人公に自分を重ねたからだ。
「宇宙よりも遠い場所」の、いしづかあつこ監督が手掛ける本作は15,6歳の男子3人が主人公。“少年たちのひと夏の小さな冒険劇”と括ってしまうとあまりにもシンプルかもしれない。でも本作ではそんな小さな冒険を通じて「世界はつながっているし想像しているよりも案外狭いんだよ」と実感させてくれる。

高校生男子の青春ってのは、朝までゲームしたり、好きな女の子のことを話したりしながら友達とバカ騒ぎしたり、その一方で明日のテストの心配をしたり・・・だいたいがそんな感じで構成されている。
本作でも「あー高校生男子ってこんなだったわ」と思い出して笑ってしまうようなシーンがたくさんあった。だけど、中盤にかけては「自分は何が出来るのか、何者になれるのか」に思い悩んでいくことになる。そしてここでも「あー高校生男子ってこんなだったわ」と、同じ言葉で、けれどさっきとは違った感情をいだきながら頬と涙腺が緩んでいく。
カッコつけたくて、よく見られたくて、でも具体的に何をどうすればいいのかよくわかってない姿が、当時の自分と重なった。

物語の終盤に差し掛かると彼らは決断して前に進んでいく。はじめは自分(とその周り)で閉じていた世界が徐々に徐々に広がっていって、最後で一気に視界が開ける爽快感。(ストーリーだけでなく、映像と音楽で倍増されたラストの気持ちよさはぜひ劇場の大きいスクリーンと音響で味わってもらいたい)

どちらかといえば変わることに消極的で「変わってほしくない」とまで思っているふしもあった主人公たちがどんどん変わっていて、行動だけでなくメンタリティーも外の世界に飛び出して行って・・・

「ああ、自分は高校生の頃にはこんな風には行動できなかったなぁ」

と感傷に浸りながら、それでも成長するにつれていつの間にか外に飛び出していて「世界は広い。だけど案外狭い」と知っている事に気づかされた。そして今ならあの頃好きだった彼女とも、もっと色々な話ができるのかもしれないなぁと思っているうちにエンドロールが終わっていたのだった。

とても良い映画です。ぜひ劇場で。

それでは。


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