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模型店を巡る

思えば、欲しい物はインターネットで探す方が手っ取り早く、買い物といえばインターネットが第一候補になるのが当たり前の時代になった。もはやインターネットで買い物をするのは特筆すべきような出来事ではない。

その日、僕は前日に見たアニメの影響でどうしてもほしいプラモがあった。だが、インターネットのショッピングサイトでは軒並み売り切れていて、手に入りそうにない。どうにか手に入らないものかと、Twitterで検索をかけると「買えた」というつぶやきが少ないながらも目に入る。そう、ひょっとしたら買える場所があるかもしれないのだ。

僕は車を走らせ、ないとわかっていながらも行き付けのホビーショップの扉を開く。当然のように置いていないのだが、これは模型店をめぐるための最初のステップだ。「行きつけの店にはない」を確認することで、旅に出る決意を固めるのだ。

そうして意を決して模型店へ向かう。

模型店はいつの世も独特の雰囲気をまとっている。「いらっしゃい」と声をかけた後は、興味なさげにテレビを見つめる店主の女性。「こんなおばちゃんにガンプラのこと聞いてもわからないだろうなぁ」と思うわけだが、多くの場合完璧に近い知識を持っている。伊達に店番をしているわけではないのだ。最初の店では、ホビーショップでは売り切れていたキットがチラホラと置いてある。これだから侮れない。だが、最もほしいものは置いてない。

だからといって、そのまま出ることは許されない空気がなぜかある。欲しい物がなかったのだ、何も買わなくても怒られるわけではないと思うが、冷やかしで来たと思われるのも気がひける。僕は「ツヤ消しブラック」を一本手にとってレジへ向かう。免罪符のようなつや消しブラックを手に次の店へ向かうのだ。それは時にクリアに変わったり、クールホワイトに変わったりする。どれも何本あっても困ることはない。

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幾つかの知っている模型店をめぐり、免罪符が片手では数えられなくなりそうになった頃、次で最後と決めて、20km近く離れた模型店へ向かう。

初めてでもないが顔なじみというほどではない店主の女性が声をかけてくる。店主との挨拶もそこそこにガンプラの店に向かい、そこでついに探していたキットとめぐり合うことが出来た!・・・・なら、話としてはハッピーエンドなのだが、現実はそう甘くなく、ここでもやはり売り切れていた。

さて。いかに塗料つや消しブラックやクールホワイトが何本あっても困らないとはいえ、流石に食傷気味になってきた。ここでは何かキットを買おうと決めてじっと棚と見つめ合う。ガンプラの品揃えは今日一番といって差し支えなく、選択肢も多い。だが「このキットがほしい」と決めていた時にはそれ以外のキットを買う決心がなかなかつかないものなのだ。

不思議なものでそうした時に思わぬ出会いがあったりする。フラフラと他のスケールモデルの棚に向かうと、カーモデルの棚で「ほしいけどなかなか売っていなかったキット」がまるで私のことを待っていたかのように並んでいるではないか。

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一も二もなくレジへ持っていき、お喋りな店主と消費税の話をしながら会計を済ませる。

結局、最も欲しかったキットは買えなかった。だけど、模型店をめぐると意外なキットと出会う事がある。これだから自分の足で探すことはなかなかやめられないとウキウキしながら帰路につくのであった。


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