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あなたもきっと手紙を書きたくなる「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」を見よう

「私が奢ってもいいからヴァイオレット・エヴァーガーデンを見てくれ」

以前から気にはなっていたし映画も公開された。そろそろ見るかと思っていたタイミングで、相互フォローの方から投げかけられたのが冒頭の言葉。

それならばと、TVシリーズ全話、TVスペシャル、外伝と映画まで一気に駆け抜けてきたので今日はその話。

ストーリーのネタバレはほぼ含まず書きましたが、気になる人は戻るボタンで戻ったあとで全話見てから良ければまたお越しください。

あらすじは公式サイトを見ていただいた方が良いでしょう。

主たるストーリーは「主人公ヴァイオレット・エヴァーガーデンが”ある言葉”の意味を知っていく物語」だが、それを軸として各話で繰り広げられる「人々の書きたい手紙」がその成長の上で大きな役割を果たしている。

「なぜ手紙を書くのか」「どんな手紙を書きたいのか」「その手紙を通じて何を伝えたいのか」誰かからのそんな問いかけや、時には自問が最初から最後まで繰り広げられる。

この作品での代筆は単に「言葉を文字に書き起こす」だけではなく、書きたい言葉、伝えたい思いを依頼主との会話から浮き彫りにすることで成り立っているように感じた。そしてそれは自分では言葉に出来ない、時には自覚していない感情さえも書き起こし、綴ることが代筆屋、作中でいえば「自動手記人形」の役割。

ヴァイオレット・エヴァーガーデンというキャラクターは所作や言葉遣いが丁寧ではあるが感情の起伏に乏しく、自分自身を表に出すことはあまりない。それが「人形のよう」と形容される所以ともなっていたと思う(外見が主たる要因ではあろう)が、そういったキャラクター故に、手紙を依頼する側の内面を映し出す鏡のように機能していたように見えた。いってみれば「自分との会話を通じて書きたい言葉を紡ぎ出していく作業」のように見えるのだ。

自分の感情・考えであるにも関わらず、伝えたい思いをうまく紡げず、なんとか文字に起こしてみても現実感のないヒラヒラとした薄っぺらいものになることは少なくない。その感情を対話を通じてしっかりとした言葉に、感情に書き起こす自動手記人形サービス。

そう考えると、自分の感情がわからなかったヴァイオレットが特別な存在だったわけではなく、誰しもが自分の感情を自覚できているつもりになっているだけかもしれない。

彼女が書いた手紙により繋がった人と人との想い、そしてそんな人々の想いに代筆の仕事を通じて触れることで自らの感情の輪郭を自覚するようになっていくヴァイオレット。

そんな彼女の物語に触れた時、あなたもきっと誰かに手紙を書きたくなるでしょう。そう「手紙なら伝えられるのです」


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