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法科学のお仕事

広く「法科学」と呼ばれる分野に関わる職業は、科捜研だけではありません。

他にどんな職業があるのか、その一部を紹介します。

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その前に:法科学って何?

「法科学」とは、英語では"Forensic Science"と呼ばれ、犯罪捜査など裁判や法律と関わる科学の一分野を指します。
主に裁判において証拠に基づき犯罪を科学的に証明することを目的としますが、ここでは広く科学的な法規制に関連した仕事を紹介することとします。

厚生労働省 麻薬取締部

規制薬物の密輸や密売の取締で有名な、麻取(マトリ)とも呼ばれる組織です。
科捜研の化学分野と同様に、規制薬物そのものや使用者の尿・血液などの鑑定を行います。

主に薬剤師資格の採用枠で各管区のマトリに採用された人の中から、異動により鑑定官としての道を進む人が生まれます。

厚生労働省地方厚生局麻薬取締部
http://www.ncd.mhlw.go.jp/

財務省 税関

輸入や輸出に関して、規制されている物品の取締を行っているのが税関です。
麻薬やけん銃などのほか、コピー商品や外来生物など、取締の範囲は多岐にわたります。

異動により分析部門に配属された職員が分析業務を行います。
各地区ごとの税関で検査分析を行うほか、関税中央分析所において分析・研究が行われています。

税関 Japan Customs
https://www.customs.go.jp/

国立医薬品食品衛生研究所・都道府県衛生研究所

感染症、病原菌、医薬品、規制薬物など、健康や衛生に関わる分野について、検査や調査研究が行われています。

医薬品や規制薬物に関しては警察や麻取と重なる部分もありますが、微生物の関係は衛生研究所の独壇場と言っていいでしょう。
昨今の感染症対策でも活躍していますね。

各分野ごとに研究員を採用しており、専門性の高い職員が集まっています。

国立医薬品食品衛生研究所
http://www.nihs.go.jp/index-j.html

海上保安庁

海の警察である海上保安庁も、警察と同じように犯罪捜査のための鑑識・鑑定部門を保有しています。

海上の事件事故について、警察と同様に工学と化学の分野で鑑定・検査が行われています。

異動により分析部門に配属された職員が分析業務を行います。

海上保安試験研究センター
https://www.kaiho.mlit.go.jp/soshiki/soumu/center/center.html

自衛隊警務隊

警務隊は自衛隊施設や隊員に関連した犯罪の捜査を行います。
警察と同様に逮捕術や鑑識活動を行うほか、ポリグラフ検査も行われているようです。

異動により配属された職員が警務隊の業務を行います。

【陸上】警務科 動画でわかる!自衛隊
https://www.mod.go.jp/gsdf/jieikanbosyu/streaming/movie/section_03/040.html

大学の法医学教室

司法解剖や行政解剖など、各種法律に基づく解剖を行い、遺体の死因究明を行っています。

併せて解剖に伴う薬毒物検査も行われており、近年は質量分析装置を用いた高度な薬毒物分析を行っているところも増えています。

また、解剖業務の傍ら、死因や身元の究明に関連して、DNAや薬物分析の研究を行っているところもあり、法科学の重要な担い手の1つです。

旭川医科大学法医学講座
http://www.asahikawa-med.ac.jp/dept/mc/legal/
リアル・アンナチュラルの世界!/千葉大・法医学教育研究センター 女医座談会
https://www.joystyle.net/articles/602

国土交通省運輸安全委員会

航空・鉄道・船舶の事故調査を担当する組織であり、事故の解明と再発防止を目的としています。

事故調査はまさに法工学分野の仕事であり、警察の調査は事故の刑事責任を問う目的を持ちます。それに対して、運輸安全委員会の調査は純粋に事故原因の解明と再発防止のための対策に主眼を置いており、ある意味で警察の対極にある組織と言っていいかもしれません。
(そのため、法科学の範疇に入れるのは相応しくないかもしれません)

運輸安全委員会
https://www.mlit.go.jp/jtsb/

アンチ・ドーピング機構

「公平・公正」なスポーツ競技の運営のために、ドーピング対策は非常に重要です。

薬物などの外的な介入による運動能力向上は、健全なスポーツ競争をドーピング競争へと変えてしまい、最終的に選手の心と健康を害してしまいます。

最近は旧来の化学物質によるドーピングだけでなく、自己血輸血など内因性の物質を使うようなドーピングも生まれており、それに対する対策の高度化が進んでいます。

公平・公正のためのルールと禁止物質という構図は、法科学の構図と同じと言っていいでしょう。

公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構
https://www.playtruejapan.org/

競走馬理化学研究所

アンチ・ドーピングの競走馬版です。
競馬は公営ギャンブルとして営まれており、多額のお金がかかっていることもあり、ドーピングの動機や誘惑も多くあります。

競馬の「公平・公正」な運営のために、そして競走馬の健康のために、ドーピング対策は重要です。

公益財団法人 競走馬理化学研究所
https://www.lrc.or.jp/


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以上、法科学に関連した科捜研以外のお仕事をいくつか取り上げました。

いずれも法律に基づき、公共の利益のために日夜努力されている組織です。
組織の規模や採用方法は様々ですが、進路を考える際の参考にしてください。
また、普段の様々なニュースを見るときに、いろんなルールの運用を裏で支えている人たちのことを、少し覚えていてもらえると幸いです。

もっとこんな仕事もあるよ!という方はこちらまで。


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科捜研情報noteの記事一覧
https://note.com/kasoken_jouhou/n/n4c7b7b336088
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