この漫画を読み続けていて本当に良かった:漫画『メダリスト』20話感想※ネタバレあり

どうも、輿水畏子(こしみず かしこ)です。

2月ももう終わりますね。2月は他の月と比べて短いから仕方ないとはいえ、「え、もう!?」って気分になっています。毎月こんな感じで過ぎてくのかな〜怖いよ〜〜〜〜。全部の月31日までにしようぜ。

そんな月末ギリギリのなか、今回の記事では先日25日に発売された月刊アフターヌーンに掲載されていた、漫画『メダリスト』score20「下剋上」の感想を話させてください。めちゃくちゃネタバレしますのでご注意を!

『メダリスト』20話、本当に今までの集大成のような完成度の高いお話しでした。前々から『メダリスト』は毎話毎話の構成力の強さ、漫画の絵の構図の強さに引き込まれてきましたが、20話は構成も構図も完璧ながら、今まで巻いてきた種が一気に芽吹くような力強さもあり、今までで最高のお話だったと思います。それでは以下から細かく20話を振り返っていきましょう。

全日本出場を賭け、ついに始まるいのりさんの滑走

20話では17話から始まった中部ブロック大会も佳境に入り、ついに主人公いのりさんの滑走が始まります。全日本出場が可能になる上位5人の席に入るためには、今まで描写されてきたようにスケーティングの中で自分が持つ「カード」をうまく切って、最高の演技を組み立てなければいけない。いのりさんの持つ「カード」を信じ、いのりさんに金メダルを獲らせると心に決めている司先生は、何より大事なのは「いのりさんの覚悟」だと考えて、いのりさんの背中を押す言葉を探します。

「選手が練習を積み重ねて手に入れようとした金メダルは 人の上に立つ勇気がない人が偶然手にできるわけがないんだ」
「信じて 今からあなたがとりにいくのは金メダルだ!」

司先生の激励を受ける滑走前、お決まりの願掛けになった司先生のパーカーの紐を握っていたいのりさんは司先生の信頼に正面から向き合います。

「任せて」

その一言と共に、司先生に拳を突き出すいのりさん。そこにはもうかつて怯えて自分に自信が持てなかったいのりさんの影はありませんでした。もう本当にいのりさんのこの決意に満ちた、人の信頼に応えたいという表情が見れただけでも、ここまでこの漫画を追ってきた読者にとっては涙が止まらないレベルです。

いのりさんの用意した「最強のカード」

そして始まるいのりさんの滑走。曲が始まる前に挟み込まれるいのりさんの真剣な表情、そして音楽と共に始まるいのりさんの滑らかな動きの表現はやはり「メダリストの描写はすげえ……」と嘆息するに値する美しさです。

スケーティング自体も格段に上手くなっていたいのりさんですが、最初のジャンプ(定石なら後半ではなくここで一番飛びにくい難しいものをやる)は3回転ループでした。いままで飛べていた3回転サルコウより一段上のジャンプ、これがいのりさんが用意していた「より強いカード」でした。

3回てループは見事着地するものの、ジャンプの難易度としては今の「上位5人」に届く点数を稼げるものではない。このままでは点数が足りないのではないか……そう危ぶまれる中、段々と周囲の観客がざわめき始めます。

「この子、スケーティングがめちゃくちゃ上手くないか??」

いのりさんの演技は一つ一つが非常に完成度が高められており、ジャンプの難易度は上位層に届かずとも、ジャンプやスケーティングのクオリティが非常に高かったのです。そしていのりさんと司先生が用意していた「上位に食い込むための切り札」こそがこの演技のクオリティでした。

スケートでは演技の完成度が高ければ基礎点に加えて演技力のボーナスが入る。そのボーナス点を狙うことで難易度以外の部分で得点を稼ぐことこそ、いのりさんの武器でした。これは今までいのりさんの練習や目標を見ていた読者からすれば納得の展開ですよね。いのりさんは「スケーティングがうまいと思われる選手になりたい(司先生のようになりたい)」と思っていましたし、アイスダンス出身の司先生の練習はスケーティング重視で、この目標にぴったり合致するものでした。

ここで観戦してる理凰くんが「司先生のスケーティングの練習がこのクオリティを可能にするんだ」と冷静に分析していますが、同時に司先生の地獄のスケーティング練習を思い出して「あれについていくのは無理!」ってなってるのが個人的にかなりツボでした。ジャンプはめっちゃ褒めてくれるのにスケーティングの評価に関しては真顔で死ぬほどシビアな司先生マジこええ。ミケ太郎は合宿の時点でギブしてたのが更に笑えましたね。

見えてくる「ノーミス演技」

ハイクオリティなスケーティングで会場を魅了するいのりさんはそのまま演技を続け、ついに「ノーミス」が見え始めます。今まで13人の選手が必死に練習し、全力で演技に臨んだにも関わらず達成できなかった「ノーミス」演技。これをこなせば「5位以内」が見えてくる中、司先生は違うことを考えていました。

「5位じゃダメだ」
「今日 俺はあなたを金メダリストにする!」

そう、金メダルを取ることこそが、いのりさんの目標であり、そして今回司先生がいのりさんとかわした約束でした。だからこそ、ノーミス「だけ」では足りない。最後の最後に全てを覆すジャンプを飛ばなければいけない。司先生は動悸の中、強く祈ります。ただ「降りろ!」と。司先生と一緒に祈るように読み進める私たち読者の前で、いのりさんが披露してくれた最後のジャンプ。

それは2回転アクセル+オイラー+3回転サルコウの高難易度コンビネーションでした。

そんなジャンプを、いのりさんは……完璧に降り切ります!ここの「降りた!!!!!」の衝撃は忘れることができません。そして呆気に取られる大会関係者たち。最後の最後、ノーミスがかかった場面でやるジャンプが失敗しやすい高難易度コンビネーションとは誰が予想できたでしょう。また、昔ナッチンが合宿のジャンプ練習で「回転数が多いジャンプから少ないジャンプへのコンビネーションは勢いでいけたりするけど、逆は死ぬほどむずい」と話していたことを思い出しました。それをこの場面でこなしてくるいのりさんの胆力、そして成長したいのりさんの実力が感動的過ぎて、司先生と同じくらいの勢いでガッツポーズしてしまっていました。

そして「完走」へ

高難易度ジャンプを突破し、さいごのスピンまで気を抜かないままで演技をこなすいのりさん。そしてついにその瞬間が訪れます。

全演技、ノーミスでの「完走」。

この「完走」と共に、演技の最後のポーズでいのりさんが空へ手を差し伸べる構図は本当に美しく、気高く、いのりさんの成長の象徴のようで涙してしまいました。本当に今までいのりさんのことを読者として見守ってきて、ここまで美しく完璧な演技を見せてもらえるとは、いのりさんがこんな高みまで昇ってくれるとは、という感激が溢れてしまいます。そんないのりさんの姿を見た羊さんのお父さんのセリフがまたこの漫画の根底に流れる理念でした。

「フィギュアスケートは 奇跡を見守るスポーツなんだ」

まとめ

以上、メダリスト20話を振り返っていきました。今話はいのりさんの重大な滑走というだけあり、今までの集大成のようなお話しだったと思います。その中でいのりさんの美しく気高くかっこいい演技、いのりさんと司先生の覚悟を見せてもらい、本当に魅了されたと共に、「ああ、この漫画を最初から追い続けていたことでここでこれほどまでの感銘をもらえるんだろうな」と思い、この漫画を追い続けていて本当に良かったと思わせてもらいました。

次回以降、いのりさんは本当に1位になれたのか、これからいのりさんを超えてくるライバルが現れるのか、そして全日本での戦い等目が離せないことがたくさんです。これからも『メダリスト』を見続けていきたいですね。それでは〜。


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