平成のセクター連携史 〜過渡期【NPO編】〜資金調達手段の増加
平成のセクター連携史も4記事目となった。
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2010年前後からコロナ前くらいまでの時期をセクター連携の「過渡期」として位置付け、企業・行政・NPOそれぞれに起きた大きな変化やセクター連携に関する大きな議論を振り返る事を目的とした記事で、前回は「企業」について振り返ってきたが、今回は「NPO」編だ。
この「NPO」編を書くにあたり、軸を設けないと混乱しそうな気がするため、以下の3つを軸に記事を分けていきたい。
資金調達手段の増加
まず、今回は、セクター連携をする上で欠かせないNPO側の「お金の受け取り方」の変遷と多様化を
「資金調達手段の増加」
というくくりで書いていく。
クラウドファンディング
従来、NPOの資金調達方法である「寄付金」「助成金・補助金」「事業収入」等に加えクラウドファンディングが加わった。
これは、東日本大震災をキッカケに、同年3月末に「READYFOR」、6月に「CAMPFIRE」と、クラウドファンディングサービスが日本に誕生したことも大きな一因であろう。
その後も、企業や自治体などが、続々とクラウドファンディングサービスを開始。震災文脈以外でのNPOによるクラウドファンディングも増え、これまでの資金手段に選択肢を増やすことに繋がっていいる。
「認定NPO法人制度」創設による寄付促進
2012年4月に「認定NPO法人制度」が施行された。これは、NPO法人への寄附を促すことにより、NPO法人の活動を支援するためにとして設けられた制度である。
NPO法人のうち「一定の基準を満たしている」と所轄庁(都道府県・政令市)が認めた法人が「認定NPO法人」と名乗ることが出来、信頼性の向上と共に税制優遇等のメリットを持つことが出来た。
一方、内閣府の資料によると、この10年NPO法人の登記数は増えている中、令和3年10月末の時点で、認定NPO法人の割合は、2%程度となっている事が確認できた。
休眠預金
2019年度から「2009年1月1日以降の取引から10年以上、その後の取引のない預金等(休眠預金等)」を社会課題の解決や民間公益活動の促進のために活用する制度が始まった。
ちなみに、昨今(2023年6月)では、公共性の高い事業を手がけるスタートアップ企業に出資できるようにするための改正法が21日の参議院本会議で可決・成立している。
ソーシャル・インパクト・ボンド
2016年頃より従来型の投資とは異なる社会貢献型投資(ソーシャルインベストメント)が世界的に広まりを見せ、その中でも、ソーシャル・インパクト・ボンドが、当時、日本でも本格的な導入へ向けた動きが加速していた。
ソーシャル・インパクト・ボンドとは、官民連携の社会的投資モデルであり、一旦投資家からNPOなどの活動資金を調達した後、NPOなどによる社会問題の解決の成果に応じて政府が投資家に配当を支払うモデルで、提供するサービスの成果に応じて成果報酬を支払う仕組みを構築しているのが特徴である。
尚、2018年1月時点で、日本総研が行った調査では、下記のような状況がレポートされている。
令和の話となるが、2023年2月の記事では、5つの具体的な事例も紹介されており、今後もまちづくりの分野でソーシャルインパクトボンドの事例が増えていくことが期待されている。
以降、「インパクト投資」という、ソーシャル・インパクト・ボンドを含むより広義な考え方が出てくるが、これは令和における議論になるため、一旦、これについて記載するのはまたの機会としたい。
いずれにしても、ソーシャル・インパクト・ボンドは、現状、発展途上、研究途上で、まだまだ夜明け前の状況であり、私を含む大半の一般の方々の理解を越えている印象である。
仮に実践と研究が上手く進めば、こういう考え方が主流になるのは、もしかしたら2020年代後半〜2030年代前半になっていくのではと考える。
実際、株式会社ドリームインキュベータによって公開された調査レポート「ソーシャルインパクトボンドに関する国内外の現状と今後の発展性について」の中でも、各分野において「効果確認までの期間」が示されているが、相応の年月がかかることが分かる。
焦らずじっくりと新しい時代の官民連携スキームのトライアドエラーを令和でもしていくことになるのだろう。
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