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労働訴訟で仮払いを申し立てる



仮払いとは

「仮払い」とは、賃金仮払いの仮処分で、訴訟中 会社に給料を仮に支払わせることを言います。
仮の地位を定める仮処分」のうち、給料に関する部分です。
労働者が裁判所に対して「地位保全等仮処分命令申立」を行い、審議の後これが認められれば、仮処分(=従業員としての仮の立場を与えろ)ないし仮払(=仮に給料を支払え)の命令を、裁判所が会社に対して下してくれます。

あくまでも裁判(本訴訟)で労働者の権利が認められる見通しがあり(被保全権利の存在)、生活に困っているなどの事情(保全の必要性)がある場合に限りますが、これが認められれば、訴訟中の生活費の確保ができます。

申立を行うと、裁判官(審議官)から貯蓄残高や直近3ヶ月の生活費の内訳がわかる書類を提出するように言われます。また不当解雇の可能性についてもざっくりと審議が行われます(簡易裁判のようなもので、およそ3〜4ヶ月かかる)。

この「貯蓄残高」や「生活費の内訳」が会社側に見られてしまうので、これを嫌がり仮払を申立てない人もいます。

審議の進行

申立てから1〜1ヶ月半くらいで最初の審尋が行われます。
私は東京地裁だったのですが、労働部の事務室みたいなとこのラウンドテーブルで行われました。
なんとこれが、会社側の人間と対面で行われるので、ものすごいストレスになります。ほんとやめてほしい…
会社の人間の前で主張や言いたいことをガンガン喋れるよう心構えをしておいてください。わりと裁判官からガツガツ突っ込んで質問されます。
なお今はリモート裁判がかなり活用されてるので、直接会うことは減っています。

その後も1ヶ月に1回のペースで審議が行われますが、
主張書面、証拠、反論の提出などは、期日を待たずにどんどん行われます。3ヶ月を目安に判決を出すことを目指しているからですね。

3回くらい審尋を繰り返し、おおよそ双方の主張が出揃ったタイミングで、裁判官から和解勧告がなされます。
お互いに和解内容に納得できればここで終了となり、本裁判へは移行しません。
和解決裂となった場合には、その後裁判官から仮処分に関する判決が下り、その内容に従いつつ、本裁判の準備へと進むわけです。

仮払の支払い

審議が結審し仮払を認める判決が出ると、その審議が結審した月の分から、会社は給料日に給料の支払いをしなければなりません。
判決が月の頭だったりすると、前月分から命じられたりします。


(以下は前回投稿と内容のかぶりがあります)

貯蓄がしっかりある人ははじかれます

まあ貯蓄があるならそれを使えばよろしいかと。
十分にはないという人は、裁判官に必死で訴えてください。

失業手当仮給付や傷病手当金を受給している場合

これらの場合は、受給期間中は仮払が認められないと思います。
失業手当仮給付は、仮払金の支払いを受けている間は受給できません
なので失業手当仮給付の受給が終わるタイミングでなら認められると思います。仮に失業手当だけでは生活費が足りないとして仮払を申し立てても、少額でも仮払を受けた途端に、失業手当仮給付の受給資格はなくなる可能性があります。というより、仮払が必要な額を認められて仮給付が停止する、ってなるんですかね。
なお、受給した失業手当仮給付金は、解雇無効の判決を得た際には返還しなければなりません。
傷病手当金を受給している場合も、これは労務不能状態と認定されますから、やはり受給中は仮払は認められません
解雇無効の判決を得た際にも、傷病手当金を受給していた期間のお給料は認められないので支払われません。

私のケースで見ていきます

1、貯蓄はゼロ
2、失業手当仮給付が受けられない状態であった
3、傷病手当金の申請はしていない
4、アルバイトや就業もしていない

という条件であったので、仮払は給料満額が認められました。

労働者としての権利があるかどうか(解雇無効か否か)の見通しについては、会社側からは解雇が妥当であるという証拠が何ひとつ上がってこなかったので、何ら問題はありませんでした。(嫌がらせみたいなエセ証拠はたくさん出されましたが)

仮払が認められる判決が出たときは本当にホッとしたものです。
これでようやく会社と戦える土台ができたのですから。

条件をひとつずつ見ていきますと、
1の貯蓄についてはそのまんま。
弁護士さんに着手金を支払ったら手持資金ゼロになりました。

2の「失業手当仮給付が受けられない状態であった」というのは、
会社からの嫌がらせで、離職票の手続きをしてもらえなかったからです。
弁護士経由でいくら催促しても無視され続けました。
経済的に追い込んで少額の解決金で済まそうとでも企んでいたのでしょう。
ほんとセコイですね。
仮処分審の途中で和解勧告がされましたが、会社は本当に少額の解決金で交渉してきました ( ̄▽ ̄;)
もちろん金銭解決での和解には応じないと突っぱねました。向こうは微々たる金額を上乗せしては、しつこく粘ってましたけどね… 時間のムダや。。。

実際、これはキツかったです。
失業手当の仮給付が受けられないので、仮払が認められるまでの間、一切収入がなかったのですから。
ハローワークでの手続き自体は、ハローワークの案内がちゃんとされていれば可能でしたが、手続きができても「会社からの離職票がないと金額が算定できないので支給することができません」と言われます。
私の場合はハローワークの案内もいい加減だったので手続き自体もまともにできなかったので、かなり追い込まれました。
(この辺りの事情も後日詳しく投稿します)

ただ結果的に、会社の嫌がらせで仮給付が受けられていないことは、裁判官の会社への心象がかなり悪く映ったであろうことは確かです。

3の傷病手当金についても、体調不良はまだ続いていましたが、あくまでも最短での復職を望んでいた私には、申請するという選択肢はありませんでした。
会社から給料を満額払ってもらうと決めていたこともあり、やはり申請はしませんでした。

4の アルバイトや就業もしていないことに関してですが、
これはやった方が生活は安定しますが、復職が認められる可能性に影響してくる可能性があります。これには裁判官も「否定できない」と同意していました

それに副業での小銭稼ぎくらいならともかくとして、
アルバイトなどをしてしまえば仮払が認められる可能性が低くなったり、認められても金額が下がったりしますから、そうなって長期的に生活が不安定になるのを避けたいという思いもありました。
それと仮処分審議中は実はまだかなり体調も悪かった(睡眠障害、自律神経失調、血便など)ので、日によっては外出がしんどいこともあり、躊躇したというのもあります。


私の場合、仮処分審が5ヶ月もかかり、しかも判決が出ても会社がすぐには支払ってくれず、ようやく払ってくれたと思っても難癖つけて全額を支払ってくれなかったり、しまいには仮払判決の一部取下げ申立をしてくるなど、ひどい嫌がらせが続き非常に追い込まれました。
(これについての詳細も後日投稿します)

解雇された次の月から半年間も借入で生活を支えましたので、借入金額も相当な額となり、毎月の返済金に追われ、かなり追い詰められたのです。
この半年間分については、給料の仮払も失業手当仮給付も受け取れず終いですから、マイナスはそのままで 今も借入の返済金を払い続けてます。会社からは本裁判が結審するまで支払われません。


以上は私の個別の事情ではありますが、
こんな条件だと満額仮払が認められる可能性が高い、と思ってもらっていいと思います。
(これ以上の条件なんてないでしょ…)

どうか無理せず、ご自分の生活が破綻しないことを最優先してどうするか決めて欲しいと思います。

ちなみにですが(けして忘れてたわけではありません)、
仮払いは認められても、地位(従業員としての立場)の仮処分はほぼ認められることはありません。
私は従業員代表として一刻も早く復職したいと、裁判官に切実な事情とともに訴えましたが、それでも認められませんでした。
裁判官はまったく急いでもくれず、いつまでも「まだ反論するから」とか「取締役に確認するから」とか繰り返して無駄に引き伸ばす会社を、諫めることもしませんでした。

結局そのまま、会社の思惑通りにされてしまったのです。
(前々回:「休職という選択肢」後半 参照)

この労働訴訟の、仮払だけ認めて『地位を認めない』という慣習は、本当に司法の悪癖だと思います。
状況に応じてきちんと判断されるようにならなければいけない事案ではないでしょうか。


次回は、
仮払判決後に会社がしてきた行為についてお話したいと思います。


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