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教えて大西さん、ピースワンコのこと④銀行が5億円融資を撤回したホントの理由

 

1、東京新聞「小さな命全部救う」

 大西さん、東京新聞があなたに話を聞いて夕刊1面「にっぽんルポ」欄で紹介した記事「広島・犬シェルター 小さな命全部救う」(2019年5月18 日)は、いまもあなたが代表理事であるピースウィンズ・ジャパン(PWJ、神石高原町)がピースワンコ・ジャパンのホームページで紹介しています。

 残念なことに、当初掲載された記事には多くの事実誤認があり、私が指摘したところ東京新聞社会部は誤りを認めて訂正しました。それが今年2月8日のことです。

 PWJ広報担当や取材を受けたあなたも記事の中身など読まぬまま喜んでいたのでしょうね。当事者が読めばすぐに気づく、いや気づかなければならない基本的な間違いでしたから。

2、記事に3つの間違い

 東京新聞に指摘したメモをここでご紹介しましょう。

 ①県に持ち込まれた犬をすべて受け入れ、譲渡先も探す。民間団体による前例のない取り組み

 →持ち込まれた犬ではなく「殺処分対象となった犬」です。つまり2015年度でいえば、持ち込み数は2千頭以上、殺処分は8百頭弱と3倍も開きがあるばかりか、事業の性格自体を理解していない記述です。これは広島県動物愛護管理推進協議会の2016年度報告書(2015年度殺処分等の実績)をみれば確認できます。

 ②15年度の県の殺処分は約800匹。これを基に年間1000匹を受け入れられる体制で臨んだが、16年度に1400匹、17年度に1800匹と県が引き取る犬が急増した

 →これは①以上にでたらめです。県が引き取る犬の数、県内に4つある愛護センターが引き取る犬の数、いずれも16年度1400頭、17年度1800頭ではありません。ここで紹介している団体(PWJ/ピースワンコ )が県内4つの愛護センターから引き取った頭数をここに誤記しているのではないでしょうか?(これも引き取る対象を「殺処分対象の犬」だときちんと理解していないから犯した間違いだと思います)

 ③(2018年の書類送検の後)週刊誌やインターネットで猛烈な批判にさらされ、銀行に5億円の融資を引き揚げられた

 →この団体の借入金は年々膨らみ2018年度末11億円まで増えましたが、銀行(信用金庫、政府系公庫を含む)の借り入れ残高のピークは4億円で「5億円を引き揚げる」ことがそもそもできません。この団体は2017年度に債務超過に転落したので、銀行からお金を借りようと思っても新規には貸してもらえなかった可能性はありますが「融資引き揚げ」ではありません。

3、間違い認め訂正

 東京新聞からの回答はすぐに来ました。以下がその抜粋です。

 担当の社会部が確認したところ、ご指摘の①②③とも記事の誤りだと分かりました。大変申し訳ありませんでした。

 ①②についてはご指摘通り、「県で殺処分対象になった犬」を「県に持ち込まれた犬」と誤解したことによるミスでした。

 ③については「銀行に5億円の融資を引き揚げられた」ではなく「予定されていた5億円の銀行融資が中止された」の誤りでした。

 以上、前置きが長くなりましたが、きょう私があなたに聞きたいのは、銀行から融資を断られた5億円についてです。

 訂正後の記事は以下のようになっています。

 「週刊誌やインターネットで猛烈な批判にさらされ、予定されていた五億円の銀行融資が中止された。大西さんは支援者や企業への資金集めに奔走」

4、原因は法令違反?

 せっかく訂正したのにこれでいいんだろうかと私は首をひねりました。読んだ人は、広島県警が書類送検した狂犬病予防法違反や動物愛護管理法違反の疑い、もしくはそれをめぐる報道や論評が原因で銀行融資が立ち消えになったという印象を抱くことでしょう。

 しかし、銀行が融資計画を撤回したのは、それが理由なのでしょうか?

 法令違反が銀行の融資判断に影響を及ぼす可能性もないわけではありませんが、それは例えば広島県がPWJの動物取扱業の登録や認定NPOの資格を取り消したりしていないように刑罰が確定する前には結論を出しにくいものだと思います。

5、債務超過が原因では?

 私は財務状況の悪化が原因だったのではないかとみています。かつて豊かだったピースウィンズ・ジャパンの財政は年々悪化して2017年度(2018 年1月期)は債務超過に転落しました。

 銀行は融資にあたって財務制限条項をつけていることが多く、赤字が続いたり、自己資本比率が一定水準以下になると返済を求めたりするのです。当然新規貸し出しもしません。金融や企業経営の知識がある人が疑うのはまずこちらの可能性です。

 大西さん、教えてください。
 
 銀行からどうして融資計画を撤回されたのですか?

 そしてそれはいつのことなのですか?

 そもそもそのお金はいったい何に使うためだったのでしょう?

 東京新聞にはどう説明したのでしょうか?

 あなたの文章や話には曖昧にぼかしているところがたくさんあって、読む人や聞く人が勘違いさせられることが多いようなんですよ。東京新聞の記者もその犠牲者かもしれません。お気の毒なことでした。

6、東京新聞はどう聞かされた?

 PWJの決算書をめくってみると、2017年度決算から非金融機関、例えば「ふるさとチョイス」運営会社トラストバンクや投資家村上世彰氏に関連企業が大口の債権者として登場します。この点から見ると、立ち消えになったという5億円の銀行融資計画は2017年度から始まるはずのものだった可能性さえあると思っています。

 私は今年2月、訂正すると伝えてきた東京新聞に御礼の返信の中で、この点についても以下のように疑念を伝えていました。

 融資取り消しも、その原因をきちんと取材し確認したのでしょうか?元記事では書類送検を後のインターネット等での批判と並行して銀行が融資を引き揚げたかのように紹介していますが、記者はピースウィンズジャパンが2017年度債務超過であった事実と銀行融資の関係をきちんと調べているのでしょうか?

 東京新聞社会部の回答は「取材の詳細については回答を差し控えさせていただきます」というものでした。東京新聞はPWJの財務状況を調べもせずに大西健丞代表理事らの説明を聞いただけで記事を書いてしまったのでしょう。担当した記者は調査不足、編集者も怠慢だと思います。こうして新聞が信用を失っていくことを私は残念に思います。

 初回にも書いたようにピースワンコ事業は毎期億円単位の黒字を計上していて、資金不足ではないようです。その黒字、どこに使ってしまって、お金の借り入れを増やしているのですか?

 大西さん、神石高原町のおじいさん、おばあさんたちにもわかるようやさしく丁寧に教えてくださいね。もちろん殺処分対象の犬を選別することなく「命全部救う」という運営方針の現況もお忘れなく。

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