米国の遊漁実績1900トンは国別上限の「枠外」で管理‼️水産庁の怠慢で日本は新枠創設の好機失う?~太平洋クロマグロ漁獲枠の配分に監視が必要④
太平洋クロマグロの日本国内への漁獲配分をめぐる注目点の一つとして、「遊漁者に対してどのように漁獲量を配分するか」という問題があります。
現状は、国が持つ大型魚100トンの枠の一部、40トンを使って国が遊漁者を管理できるか試行している段階です。遊漁者という区分に対する直接の配分はありません。国から施しを受けて成り立っているような状況です。
遊漁500トン枠を要望
水産庁が決めたルールによれば、30キログラム未満の小型魚は採捕禁止、30キログラム以上の大型魚も月ごとに限度数量が決められ、それを超えそうなときはその翌月まで採捕禁止となります。
遊漁の管理年度は4月に始まり、翌年3月に終わりますが、9月末の折り返し点までにすでに32トン強を消化していて、残りの期間は原則としてキャッチ&リリースをしながらでなければ、遊漁を楽しむことは難しそうな状況です。
「枠が小さすぎる」--これが遊漁関係者の意見です。8月に水産庁が開催したブロック説明会で、複数の遊漁関係者が意見を述べ、年400トンとか500トンという規模の枠配分を求めました。
それに対して、沿岸の漁業者らから反発の声もあがったわけですが、クロマグロは漁業者だけのものと決めつけて、遊漁者を必要以上に排除するのは好ましいことではありません。筆者の見るところ、水産庁の無策にも大きな問題があったのです。
米国の事情と比べてみれば、太平洋クロマグロの資源管理において、いかに日本の水産庁が遊漁を軽視し、その実態把握も怠って、漫然とやり過ごしてきたかがよくわかります。
スポーツ・フィッシングは国別上限の別枠
グラフのように米国の遊漁、スポーツ・フィッシングによる太平洋クロマグロの漁獲量は2023年1887トンにのぼっています。2020年は716トンでしたから3年間で2.6倍に膨らんでいるのです。
そしてここが重要なポイントなのですが、このスポーツ・フィッシングは、中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)と全米熱帯まぐろ類委員会(IATTC)の合同会議で決めた国別の漁獲上限の対象外として扱われてきているのです。わかりやすく言えば「枠外」の扱いなのです。
米国の漁獲上限は2021-2022年の場合は2年間合計で739トン(1年間532トンが上限)、2022-2023年は同じく1017トン(同720トン)です。
ただし、この上限は漁業者による商業漁獲を対象にしたものです。スポーツ・フィッシングのように販売・出荷を前提にしない漁業は対象にしていません。
そして、いま米国の太平洋クロマグロ漁獲量は国際取り決めで上限が決められた商業漁獲より、ほぼ自国の裁量でルールを決めることが可能なスポーツ・フィッシングの漁獲の方が大きくなっているのです。
日本の沿岸漁業枠より大きな漁獲実績
非常に大切なところなので何度も繰り返しますが、米国での遊漁による太平洋クロマグロ漁には1日2尾まで(複数日でも最大6尾まで)という保持尾数制限がありますが、重量による制限はありません。そして、国別の漁獲上限とは別枠で集計、管理されているのです。
水産庁がはっきりと説明することを避けているこうした事実を知れば、日本の遊漁者は怒るでしょう。実際に怒っている人たちがいます。
漁業者だって怒るはずです。せっかく網に入ったり、針にかかったりしても、そのクロマグロのほとんどを海にリリース(放流)しなければならないほど小さな漁獲枠しか配分されていないからです。
1900トンという漁獲量は極めて大きいものです。日本の沿岸漁業、つまり都道府県知事が管理する定置網、小型漁船による太平洋クロマグロの漁獲量基礎配分は2024年度1746トンです。つまり、米国のスポーツ・フィッシングは日本の沿岸漁業よりも多い量のクロマグロを漁獲しているのです。
日本でも遊漁の実態は30トン、40トンという枠におさまっていると信じている人は誰もいません。水産政策審議会くろまぐろ部会でも3年前、不正な販売、釣りが横行して、実際には100トン規模になっていると指摘する委員がいましたが、水産庁は有効な対策を打っていませんでした。
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