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監事を「勇み足」に駆り立てたJF天草の深い闇~県・マリンバンクは徹底検査を

理事会での発言が名誉棄損に



 「名誉棄損容疑で男逮捕」――13日朝、そんな新聞記事の写しが熊本県天草市在住の知り合いから送られてきました。

 県警の発表をもとにした記事だと思われます。ざっと内容を紹介するとこんな感じです。

 「天草署が12日、市内在住の会社役員(記事では実名)を逮捕した。4月30日午後2時半頃、集会場でアルバイト女性(21)の評価を著しく害する内容が記載された文書28枚を参加者に配り、女性の名誉を傷つけた。容疑者は容疑を認めている」

 逮捕されたのは車エビの養殖などで知られる天草漁業協同組合(JF天草)の監事の一人です。JF天草が関わる不正について組合長ら執行部に真相解明を求め、責任も追及していた人物です。

 かねてJF天草の経営内容に疑念を抱いていた私も、彼とは何度も電話でやり取りし、今年も5月に天草を訪問した際にあったばかりです。

 その時に聞いた話をもとに推定すれば、逮捕容疑にある「集会場」とは、JF天草の定例理事会で、「28枚の文書」はある事件で当該の女性が逮捕されたことを伝える新聞記事のコピーだと思われます。

 監事は記事を示しながら事件を起こした女性がJF天草の有力な役員の親族であると断定して役員の責任を問いました。

 しかし、JF天草に直接の被害をもたらしたものならともかく親族がしでかした不始末の責任を役員に問うのは見当違いです。女性にとっても知られたくない前科が親族の職場でさらされることとなり、名誉を傷つけられたと考えたとしてもやむを得ないでしょう。

 いくら正義のためとはいえ「勇み足」は禁物です。

 しかし、監事を「勇み足」に駆り立てたJF天草が抱えているどんよりとした闇のほうが私には気がかりです。

支所長自殺で第三者委員会


 今年2月、JF天草牛深支所の支所長が自ら命を絶つという事件がありました。九州でも有数の漁港である牛深漁港も管轄下におくJF天草の最も大きな支所の実務責任者です。

 役員によるパワーハラスメントを疑う声も出ていたため、JF天草は真相解明を目的とする第三者委員会の設置を準備しているところです。

 その委員会もまだ発足していない段階なのに、牛深地区から選出された理事でもある副組合長が3月に辞任しました。パワハラが実際にあったかどうか、あったとすればその原因は何だったのか、ということはまだやぶの中なのにどうしたのでしょう。

 辞任した副組合長には経費二重請求疑惑なども取りざたされ、今回逮捕された監事が理事会などで追及していました。不正請求については逮捕された監事は刑事告発していたものの、熊本地検が判断を先送りする間に牛深支所長が自殺し、「警察や検察の捜査が遅いから犠牲者まで出てしまった」と監事は憤っていました。

放流用の安価な種苗を養殖に 


 JA天草漁協の主力商品の一つである養殖の車エビに関しても、放流用として県の里海づくり協会から安く仕入れた種苗を養殖用に転用しているという疑惑もあります。民間の養殖業者より有利な条件で種苗を仕入れ、儲けているという疑惑です。私も熊本県などに事実関係の確認を含め、質問を送って調査を進めているところでした。

 2022年に元組合長が不正支出の責任を問われて役員退任慰労金の不支給処分を受けた際も、資金を管理していた参事が自殺するという不可解な出来事が起きていました。

 「前組合長は名前だけ使われ、濡れ衣を着せられて失脚した」とみている組合員も多く、今年6月の理事・監事の改選をめぐる地区別の候補者選出過程では、現組合長派と元組合長派の組合員が理事ポストをめぐって激しい争奪戦を繰り広げていました。

 逮捕された監事も今度は「理事」として候補者リストに載っていて、元組合長派の一員です。熊本県警の名誉棄損逮捕は県警がそれを知っているかどうか別として勢力争いに影響を及ぼす出来事でもあるのです。

ガバナンス機能不全状態では

 JF天草職員もこうした派閥抗争に巻き込まれることも多々あり、職員の辞職も増えています。第三者委員会の設置準備など本店で漁協事務全般を統括する参事も今年5月末、一身上の都合を理由に辞職したとのことです。

 役員改選も絡んで、情実人事やパワハラがはびこっているというウワサはいまも飛び交い、職員たちの働く意欲を失せさせる原因になっています。

 一連の出来事、事実はJF天草を監督、指導する立場にある熊本県も把握しているようです。いまのところ真相解明のためにJA天草に詳しい報告を求めたり、改善を指導したりという行動には出ていないようですが、私が見るところ、JF天草はほとんどガバナンス機能不全に近い状態です。

 曲がりなりにも農林中央金庫を「中央銀行」として成り立つマリンバンクシステムの一員で、金融機関でもあるJF天草に対する農中・マリンバンクや熊本県の監視体制は甘すぎるといわざるを得ません。

 これ以上、死者や逮捕者が出ないよう理事会が正常に機能しているかどうか、役員らによる公私混同、不正が行われていないかどうか、信用事業を含む幅広い業務を遂行するのにふさわしい人員体制が整っているかどうか、徹底的な検査が必要な段階に来ているのではないでしょうか?

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