日経・酒井綱一郎氏が顧問?PWJピースワンコの広報仕切るコンサルタント会社

そんなことはないだろう、あってはならないはずだと思ったので、私は古巣、日本経済新聞社広報室に問い合わせることにしました。

ふるさと納税の寄付金などを財源に、大規模な捨て犬シェルターを運営しているNPO法人ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)は、大西健丞代表理事らが動物愛護管理法違反などの容疑で広島県警から2度も書類送検されています。

プロジェクト名はピースワンコです。多くの動物愛護団体から批判にさらされているPWJの広報は、ソーシャルピーアール・パートナーズ(SPP社)という東京のコンサルタント会社が請け負っています。

そして、同社ホームページでは、SPP顧問として日本経済新聞社のグループ会社役員、酒井綱一郎氏の名前も掲載されていたのです。

兼業を原則禁止する一般従業員の就業規則は役員には適用されません。かなり自由ですが、制約がないわけではありません。

広報コンサルタント業務は、新聞などを主軸とする日経グループの場合、利益相反関係に注意しなければなりません。通常なら取締役会での承認などが必要になると思われます。

経済紙である日経や日経ビジネスなど雑誌を発行する日経BP社は企業ニュースを公平、公正に扱う必要があります。常識的に考えれば、特定の広報コンサルタントと特別な関係を持つことを認めないはずです。

SPPと日経グループが資本や業務の提携関係にあるとも聞いていません。

日経BPはオンライン版を含めて日経ビジネス誌など有力な媒体を持っています。その取締役であれば特定の団体や経営者らの広報を受け持つSPPの顧問になるはずがない、と日経の現役幹部も懐疑的です。

SPPのホームページに掲載されていたように酒井綱一郎氏が顧問を務めていたのは事実なのでしょうか?

私が日経の喜多恒雄会長や岡田直敏社長らにそうした情報を伝えたのは8月20日、広報室に質問を送ったのは23日でした。

すると、22日にまずSPP社のホームページから3人の顧問のうち酒井氏の名前だけが消えました。

日経側からの指摘で「事実に反する情報だった」とSPP社が削除したのでしょうか?23日に送った質問は、その確認も含めたものです。

24日未明時点で確認したところ、SPP社のホームページは「ただいま準備中です」となり、閲覧不能の状態になりました。

偶然なのか、日経からの問い合わせが原因なのかわかりません。SPP社に事実確認を求める必要があるかもしれません。

酒井氏はPWJが2016年に受賞した日経ソーシャルイニシアチブ大賞の実務責任者でした。

日経子会社の日経BP副社長及び日経BPコンサルティング社長などを経て、今春から日本経済新聞出版社副社長を務めています。

そして広報コンサルタント会社SPPの若林直子社長も2012年から2016年までこの大賞事務局スタッフでした。何百通と届く応募書類のチェックや関連イベントの企画、PRを担当していた人物です。

日経ソーシャルイニシアチブ大賞の仕事と並行して2015年7月にSPPを設立し、広報コンサルタントとしての営業準備を整えています。

ホームページでは、業務の例として広報計画の立案やニュースリリース作成、記者の紹介、インタビュー記事の作成などを請け負ったり、相談に乗ったりすることを掲げていました。

日経は応募書類の内容を含めソーシャルイニシアチブ大賞関連の情報がSPPの業務に無断で流用されないよう契約で確認していると思いますが、念のためその点も日経への質問に追加しました。

さまざまな会社や組織で働いた経験がある若林氏は日経BP社で役員や編集長秘書を経験した時期があり、日経ビジネス編集部にいた酒井氏と20年の付き合いになるそうです。若林氏のSNS投稿によると、大賞事務局のスタッフとして招いたのも酒井氏ということです。

SPPがPWJをクライアントとしたのは、大賞受賞と同じ年の夏頃のようです。 若林氏が日経ソーシャルイニシアチブ大賞を通じてPWJの大西健丞代表と面識ができたのがきっかけだとみられます。

PWJは2015年にも日経ソーシャルイニシアチブ大賞の最終審査に進んでいます。しかし、ふるさと納税の活用による捨て犬保護活動は選に漏れました。

翌2016年は、インパクトの強い捨て犬の「殺処分ゼロ」目標への挑戦を掲げ、そして熊本地震でのPWJの災害救助犬の活躍もあって大賞を受賞することになったようです。

ところが事業は簡単には進みません。

繁殖防止など様々な対策をとった上で達成されるはずの「殺処分ゼロ」という目標を前面に押し出したため、殺されないですむと考えて県動物愛護センターなどに持ち込まれた犬が想定より多かったりしたそうです。

殺処分対象のイヌを全て引き取るためのスタッフや施設の確保が追いつかず、2018年に登録や予防注射をしなかった狂犬病予防法違反で広島県警に書類送検されました。

続けて2019年には、狭いところに多数の犬を押し込んで死なせるなどした動物愛護管理法違反の容疑で広島県警に書類送検されています。

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