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教えて大西さん、ピースワンコのこと㉔法令違反をしてまで「殺処分ゼロ」を標榜する目的は何なのでしょう?

1、國田博史部長、高梁市を訪問

 さて、NPO法人ピースウィンズ・ジャパン(PWJ、広島県神石高原町、大西健丞代表理事)は、広島県動物愛護センターなどから救出した犬たちすべてに「鑑札」を付けることができるのでしょうか?

 岡山県高梁市によると、ピースワンコを含めてPWJの国内事業を統括する國田博史部長が9月9日、高梁市役所を訪問したそうです。市幹部が4日にピースワンコ西山犬舎へ足を運んで、安倍誠プロジェクトリーダーに指導した内容を改めて確認したということです。

 市側は赤木和久部長が応対し、國田部長に狂犬病予防法の順守、つまり法が求める通りに犬の鑑札や予防注射済み票を西山犬舎に収容する犬すべてに装着するよう申し入れました。

 わざわざ再確認するまでもないことですが、現場責任者安倍誠氏の上司である國田氏が市役所にやってきたことで「NPOの中で意思疎通はできていることは確認できた」(赤木部長)のは市にとって収穫だったようです。

 岡山県動物愛護センターも6月に高梁市にあるピースワンコ西山犬舎を抜き打ち調査し、犬の飼養環境に問題ありとして、収容している犬の数を減らし、世話をするスタッフを増やすよう指導しました。

 しかし、先週末時点で、県の指導にどのように対応するかPWJ側から報告は来ていませんでした。現場での指導が大西健丞代表理事ら最高幹部に伝わっているかどうかそれさえも監督側が待っているだけではわからないのです。

2、「困難犬」を引き取り宣伝

 PWJは鑑札を付けていない犬が多数いる理由として、野犬が多くて首輪をつけられないとか、鑑札を誤飲する危険があるとか説明しているようです。

 しかし、動物愛護センターが普通だったら譲渡しないような犬を望んで引き出し、訓練して新しい飼い主を探すと宣伝して寄付を募ったのはほかならぬPWJの側です。

 病気であってもケガをしていても、人を見て怯えたり、噛み付いたりしても「命を選別しない」といって引き取り、保護犬事業は「寄付を集めるのに訴求力が高い」と総会で確認をして、そうした犬たちの写真や映像を繰り返し繰り返し広告で流し、お金を集めてきたのです。

 つまり、難点を抱える犬の引き取りを宣伝に使うというファンドレイジング作戦の結果、必然的に、首輪をつけるのに手間のかかる気性の難しい犬がピースワンコの犬舎に溢れる事態となったのではないでしょうか?

3、知事「違反解消」発言はウソ

 広島県はピースワンコに鑑札を装着しない犬がたくさんいることを立ち入り検査でずっと前から知っていて、公表していませんでした。

 PWJは2018年6月に狂犬病予防法違反の疑いで広島県警の家宅捜索を受け、広島県動物愛護センターは収容犬をピースワンコに譲渡するのを一時中止しました。

 しかし、県警捜査終了後に県動物愛護センターが立ち入り調査をして、対外的には「違反状態は解消した」(2018年7月3日の湯崎英彦知事の記者会見)とウソの発表をし、ピースワンコへの犬の引き渡しを知事会見当日に再開し、今日に至っています。

 隠し続けた「鑑札未装着」は実質放置状態です。県は立ち入り調査の都度、改善を指導しているといいますが、鑑札を付けていない犬の頭数など実態をまったく把握していません。指導した「ふり」をしているだけである疑いが濃厚です。

4、神石高原町も「未装着」把握

 ピースワンコの本部シェルターなどがある神石高原町役場に質問を送ったところ、同町役場からも「(ピースワンコに)鑑札をしていない犬が存在することについては、存じています。頭数等の現況については、把握していません」という回答を本日(14日、写真)受け取りました。

 町役場としても鑑札を付けるよう「お願いしています」ということです。しかし、これも広島県動物愛護センターと同じように形ばかりの指導で、法令違反を解消させたいという意思は感じられません。

 神石高原町はPWJに町内での犬の保護や動物愛護啓発事業を委託しています。これについても「現段階では委託の中止等については考えていません」という回答です。

 広島県動物愛護センターと神石高原町は、2018年6月にピースワンコ犬舎を共同で立ち入り調査し、違反解消を確認したと県知事に発表させて、ピースワンコへの犬の引き渡しを再開させた当事者です。外部からの鑑札問題に関する通報にも両者はのらりくらり対応し、既に把握済みであることも知らせず、はぐらかし続けていました。

5、「引き出し時に首輪」という工夫

 やはり、PWJに法定義務を守らせるには警察に告発して、狂犬病予防法違反の疑いで捜査してもらうほかないのかもしれません。

 そんなことを考えながら、以前、三浦半島の湘南国際村近くにあるシェルターを訪ねたことがあるNPO法人神奈川ドッグプロテクション(KDP)の菊池英隆代表に電話で話を聞いてみました。

「KDPはどうしていますか?」

 すると、こんな答えが返ってきました。

 「他の団体のことはわかりません。しかし、私は神奈川県動物保護センターから延べ1000頭以上の犬を引き出しましたが、引き出す時に必ずセンターの中で首輪をつけ、リードを付けて車に乗せてきました。引き取った後に犬を脱走させるなどあってはならないからです。保護するものの責任です」

 私が「人を警戒して近づけない犬もいるのでは?」と尋ねると、こんな答えが返ってきました。

 「私を怖がらなくなるまで、センターに通うのです。一頭一頭そうやって向き合うことこそ愛護だと思います」

 まだ日本経済新聞社に勤めていたころ、私は菊池さんにインタビューをしたことがありました。3年ほど前のことです。神奈川県での「犬の殺処分ゼロ」を実現するため、菊池さんはかなり無理をして動物保護センターから犬を引き取りました。

 結果として「殺処分ゼロ」は実現しましたが、心身ともに疲れ果て、仲間も失ったという話をその時うかがいました。無理をして数字上の「ゼロ」を追う虚しさを知ったのです。

 「ゼロ」を超えて、KDPがいまどんなことに取り組んでいるかは改めて詳しく紹介するとして、私ここで皆さんにお伝えしたいのは、一頭一頭に首輪をつけてから引き出してきたという菊池さんの動物に向き合う姿勢です。

6、動物に対する愛はあるのか?

 ピースワンコや広島県、神石高原町が「法令違反」を長い間実質的に放置してまで「犬の殺処分ゼロ」を標榜するのは、いったい何のためなのでしょう?

 そこに動物に対する本当の愛があるとは感じられないのです。

 私がピースワンコの経営者たちの言動や振る舞いから見るのは、かわいそうな犬たちを見せ物にして、お金を稼いだり、自らの功名心を満足させている姿です。まるでサーカス、曲芸団のようです。

 ピースワンコや大西健丞代表理事ら幹部は、鑑札未装着なんて運転免許証不携帯みたいなものだと考えているのでしょう。

 しかし「なくすのが心配だから免許証は家に置いてある」と釈明しても白バイ警官は許してくれません。形式的なことのようでいてルールを守るという意識が試されているからです。

 罰金を支払い、動物取扱業の廃業を迫られれば、すべてが水の泡になるということを大西さん、わかっていますか?

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