「酒井氏はSPP顧問にあらず」日経が回答、PWJ問題への言及避ける

狂犬病予防法違反や動物愛護管理法違反の疑いで広島県警から代表らが書類送検されているNPO法人ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)のPRを受け持つ広報コンサルタント会社、ソーシャルピーアール・パートナーズ(SPP)社。そのSPP社顧問に日経グループ会社役員の酒井綱一郎氏が就任しているというSPP社ホームページの記載はやはりウソでした。

筆者の質問に対し、日本経済新聞社広報室は28日、「日本経済新聞出版社の酒井綱一郎副社長がソーシャルピーアール・パートナーズ社の顧問に就任したという事実はありません」と回答を寄せました。

文末にあるように、短い文章でそっけないくらいですが、日経グループの特定の役員との関係をひけらかしていたSPP社とそのクライアントたちを特別扱いしていなかったか、厳しい検証と監視が始まったと確信しました。

SPPの若林直子社長も26日、「酒井綱一郎氏との顧問契約はございません。報酬も一切発生しておりません」という含みのある表現ながらホームページで酒井氏を3人の顧問の1人としていたことは間違いだと認め、削除し、酒井氏にも謝罪したと回答していました。


若林氏は「表記ミス」だと主張していて、意図的に虚偽の情報を流布したものではないという立場のようです。

しかし、若林氏のSNS発信記録を読むと、彼女は酒井氏が日経グループの規定でSPP社顧問になれないことを知っていたようです。それなのにホームページやSNS上で繰り返し、かなりの長期間にわたって「顧問」などと紹介する行為を「表記ミス」というのは無理があると私は思います。皆さんの感想はいかがでしょう?

広報コンサルタント が経済誌や新聞の発行元の大幹部のことを顧問じゃないのに顧問です、顧問です、と繰り返し発信する。証券市場なら「風説の流布」と断罪されるような行為です。「日経ビジネス」の記者経験もある酒井氏はなぜ、SNSであれだけ紹介されていたのにウソだと指摘し、訂正を求めなかったのでしょう?

若林氏は酒井氏をメンターと呼び、彼の助言と人脈、そして日経ソーシャルイニシアチブ大賞事務局としての経験からSPP社はスタートしています。顧問契約はなくとも若林氏の相談に乗ったり、SPP社やそのクライアントのPRなどに協力することがなかったでしょうか?

同じ日経グループにいても酒井氏とは職場が異なり私は面識もありません。しかし、誘惑の多い経済報道に携わるからには、万が一にも疑われることのないよう「身綺麗であれ」と先輩達は口を酸っぱくして教えてくれたはずです。彼の振る舞いはまったく理解に苦しみます。

若林氏には、念のため酒井氏を除く残る2人、ジャパンギビング代表の佐藤大吾氏と伊藤忠テクノロジーベンチャーズ顧問の安達俊久氏はSPP社顧問であることは間違いないか、酒井氏に酒食のもてなし等の便宜供与はなかったかなどを追加的に尋ねていますが、現時点では回答がありません。

SPP社の若林社長が日経ソーシャルイニシアチブ大賞の事務局のスタッフだったことについて、日経の回答は「NPOなどの社会貢献活動に詳しい若林直子氏に事務業務を委託し大賞審査は審査員の方々にお願いしました」というものでした。酒井氏による指名や一次審査への関与などについて言及はありませんが、否定もしていないので事実とみていいと思います。

最も重要な点である若林社長や酒井氏の行為が利益相反になる恐れがないかという点については、回答がありませんでした。

その点はとても残念ですが、調べようとすれば時間はかかります。日経が検証する中で今後、自ずと明らかになることでしょう。

掲載の基準を満たすものしか載らないとしても、他にもたくさんの掲載候補がひしめいているはずなのに、日経BPの媒体にはPWJの大西健丞氏をはじめとするSPP社のお客様、クライアントが頻繁に登場しています。

日経酒井氏と広報会社SPP若林氏の強い結び付きを裏付けるさまざまな情報や写真は、このコラムの読者から寄せられたものを含めて日経本社にたくさん届けられています。

それを日経から聞かされてのことと思いますが、SPP社の若林氏は急遽、ホームページやSNSによる情報発信を停止したり、内容を大幅に削除、修正したりしているようです。

ここから先は私の想像でしかありませんが、日経グループは、SPP社の若林氏の仕事に関わることを酒井氏に自粛させるのではないでしょうか。

また、SPP社の若林社長が自身のSNSやホームページで、顧問ではないのに日経の酒井氏を顧問として紹介してきた動機の説明や謝罪をしない限り、報道部門への接触を遠慮してもらうのではないでしょうか。

想像というより、そうあって欲しいという希望的観測かもしれませんね。

PWJ批判に少しでも間違いがあるとPWJは次々と謝罪を求めて裁判に訴えているようです。故意かミスか、まったく御構いなしの訴訟攻勢だと聞いています。訴える権利はあると思いますが、情報をオープンにして話し合えば簡単に解決するものもあるはずです。

若林氏もPWJ批判をやっかみだとSNS上でこき下ろしてきました。批判する人たちを情け容赦なく告訴してきたPWJのために働く広報コンサルタントとして、ずっしりと重いその責任と因果を感じていることでしょう。

最後に、2016年の日経ソーシャルイニシアチブ大賞を受賞したPWJについて。

PWJのPRを受賞直後から若林氏が請け負っていることや繰り返される法令違反行為について、日経は「コメントする立場にございません」ということでした。

日経にとって表彰制度は1つのイベント。収益開拓ビジネスの一環です。過去の事業の検証は時間の無駄ということかもしれません。

PWJの現状を見ればわかる通り、大賞への過大な評価や思い入れは持たない方がいいようです。

【日本経済新聞社広報室からの回答全文】日本経済新聞出版社の酒井綱一郎副社長がソーシャルピーアール・パートナーズ社の顧問に就任したという事実はありません。日経ソーシャルイニシアチブ大賞に関しては、NPOなどの社会貢献活動に詳しい若林直子氏に事務業務を委託し大賞審査は審査員の方々にお願いしました。ソーシャルイニシアチブ大賞と後継の日経ソーシャルビジネスコンテストともに社会課題を解決するアイデア、ビジネスモデルの育成を狙いに開催しております。このような趣旨に賛同する自治体に協力していただいており、広島県神石高原町もその一つであります。PWJに関するご質問についてはコメントする立場にございません。

※参考までに8月23日に日本経済新聞社広報室に送った質問は以下の通りです。

質問1、ソーシャルピーアール・パートナーズ社と日経グループ子会社役員の関係について

①PWJの広報業務を受け持っていると称するソーシャルピーアール・パートナーズ社(若林直子社長)のホームページに顧問として酒井綱一郎氏の名前が掲載されていました(今年8月21日現在、現在は消去されています)
日経グループ会社役員によるこのような外部の広報会社の顧問就任は、事実でしょうか?

②報道機関である日経本社または子会社の役員は、資本関係も業務提携の関係もないPR会社の業務に関わる行為は認められているのでしょうか?

③8月22日頃にソーシャル社のサイトから顧問としての酒井氏の名が消えたのは酒井氏もしくは日経側からの申し入れによるものでしょうか?

質問2、日経グループとソーシャル社との関係について

①PWJが2016年に日経ソーシャルイニシアチブ大賞を受賞した際、ソーシャル社の若林氏は一次審査に関わり、大賞のPR業務も請け負ったと聞いておりますが、事実でしょうか?現在も日経の関連イベントのPRを発注していますか?

②日経ソーシャルイニシアチブ大賞のPR担当としてソーシャル社を選定したのは若林氏が氏のメンター、指南役として20年来の交友があると公言している酒井氏だと聞いておりますが、事実でしょうか?

③ソーシャルピーアール・パートナーズ社の若林直子氏のプロフィールによると、2012年から16年まで日経ソーシャルイニシアチブ大賞の企画運営、PR、関連セミナー企画等の業務に関わったとあり、その途中の2015年7月にソーシャル社を立ち上げているようです。大賞関連業務に従事した時の立場は日経グループの会社の社員(嘱託、派遣を含む)でしょうか、それとも外部の業務委託先でしょうか? 若林氏のソーシャル社代表取締役としての立場を知っていましたか?また、利益相反のないよう取り決めがなされていましたか?

質問3、日経とPWJ及び広島県神石高原町の関係について

①ソーシャルイニシアチブ大賞の後継と思われるソーシャルビジネスコンテストで、神石高原町が協力自治体となっている理由を教えてください。イニシアチブ大賞を受賞したPWJの本部所在地であることと関係するのでしょうか?

②2016年にPWJにイニシアチブ大賞を与えた日本経済新聞社は、その後PWJが受賞理由であった捨て犬シェルター事業で法令違反を繰り返し、二度も書類送検されている事実を知っていましたか?(いつ知りましたか?)イニシアチブ大賞受賞団体による法令違反、書類送検をどのように受け止めていますか?

③酒井氏が顧問を務めたソーシャル社の若林氏は、PWJの広報業務を請け負っているとされています。イニシアチブ大賞PRを担当した上で、事後的とはいえ関係企業の広報を受け持つことを大賞PRを委ねた日本経済新聞社はどのように考えていますか?(地位を利用した好ましくない営業行為だと思いませんか?)

④若林氏は事あるごとに日経グループや酒井氏との関係をSNSなどで発信して、PR事業獲得に利用しているように見受けられますが、酒井氏はソーシャル社に取引先を紹介したことがありませんか?

⑤不祥事等の事由により大賞を取り消す規定はありますか?ない場合、今後、日経主催のコンテストでそのような規定を設ける用意はありませんか?

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