PWJ、渋谷健司理事(東大教授=当時)にヘルス政策提言を574万円で「外注」

1、2019年から活動拠点は英国  

NPO法人ピースウィンズ・ジャパン(PWJ、広島県神石高原町、大西健丞氏)理事の1人に渋谷健司さんという著名な公衆衛生研究者がいます。

 東京大学医学部やハーバード大学で学び、WHOでも仕事をしたこともあるようです。2019年春、東大教授を辞めて英King's College London に転じました。

 King's College London での役職はUniversity Institute for Population Health所長ということです。新型コロナウィルス問題について最近も日本経済新聞にコメントを寄せています。

2、理事へ異例の事業発注

 その渋谷氏に対し、PWJは2018年3月から2019年1月までの期間に「ヘルス政策提言事業外注費」として574万353円を支払っています。

 PWJがホームページ等で一般に公開する決算資料の「役員及びその近親者との取引」の欄に登場します。そこでは金額しか書かれていませんが、所轄官庁の広島県に提出した資料では氏名と事業名が報告されていました。

 公衆衛生・医療の研究費として、574万円など小さな金額かもしれません。

 しかし、あくまで「政策提言」の外注です。新しい研究というよりは、これまでの自身の研究成果を踏まえ、どこかで役立つ政策に生かせるようポイントを整理するものだろうと想像します。霞が関の役所の審議会や研究会の委員を引き受けていれば、日当以外、特別な報酬などなくとも書くこともあるでしょう。

3、だれに対する政策提言?

 そう考えると、574万円は結構大きな金額です。支出額には1円単位の端数もついていますから、外貨建てで支払ったものを円換算したか、固定費に加えて国内外で支出した経費を実費精算したものかもしれません。

 渋谷氏は2018年春頃から、現在の勤務先へのヘッドハントの誘いを受けてロンドンとの間を行き来しています。そのための費用や転職面接のための過去の業績整理など準備費用もかかったに違いありません。そういう時期でのPWJからの政策提言の依頼ですから、渋谷氏にとっては「渡りに船」だったかもしれません。

 しかし、肝心の政策提言は誰に対するものなのでしょう?

 PWJの年次報告など公表された情報をいろいろ点検してみましたが、渋谷氏に外注したヘルス政策の提言のようなものに言及した記録は見当たりません。

4、河野ODA懇談会に大西氏

 少し関係するかもしれないと思えるのは、2018年7月に河野太郎外相(当時)のもとに設置された「ODAに関する有識者懇談会」が設置され、PWJの大西健丞代表理事も14人の委員の1人として参加したことでしょうか。

 外務省の発表文によると、この懇談会は「ODAに関わる実施主体(国際協力NGO,民間団体等)をどのように強化し,各々の特性を活かした役割を担ってもらうか」を有識者に議論してもらうのが目的でした。

 会議はわずか4回だけで、11月の最終回に提言をまとめています。

 大西健丞氏は2回目の会議で「グローバルヘルスを通じて日本のNGO・企業のプレゼンスを高める」という表題の資料(全3ページ)を提出しました。

 外務省が公表した会議資料や議事要旨を読むと、大西氏は、多国間基金への拠出分にも日本枠を作り、公衆衛生分野での民間企業・NGOの参画・連携の機会を増やして欲しいと訴えたようです。渋谷氏への外注提言はこれのことを指すのでしょうか?

 しかし、残念なことにODA懇談会でヘルス政策自体は主要テーマでもありません。

 大西氏提出資料もわずか3ページしかありません。公表された基礎的なデータや資料をもとにアイデアを少し披露した程度ですから、この分野に関心があれば大学生でも書くことができそうなメモです。

 PWJが574万円も支出して渋谷教授に発注した「ヘルス政策提言」がそんなものであっていいはずがありません。どこかに分厚い提言文書が転がっていて欲しいです。

5、コロナ禍のいま「提言」全文公開を

 いま世界中を恐怖のどん底に陥れている新型コロナウィルスは、感染症対策など公衆衛生を専門とする渋谷氏得意の分野です。

 PWJにはぜひ、渋谷氏に574万円で外注してまとめたという「ヘルス政策提言」の全文を公開して、公衆衛生を甘く考え、新型コロナ対策で後手後手になっている安倍政権の目をさまし、不安に怯えている多くの一般国民を勇気づけて欲しいと思います。

 そして、大西氏のブレーンとしても助言できるお立場の渋谷氏は自身も大の犬好きだと聞いています。自己中心的で広島県や他の愛護団体を振り回してもいる犬の保護(ピースワンコ )事業に関して、PWJのあり方を考え直していただきたいとも思います。

 渋谷氏は、狂犬病予防法違反など公衆衛生政策上の不手際が問題になったピースワンコ事業のみならずPWJの経営全般に責任を持つ数少ない理事の1人で、責任を共有しているのです。

 そこで、ヘルス政策提言を引き受けた経緯や内容とともにPWJの経営の実態、ピースワンコ事業のあり方などについて渋谷氏の考え方を尋ねてみました。ぜひ、回答をいただきたいと思います。

6、渋谷教授への問い合わせメール

以下は3月12日付で渋谷健司氏に電子メールで送った問い合わせの内容です。

【1】 広島県庁へのPWJの報告資料に、取引先を「渋谷健司」とする2018年3月から2019年1月の間の役務提供(ヘルス政策提言事業、外注費)が記載されています
① この事業は渋谷先生が受注されたものに間違いないでしょうか?
② PWJからの随意契約により受注したものでしょうか?
③ だれに対し、どのような目的で提言する予定だったのでしょうか?
④ その成果は公表されているでしょうか?
⑤ 理事在任中にこれ以外の役務提供、対価の受け取りはございますか?

【2】 PWJは2018年度(2019年1月期)決算で、代表者がPWJと同じ大西健丞氏である公益社団法人Civic Forceから3億円を借り入れています。公益社団法人の資産は大半が特定資産として使途が制限されていますが、この借り入れは何を目的に行われたのでしょうか?また、担保や連帯保証の提供は行われたのでしょうか?利益相反に関して理事会もしくは総会で議論はされたでしょうか?

【3】 PWJは広島県神石高原町のふるさと納税制度を利用して、ピースワンコ事業への寄付を募っていますが、その際、事業説明において「殺処分ゼロを維持する活動は、これまで、ふるさと納税や継続的なサポーター制度など、さまざまな形で多くの方々にご支援いただいています。しかし、収支のバランスは厳しく、借入金でなんとか運営資金を確保しているのが実情です」として、あたかも保護犬部門の資金繰りが厳しいかのように説明しています。しかし、事業部門別収支のうち「保護犬」は毎年大幅な黒字です。毎年余剰金が預金として溜まっているはずですが、なぜ、資金繰りが厳しいという説明を続けるのでしょうか?
【4】 広島県健康福祉局によると、PWJは2019年1月から「適切に飼養管理できる範囲で犬を引き取る」という方針に変更し、殺処分対象の犬を全頭引き取るという方針は取り下げたようです。しかし、昨年1月以降も今年1月末まで寄付募集にあたっては全頭引き取りを継続しているかのように説明をして、寄付を呼びかけていました。支援者に対して誤解を招かぬよう丁寧に正確に説明するよう広島県はPWJを指導しているようですが、この基本方針の変更やその狙いについて、理事会ではどのように議論をされたのでしょうか?
【5】 渋谷先生は現在英国の大学に勤務中ですが、PWJの理事は現在も引き受けていらっしゃいますか?理事会、総会には毎回出席していらっしゃいますか?

 以上です。

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