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「頭数制限」は自治体にとって切実なニーズだったのかという点を環境省はどのように説明するのでしょうか?

 犬猫適正飼養のための数値規制をめぐる専門家による議論の経過を調べているうち、環境省が3年ほど前に実施した自治体アンケート調査の結果があることを知りました。
 環境省が開いた専門家による検討会の第2回会合(2018 年12月)にアンケート結果の概要が報告されています。

 ご覧いただくとわかるように、基準明確化が必要だとする声が多いのは、動物取扱責任者の資格要件やケージのサイズでした。従業員1人あたりの飼養頭数上限を希望したのは、1自治体だけでした。
 
 私が取材を通して把握した限りでは、岡山県動物愛護センターが、スタッフ1人あたり小型犬30頭までという目安を設定して、動物取扱業者の監督、指導にあたっています。

 条例などを根拠とする絶対の基準ではありませんし、そもそもそれだけをもって白か黒かを判別するものでもありません。いろいろな判断基準のひとつです。

 ブリーダーなら犬は15頭までという基準に科学的根拠があるわけでもなく、いくつかの外国の事例から動物学者でもない国会議員やそのアドバイザーらがまとめた案です。
 それを環境省が丸のみしたのは、動物愛護管理法が議員立法により成立した法なので、みんながノーと言わない案を採用しておけば無難という程度でしょう。
 これを必須の遵守事項とすれば遺棄など副作用も生まれる恐れがあるとして、環境省検討会の専門家座長は、準備期間を設けること、業者の優劣により上限値の緩和や強化を検討すること等を提言したのは至極当然のことでした。

 ところが、環境省案では上限値の弾力運用など座長提言は退けられました。非常に奇異で、舞台裏で大きな工作が行われたと見なければなりません。
 一方で、誰が要望したのか、15頭という数値からは繁殖引退犬が除外されるという「骨抜き」規定が登場しています。環境省はその規定を急遽追加した理由も審議会で十分に説明しないまま、パブリックコメントを募集しています。

 環境省中央環境審議会動物愛護部会には、政策決定プロセスの検証の必要性を重視する打越綾子成城大学教授のような政治学者もいます。かつて打越教授は審議会で議論した政策が政治の力でころりと変わることを批判し、議事録も公表されない議連が介入することに不快感を表明していましたが、今回のこうした奇妙な数値規制環境省令案の作られ方をどのようにみているのでしょう?
 日頃、情報公開の必要性を強く訴えられている福島瑞穂参院議員にも、超党派動物愛護議連事務局長として、繁殖引退犬を除くという環境省のいじくりに関してコメントを求めましたが、回答はありません。まさか議連が要求したのではないでしょうね?

 理想を語るのは簡単ですが、それに今すぐ対応できないという声は多いようです。自治体も1人あたり頭数制限について、真剣に採用を考えたことがなく、まして運用の経験はありません。環境省ですら岡山県の先行モデルを知らなかったというのですから、そもそもどれだけ現場の声を把握した上で数値規制案を作ったのか疑問です。

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