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スマートニュースと新聞の違いについて考える――グローバルな人材を育てる

  日本経済新聞12月3日付朝刊の報道によると、ニュース紹介サイトなどを運営するスマートニュース社(鈴木健CEO)の推定企業価値は2017億円ということです。

  5年ほど前にマレーシアの知人から会社名を教わり、そのアプリの感想を聞かせてくれ、と言われました。彼は日本語ができないからです。インターネットで調べたら出てきたのはロシアの会社のサイトで、すぐに見つけることができませんでした。

「だから新聞社はダメなんだ。自分たちと競合するサービスのことをまったく知らないでいる」

  英国の新聞事業にも投資していたその知人は、国を問わず新聞業界のふるい体質に辟易していたようでした。定期的に日本に来て、不動産を中心に投資対象を探していましたが、スマートニュースを知って興味を抱いたようでした。彼は当時、直接かファンドを通じて少額ながら同社に投資をしたはずです。

  シンガポールのGrabと同じ2012年設立ですから、グローバルにみれば決して成長が速すぎるわけではありません。しかし、企業価値2000億円ということは、日本経済新聞社が2015年に全株式を1600億円(当時)で取得した英国の老舗経済紙フィナンシャルタイムズ(FT)の評価を上回る額です。

  FTの創業は1888年ですから、事業のタイプは異なるとはいえ、スマートニュース社は国際的にみてもニュース配信事業に関わる企業として極めて高い評価を獲得していると言えます。

  当時、日経は自らアジアを中心とする英字媒体 Nikkei Asia Reviewを発刊したばかりでその事業の赤字が問題になっていたのに、事業が一部重複するFTを買収したので二重の投資負担が重くのしかかりました。

 日経はいまもってFT投資から十分なリターンを回収できていないばかりか、かたちの上では親会社である日経自身の取材・報道のための経費や新しい投資の財源を切り詰めている状態だとみられます。

  日経は「日経電子版」の有料会員獲得ががほどほどの成績を上げていたので、スマートニュースのような無料配信型のビジネスを見下していました。

 もしも、日経がFTに投じた資金をスマートニュースのような事業に投資していたら、と想像することがあります。

 そして、やはり失敗していただろうな、という結論に至ります。

 それは、スマートニュース社の経営陣の顔ぶれと比較すればすぐにわかります。この会社は米国市場でも資金調達に成功しています。企業の規模は圧倒的に日経が大きいのですが、経営層にグローバルな人材、ITに精通した人材が乏しいのです。

  2021年9月15日、サンフランシスコ発のプレスリリースから抜粋しました。

SmartNews Inc., the global leader in redefining information and news discovery, announced today it has raised $230 million in its Series F round of funding. This brings the company’s total capital raised to date to more than $400 million and secures its status as a “double unicorn” with a valuation of $2 billion, the highest for a standalone news app.

  テレビ東京はじめ日経グループに利益をもらたす子会社、関係会社も多くは40-50年も前のの経営者たちが基礎を作ったもので、かつては超優良といわれた出版事業もリストラしています。国や自治体の外郭団体を笑えないほどお荷物子会社がたくさんあります。

 日経には過去からの蓄えを取り崩せば会社を買うお金はあります。経済報道に関する限りライバル不在というぬるま湯に育った経営陣やその参謀たちには、将来を切り拓く頭脳や未知の才能を見いだす目利きが残念ながらいないのです。

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