広島県に犬猫保護「ふるさと納税」のススメ、ピースワンコ独占に終止符を

1、「寄付集め」2年前に課題として浮上

 「企業からの寄付、企業版ふるさと納税、ふるさと納税等の検討」

   広島県健康福祉局が2017年12月6日に作成した「2018年度の動物愛護管理業務の具体的な進め方」という行政文書には、ふるさと納税の活用も考えていることがはっきりと書かれています。

   日本全国、犬猫の保護活動をしている方々は、個人・団体を問わず、場所や活動資金の確保に四苦八苦していらっしゃいます。広島県がふるさと納税を実施し、県の動物愛護センターの活動を充実させ、あわせて協力団体や個人の活動もサポートできるような仕組みを官民一緒に作ってはどうでしょう。

   理由は簡単です。もうNPO法人ピースウィンズ・ジャパン(PWJ、神石高原町、大西健丞代表理事)の保護犬活動「ピースワンコ」に期待できそうもないからです。

  広島県は広島空港近くに新しい動物愛護センターを建設する準備を始めていますが、完成をまっている時間がもったいないくらいです。仮設でも保護施設を増築したり、専門のトレーナーに犬猫の世話や訓練を委託したりすれば、2019年度から回数を増やしている譲渡活動にも弾みがつくでしょう。

  この数年間、広島県は動物愛護センターの移転計画を描くことには熱心でしたが、現場での活動、特に野良犬・野良猫を減らすための具体的な取り組みをおろそかにしていました。

  特に犬の場合はPWJ/ピースワンコが「ふるさと納税」の寄付をたくさん集めようと、2016年4月、かなり無理をして「殺処分対象になる犬を全頭引き取る」と宣言したせいもあって、県は行き場のない犬をひたすらPWJに引き渡すブローカーのような役割に甘んじていたのが実情でしょう。

  野良犬の捕獲を増やす計画も実績は目標に届きません。そもそも野良犬がどのくらいいるかも把握できておらず、収容犬をPWJのシェルターに引き渡して、動物愛護センターでの殺処分をゼロにするというかりそめの「ゼロ」は、いつ崩れてもおかしくない状態です。

2、エンジェルズがPWJに対話申し入れ

  広島県の説明によると、PWJは殺処分対象の犬を全部引き取るという宣言は2019年1月に事実上撤回したようです。県はPWJにその方針変更を支援者らにも周知するよう指導していますが、詳しい事情説明を避けています。

 ともあれ、PWJは現実に県動物愛護センターから引き取る犬の頭数を制限していて、愛護センターに犬が居残るケースが増えているということです。それを滋賀県の動物愛護団体エンジェルズ(林俊彦代表)が引き取り、何とか殺処分を回避できています。ピースワンコの引き取り頭数より多いこともしばしばあるようです。

  しかし、他県でも引き取り活動をしているエンジェルズは、広島県の犬を必ず全頭引き取るという約束をしているわけではありません。林氏は県を通じて、PWJの大西代表理事に寄付集めの際にうたった殺処分対象の「全頭引き取り」という公約の行方などについて話し合いを求めているもようですが、大西氏からは反応がないそうです。

  その点について、林氏に尋ねたところ「エンジェルズは協力にやぶさかではないものの、広島県やピースワンコが何を考えているのかよくわからない。ノーコメントということではこちらも考え直さなければならないと思う」ということです。

  PWJは、様々な名目で「ふるさと納税」を募っていますが、目標を大きく上回る額を集められるのはピースワンコくらいで、資金調達が計画未達に終わるケースも多々あります。教育や医療など地域創生事業の不振が原因なのでしょうか、2017年度(2018年1月期)には債務超過に転落して、団体が存亡の危機に直面したこともあります。決算資料を分析する限りでは、ピースワンコが集めた寄付金も使い切るのを惜しみ、預金として残そうとしているようにも見受けられます。

  PWJはたくさんの犬を世話するためのスタッフ確保もままならず、狂犬病予防法に違反する行為も犯して、広島県から注意、指導を受けたこともあります。いまはからだが大きい成犬でも4100頭を収容できるという犬舎を整えているということですが、ふるさと納税サイトでのPWJ説明では収容頭数を2800~2900頭程度にとどめているようです。

   それでも世話が十分に行き届くのか心配になるくらい膨大な頭数です。「殺処分対象の犬を全頭引き取る」という看板を引っ込めるなら、これまで糞尿処理の不行き届きなどで迷惑をかけた神石高原町の地元住民や広島県で保護活動をする他の団体にも方針変更の理由や今後について詳しい説明をする必要があるでしょう。

3、知事・副知事級で公正な判断を

   広島県が2年前から検討しながら、いまだに「ふるさと納税」を利用しない理由について、同県幹部は「民間団体の寄付との競合も心配した」と打ち明けてくれました。

 動物愛護問題も所管する田中剛・県健康福祉局長は医療・がん対策部長だった2017年末、休日・執務時間外に狂犬病予防法違反への対応について、告発を恐れたPWJ幹部から所轄の県動物愛護センターを通り越して電子メールで直接相談を受けたことがあります。

 県担当課は、田中部長(当時)の介入により手加減したことを全面的に否定しますが、本来なら田中部長は相談を却下し、担当部署で事情にも一番詳しい県動物愛護センターと話し合うよう伝えるべきでした。

 田中氏は政治家ら共通の知り合いを含めてPWJ大西代表理事らと個人的にも付き合いがあるため、PWJに接する部下たちの態度や判断に影響を与える可能性を排除できません。「ふるさと納税」の検討にあたっても、県がPWJに遠慮する一因になっているのではないかと思わざるを得ません。知事・副知事や他の部局も交えて公平な判断が行われることを祈るのみです。

  これから先、犬保護や寄付集めをPWJ/ピースワンコまかせにしておくと、先が読めず、関係者みんなが困ってしまう状況になっているのではないでしょうか?たくさんの犬の命やシェルター周辺住民の平穏な暮らしにも影響する問題だけに、むしろPWJ/ピースワンコまかせにすることは危険で、県が積極的に介入しなければならない局面を迎えているような気がします。

 県が犬猫の保護・譲渡活動を活発にするために「ふるさと納税」で寄付を募り、それを協力団体の活動に応じて分配もすればいいのです。ピースワンコのように「一般管理費」として15%ものおカネが事業とは直接関係のない団体運営費用としてリザーブされることもなくなるでしょう。みんなの力で、何年か先に背伸びをしなくても「殺処分ゼロ」を永続させられるような状態を作り出せばいいのです。

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