「競争できる環境」を望んだ農業団体
全国肉牛事業協同組合の理事長を16年間務めて今年8月に退任した山氏徹(やまうじ・とおる)さんを囲む懇談会を、29日夕、東京・内幸町の日本記者クラブで開きました。
日比谷公園を見下ろす場所にあり、窓越しにみる日比谷や大手町のオフィス街の夜景もなかなかキレイです。自民党農林部会長当時、政府、農業関係者との議論を積み上げて農政改革案をまとめ上げた小泉進次郎環境相も駆けつけ、山氏さんを労いました。
組合は「牛」という動産を担保にした融資制度を作り上げたり、資材をまとめて調達して組合員に安く提供したり、まさに「事業協同組合」として和牛、交雑種(F1)、乳用種(去勢)を問わず肉用牛を生産する農家をサポートしてきました。
就任時、482人だった組合員の数は現在1108人に増えています。農業団体としては稀有なことです。アンケートをしたところ、8割は後継者も確保できているという結果だったといいます。
組合員の中には酪農との兼営で1万頭以上の牛を飼うメガファームもいくつかありますが、多くは家族経営の牧場です。地元JA(農業協同組合)の高い手数料や金利に悩まされた人も多くいて、自らも北茨城市の山奥で1000頭余りの牛を飼う生産者であり、JA組合長の経験もある山氏さんは、JA全農や農林中央金庫の経営改革を促し続けました。
肉牛肥育農場の立ち上げを助けてくれたJAに感謝をしているという山氏さんは、決してJAの解体を望んでいるわけではなく、再生を期待しているのです。彼は業界のリーダーとして、担保その他でJAに縛られた農家が苦吟する様子を全国各地で見てきました。
「競争したい。競争できる環境を整えて欲しい」
自民党農林部会のヒアリングでそう訴えたときのことを振り返っていました。
山氏さんのような指導者の存在を知って、小泉さんも農政改革の必要性についての意を強くしたようで、全農に飼料や農薬、肥料、農業機械の値下げを迫ったのは記憶に新しいところです。(続く)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?