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【考察】 MV『テレパス』について

『テレパス』のMVは一度見ただけでは、これが何を意味しているのか分からない、かなり難解な映像になっているように思います。しかし、ヨルシカの他の作品とも比較して見ることで、見えてきたものがあるのでご紹介します。

 上は『テレパス』、下は『だから僕は音楽を辞めた』のMVのワンシーンを切り取ったものです。『テレパス』の世界は、見るからに荒廃した世界であることが分かります。『だから僕は〜』の世界は現代に近いんですが、二つの画像には共通するところがあることから、まず同じ世界であると仮定します。しかし、ここまで荒廃するには1000年単位の時間が経っているのではないかと思うのです。

 そこで考えたのは、もしかすると、この世界では人間が進化して、言葉を必要としなくなり、テレパシーで意思疎通が取れるようになった。もしくはこのおじさんだけが生き残って言葉がいらなくなった孤独な世界。もはや言葉は形骸化して記号となってしまった世界。

 そうすると、このシーンの4つの点は、形骸化して記号となった言葉とも取れます。よく見ると3つ目の点の右肩の角が取れているので、“パ”の半濁音を表しているのではないでしょうか。

 または言葉が必要なくなった世界と仮定した場合、この画像の男性の口は、退化して閉じたままになっていたとも考えられる訳です。

 次にこの主人公は、寂しさからか、必要だったのか理由は分からないですが、自分に似せた人間を作り始め、大量に作った。しかし、どれも失敗作。何度も失敗をしたあと、あることに気づく。失敗だと思って壊した最初の作品には血が通っていた。実は成功していたことに気付く。なぜ成功したのか。その鍵となるのは、言葉だったのではないでしょうか。


聖書には“初めに言葉があった”とあり、神は自分の姿に似せて人間を造った、とも言われます。つまりこのMVは一度滅びた人間を、神が再び創るシーンなのではと考察します。そしてラストシーンで言葉を思い出し、吐き出した。

さらに大量の人間(レプリカント)を創る。『レプリカント』の歌詞の中にある、“言葉以外は偽物だ 神様だって作品なんだから 僕らみんなレプリカだ” という歌詞にも通じます。

MV全体を通して言えるのは、“言葉”自体を何よりも大切にする、n-bunaさんの思想が色濃く反映されたMVなのではないかと思います。

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