「ひとりの時間は大切。」(2021年5月25日)

 日記を書くのが怖くなっていた。でも、&Premiumの「ひとりの時間」特集で、通勤の車のなかだったり、誰かといるときに出し入れし続けている言葉から離れたり、そして、日記を書く時間だったりに一人の時間を確保している女性たちが、広いページに適度な余白を持って言葉を並べているのを読んで、こうしてここに戻ってくることにした。

 夕方に人を求めて彷徨ったり、バイトの時間に急かされたり、うまく行った先週を当てにして、同じ一日を過ごそうとすると必ず失敗することに気づいた。サイクルが一週間で閉じてしまって、その速さに苦しめられることになるからだ。ああ今日は先週の今日のようにはいかなかったとなれば、先週の歓びは1週間もしないうちに今日に掻き消されることになる。そんなサイクルでは身体がもたない。だから、意識的に先週とは違うことをしていくことで、少し長いサイクルで生活を送ることができるはず。充足で終えた一日をどうやって大切に扱うかということでもある。

 「ひとりの時間」特集では、ヴァージニア・ウルフが「現実(リアリティ)」について語っている。「「現実(リアリティ)」とは何でしょう?とても不規則なもの、とても頼りないものに思えます。粉塵の舞い上がる道路で見つかることも、街路に落ちている新聞の切れ端に見つかることも、陽を浴びたラッパスイセンに見つかることもあります」。

 リアリティを感じることが出来なくなることに悩んでいる。夕方に川沿いに吹く温い風に、目の前でケタケタと笑う子どもに、ハッとするような小説の一節に、自分の身体に膜のような薄いシャッターが掛かってしまって、感応できないことがある。手応えの無さ。それは自分が鬱屈と悩みを抱えているためであったり、体調が悪かったりと色々あるけれど、大抵元気がなくなるのは世界に触れている実感を失くしているときだ。

 逆に言えば、求めているのはそれだけなんだけど、人の世に対して誠実であろうとすることとの両立が難しくて、今自分がどこに立っていて、何をすべきなのかが、ずっとわからないでいる。

 そんな鬱屈とは無関係に、お世話になった先輩が幸福な結婚を迎えた。彼らを心から祝うために、僕はまず自分のことを仕立て直さないといけない。

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