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2023年1月の記事一覧

【詩】仮住まい

【詩】仮住まい

膨張する魂の気配を感じている

中身なくただ膨れがる

無意味に大きいもの程醜悪なものはなく

思春期の性欲のように腫れ上がった魂の

引き攣れた痛みで今夜も目が覚める

好きだったコミックスを読み返し

お気に入りの警部が死ななかったことに安堵して

それならば死んでよかったのは誰なのか

向う見ずに交差点を渡るハクビシンが始まりの合図

トリッキーな弔い合戦

祝祭は無意味なほど美しい

前菜

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【詩】夜

【詩】夜

夕暮れの最後の閃きが灯台に灯りを灯す

昼の終わりの鐘が鳴り

暗幕に鉤裂き開き

真っ赤な口腔を開けた夜が始まる

夜に飲まれるな

夜を飲み込むな

夜に支配されるな

夜を支配しろ

空を埋め尽くす殴り書きが隙間なく

空を暗黒に変えていく

バグとして閃く火星の美しさよ

土星の勇ましさよ

柔らかな月だけが安寧の毛布

さよなら夜よ

戦友よ

明日生き抜けたら

また会いましょうね

【詩】希死念慮

【詩】希死念慮

反復することなしにも浮かび上がる

満たされぬ欲望に気づいた朝

染み出した希死念慮をティッシュで拭き

丸めて投げ捨てた、あのゴミ箱に

毎日捨て続けた結果、溢れ出した希死念慮に

居場所はもうない

はみ出した希死念慮はどこへ行くのか

都合よく行方をくらましてくれる?

それとも烏に啄まれるじゃがいもの芽と

運命を共にするの?

コーヒー豆ほどの感受性もなく

明滅する魂の鼓動にさえ気づけ

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【詩】それだけのことができなくて

【詩】それだけのことができなくて

とどめを刺される猿の断末魔を聞きながら

寝室にコートをかけ食卓につく

それだけのことができなくて

たったそれだけのことができなくて

私は会社を辞めました

通り魔の残した芳ばしい香りを嗅ぎながら

洗濯機をまわし少量の食器を洗う

それだけのことができなくて

たったそれだけのことができなくて

私は家を飛び出しました

いじめられていたあの子の右目の青あざを

見て見ぬ振りをした自分が気

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【詩】oasis

【詩】oasis

永久闇に轟く♾の輪

高く伸びやかな遠吠えが

流れ星と共に空を渡っていく

黄赤青

慄き点滅

夕暮れに浮き出る影絵を

端から端まで

綿密になぞり

底から湧き出る

悲しみを見ないよう努める

テトラポットを照らすライトも

金色の工場夜景も

私の心を癒しはしないのだから

海浮かぶ2つの浮き玉

生命の緒は下へと繋がっているこだから

海の底のビオトープ

そこだけが私のオアシス

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【詩】揺れる

【詩】揺れる

パンツが

揺れる

揺れる

空中ブランコ

揺れる

揺れる

ハンモック

揺れる

揺れる

どこからくるのか

揺れる

揺れる

どこ吹く風やら

【詩】かなたの人

【詩】かなたの人

憧れの人は

かなたの人

かなたを作りし

儚い人

叶わぬ夢追い

かけ続ける人

悲しみをバネに

かなたへ行く人

仲違いしたあの子を

今でも愛し続ける人

見つからない宝物を

死ぬまで探し続けることのできる人

【詩】生きること

【詩】生きること

寝て

食べて

食べ過ぎて

運動し過ぎて

膝痛め

運動不足で

皮下脂肪

生きるって難しい

生きることとは微調整

めんどくさがりな私にとって

少々ハードル高過ぎる