【詩】それだけのことができなくて
とどめを刺される猿の断末魔を聞きながら
寝室にコートをかけ食卓につく
それだけのことができなくて
たったそれだけのことができなくて
私は会社を辞めました
通り魔の残した芳ばしい香りを嗅ぎながら
洗濯機をまわし少量の食器を洗う
それだけのことができなくて
たったそれだけのことができなくて
私は家を飛び出しました
いじめられていたあの子の右目の青あざを
見て見ぬ振りをした自分が気持ち悪くて不快で
私は線路を寝床としました
いつかどこかで誰かが
私を許してくれることだけを願いながら
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