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2022年12月の記事一覧

【詩】社会の窓

【詩】社会の窓

見境なく

境を歩く

社会の窓たち

閉じられた者はお咎め無く

ありがたく

開かれた者が産むは

せせら笑い

居た堪れなく

閉じているのがフォーマルならば

最初から窓なんか作らなければ良いのに

バカばっか

皆兄弟

あいつとこいつは

穴兄弟

チューバッカと

ハンソロみたいな

大親友にはなれそうもないね

【詩】ありがとう

【詩】ありがとう

魂は不屈ではない

永遠は闇

何の傷跡も残さない

取り残された全ての人に

捧げるメッセージは

”頑張って”

ではなく

”ありがとう”

“生きていてくれてありがとう“

放っておかれた肉体にも

迷える魂が無数にある

その一つ一つに口づけし

今日という日を閉じていく

“おやすみベイビー“

“おはようママン“

目端に昇る朝日を微かに感じ

1日の終わりは始まりへと繋がっていく

【詩】師走

【詩】師走

首スジに浮き出た星座をさすりながら

去年と今年の境目を見極めようと眼を凝らす

後ろから登る朝日を背負って帰路に着いた

どうやらあのときが境目だったようだ

追いかけるより追いかけられる方が心地よい

師走と呼ばれるこのときは

自分の影が浮かび立ち

生きているということを実感できる

もはや影によってしか

自分を確認する方法はないのだから

年は明ける

世も明ける

果たして来年に

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【詩】雪上がり

【詩】雪上がり

樹液がぽぽんと膨らんで

太陽の代わりとなる雪上がりの日

日差しを透す緑のトタン屋根に

広がる野原を見上げやり

今の今までいたところは

地下だったのかと合点がいく

雪解け水の不協和音

トタン トン タ テン トン

胸騒ぎがしても

足元を掬われても

決して立ち止まってはいけない

それが生きるということだから

記録と消去を司る雪の日の

カビとも香草ともつかないあの香り

あの日

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【詩】老婆

【詩】老婆

マチネマチネと歩みを進める怠惰な老婆

流れる景色は走馬灯

速すぎて見えない瞬きを掴もうとするばかりに

現在を見失う哀れな老婆

苔の生えた民家の壁に

テトラポットの隙間に

使い古された三角に

夢は閃き戯れ閉じる

誘惑に負けて四角い扉

開けても尚

寝起きのキルケゴールの

世迷いごとしか出てこない

後戻りはできないの

後悔だけはもううんざり

だから

ほんの少しだけ眠らせて

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【詩】幻

【詩】幻

はみ出しものが疼くとき

ピーカン照りは確実で

のっぺんはらり

鳩の首毛の翠と紫の間にある

扉が見開かれる

踏み入ったが最期

帰り道は昔日

雪の降る間に消えゆく

美しいのに尊敬されない

鳩の野望に

魚眼稜線

生きた魚の目の淵は

ふーたすんなめり

水溜りに閃く虹の池

見て過ごすのが好きだった夕間暮れ

今は幻

既に幻

ずっと幻

【詩】moderna

【詩】moderna

注入された不幸の種は瞬く間に私を蝕んだ

知りたかったこと、

知りたくなかったこと、

一緒くたにぶち込まれ

結局残ったのは知りたくないことだけだった

干魃した大地の如く

ひび割れた身体から吹き荒ぶのは校内放送

聞きたくもない声・音楽・演説・念佛・喘ぎ声が

毛穴という毛穴から噴き出てくる

”あなたがより良くなるためなの”

”今流行りのデトックスよ”

夕まずめの紫色した歯茎を持つ

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【詩】明日

【詩】明日

自分とも他人とも気持ちが

上手く噛み合わない日がある

何となく放った言葉が相手の負担となり

互いに自由を奪われていく

美味しいごはんすら何の助けにもならず、

大地の糧にすらなることができない

交錯する視線の矛先が編み違え

歪な誤りがシコリとしてそこに残る

”あんなこともあったね”と

そのシコリを撫でながら

思い出話として笑い合える未来は遠く

今は生活の喧騒で痛みを誤魔化してい

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【詩】悪魔と共に

【詩】悪魔と共に

右半身に宿る悪魔と共に

歩まなければならない道のりならば

先人の轍を辿ってゆく他なく

全てを投げ出すタイミングとしては

身はまだ重た過ぎる

自分で好んで決めた決断に

言い訳ばかり

これが生きるいうことなのかと

右半身が左半身に問いかける

”対になっているからと言って

善悪みたいに

反対という訳ではないんだよ

おいらはね〃

左半身は答える

〃天使にも神にも

ましてお前の

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【詩】今

【詩】今

不幸の集積物として

今の私があるならば

繰り返し咲くあのひまわりが

涙をこぼした訳もわかります

知らせの発散物が

頭痛引き起こす濃度であるならば

それが生み出す旋律が

甘い吐息に隠された毒であるのは

間違いないことです

ロールシャッハテストで

導き出された私しか

見てもらえない人生ならば

生きている意味は

クラッカー一欠片にも満たないことでしょう

真実は幻想にのみ存在し

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