私は阿呆である。
目が覚めた私は、まだ覚醒しきっていない頭で
「あ、今日はダメな日だ」
なんて早々に諦めた。
とりあえず、やる気が出ない。
布団から出る気にも、いつもなら依存しているくらいに四六時中触る携帯を手に取る気も、パソコンを開く気にも、トイレに行く気にもなれない。
外からは虚しい雨の音が聞こえてくる。
部屋は寒かった。
布団を被っているのにも関わらず、私の体は足先まで冷えきっている。
だからといって暖房をつける気にもなれなかったし、厚着をする選択肢なんて持ち合わせていなかった。
ただ、寒さに凍えながら時間を浪費する。
部屋に時計はない。
時間を確認する気力もない。
これまでの半生、ここ最近の出来事 色んなものが頭の中を回転する。
結論から言うと「私はダメな人間である」ということがわかる。
何も成せやしないのに上部だけ取り繕って、いい顔をしているただのマヌケな人間。
いつかはボロが出てその本性も見破られるというのに、学習をしない私はいつまで経っても「いい子」でいようとする。
私の周りから人がどんどん離れていくというのに、私は一体何にしがみついているんだ。
見えない何かに必死にしがみついて、見向きもしないくせに人に愛されたがる。
それはしょうもないプライド
泥臭くても必死に生きてる人間の方が格好良いのに、私は何を強がっているんだ。
自分自身への嫌悪感。
私は現実逃避に走るため、横に置いてある携帯に手を伸ばす。
時刻は15時を回っていた。 起きてから何時間経っているんだろう?
もしかしたら、たったの数十分かもしれないが、それを確認する術はない。
ただ分かっているのは、一日の半分以上を無駄にしたということだけ。
通知が溜まっている。
ひとつずつ開けば、そこではそこの世界が回っていた。
たったの半日、それでも忙しなく回り続ける世界に「私」はいなかった。
突きつけられる現実
私がいなくても世界は回るんだよなぁ…
知ってはいるものの、なかなか受け入れられないものであるそれから、私は目を背け続けている。
いい加減認めて、受け入れて、諦めて生きていかなきゃいけないのに。
まだ何かに甘えている私。いつまで経っても子どものまま。
雨は心を閉ざす。
いつも以上に閉鎖的な感情に、気分を変えようと窓を開けた。
冷たい風と、春の雨の匂いが部屋に広がる。
鼻が利くわけではないが、空気の匂いは嗅ぎ分けられる私。
雨の日の空気の匂いは、いつの季節も好きである。
外に咲く桜の花は、散っていた。
胸いっぱいに空気を吸うと、また思考を始める。
私はいつもそう。
何か嫌なことがあったり行き詰まったりすると、「自分のせい」なんて建前で世界を否定して、自分の殻に籠る。
そしてそんな私に優しく手を伸ばしてくれる人を待つのだ。
自分で籠った殻なら、自分で破れるのに。
いい加減他人を待つのはやめたらいいのに。
人間ってしょうもな。人生ってしょうもな。
まだ19年しか生きていない青臭いガキが、何か言ってやがる。
他人を待つ時間があるなら、自分で解決して先に進めばいい。
私は一人でも生きていける。
私がいなくても世界が回るように、私は私の力で自分の世界を回していける。
そうやってポジティブな思考に切り替えて 「私いつも同じようなことで悩んでは立ち直ってるじゃないか」 気がつく。
いつも似たようなことで悩んで落ち込んでは 自分の未熟さと愚かさに気がついて 他人に頼るのではなく自分で乗り越えようとする 無限ループだ。
学習してしない。
なんて阿呆なんだろうか。
でもそれも発見。
同じようなことで躓いても、確実に前に進んでいる。
私は悩む度に「人生クソ喰らえ」って思うけど、悩むこと自体は嫌いじゃない。
だってそれは、立ち向かおうとしている証だから。
乗り越えたいと思っている証拠だから。
私は今のこの状況を、どうにかしたいのだ。
でも簡単に解決策が思いつくほど私は賢くない。
必死に考えて壁にぶち当たって泣きそうになりながらも、頑張って生きていかなきゃいけない。
足先は、未だに冷えきっている。
大きな風が吹いた。
「凍死しそう…」 そんなことを呟きながら、私は暖かいコーヒーを求めてキッチンに向かう。
私は阿呆である。
2020.3.18 柏井彫刻
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