「Back Chat」と「シャワーな気分」と「Adolescent Sex」(ついでに「Bites The Dust」と「Good Times」)

なんとなく思い出したので、書くついでに簡単な考察をしてみる。

QUEENの「Back Chat」という曲がある。1982年の曲で、ベーシストのジョン・ディーコンが作曲した曲だ。

本筋には関係ないですが、この曲はライブバージョンが好きなのでついでに貼っておきます。

で、この曲を丸パクリしたと大評判の曲が存在する。作曲は筒美京平御代である。

割と単純で被りやすいフレーズなのは否定しないが、4小節ワンフレーズ丸々同じなので意図的なパクリという説が立つのも仕方がないように思う。

この2曲について非常に面白い動画を見つけたので紹介したい。1984年に「The Works」のプロモーションのためロジャー・テイラーとジョン・ディーコンが来日したおり、出演したTV番組にて「シャワーな気分」を聞かされ「こんな曲があるんですよ」とチクられたというひとコマである。

曲を聞いた途端、作曲した本人であるジョンは苦笑い、ロジャーも「コレ知ってるよ、こいつが書いた曲だ」とジョンを指さして笑っている。

まあ「シャワーな気分」の件は一部のファンにはよく知られているのだが、「Back Chat」がそもそもパクり曲なのではないか?という指摘が一部でなされている。その元ネタとされているのがコレ↓だ。

UKニューウェーブを代表するバンドのひとつ、JAPANの1stアルバムの曲である。こっちは1978年と「Back Chat」より4年も早い。

とはいえこれをジョンがパクった、というのはいささか疑問が残る。それはフレーズ自体よりも当時のJAPANの知名度に起因する。

いまでこそ知名度のあるバンドだが、解散直前の名盤「Tin Drum」の頃ならともかく、1stの頃は本国では鳴かず飛ばずで、メンバーのルックスに入れ込んだ日本のファンに辛うじて売れていたというのが定説である(ミュージックライフに掘り起こされて日本の女性ファンの支持を得たというのはQUEENと共通してるね)。

その証拠として1stアルバムはイギリスではチャートインすらしていない。日本ではアルバムは20位になっているし、シングルもオランダやベルギーではちょっと売れたらしいのでツアー中に耳にした可能性もあるが、そもそも当時ニューウェーブに深く入れ込んでいたロジャー・テイラーならともかく、「Don't You Want Me」とか「Look Of Love」とか当時のヒットチャート上位の曲をお気に入りに挙げていたジョンが、マイナーで奇抜な見た目のホワイトファンクバンドだった頃の初期JAPANを聴いていたとは正直思えないので、ただ被っただけというのが真相な気がする。

(7/20追記)とか書いてたら、ミュージック・ライフのインタビューで思いっきりJAPANに言及していた(その弁によると「音楽はまあまあ」だったらしい)。この号持ってるのに完全に失念してたよ…。
完全に余談だが、ORANGE RANGEの「上海ハニー」も「Back Chat」のパクりだと言われている(一部よく似たフレーズがある)。が、これは被っただけだったのが「ロコローション」がパクりだ、という騒動の時に無理やり掘り起こされただけじゃないか?というのが個人的な見解。

ただ、なんでこういう説が立つのかという理由はなんとなく想像できて、ジョンが作曲した「Another One Bites The Dust」のベースリフがChicの「Good Times」のパクりだ、という話が広く流布されているからだろう。この説に則ればジョンは「前科持ち」だということになる。

しかし多少楽器や譜面に触れている人ならすぐ見抜けるが、この2曲のベースは全く違う動きをしているし、しいて言うなら頭の「デッ、デッ、デッ」という3音が共通点だが、ここはただの4つ打ちなのでむしろファンク・ディスコ系で被ってない曲を見つける方が難しいだろう。まあ3音被っただけでパクりというのもいくらなんでも尚早だと思うけど・・・。

(7/20追記)その後ネットサーフィンしてたら、パクリ疑惑をChicのナイル・ロジャースがあっさり否定したという情報を見かけたが、ソースは軽く調べた限りでは見つからなかった。しかし海外Wikipediaにはこのベースを弾いていたバーナード・エドワーズがこの曲について発言したのが紹介されており、それによると「ジョンが我々のスタジオに遊びに来たから、あの曲が生まれたんだ」らしいので、一応Chic側も認識はしていながら特に悪意のある盗作だとは思っていなかった模様。
(7/20追記)ついでに、Quoraにこんなスレッドが立てられてるのが出てきた。5人ほど回答しているが、おおむね「インスパイアはされたかもしれないけど、最初の3拍子から先は別物だし、パクリって程でもないんじゃない?」という感じの回答で、中には「『G線上のアリア』とProcol Harum『青い影』よりは似ていない」という大胆な比較もあって笑ってしまった。

Chicの曲なら「La Freak」がちょっと「Back Chat」ぽかったりするので、むしろこっちが元ネタなんじゃないかという気もするんだよな~。



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