カエルとクラゲ

きみが妬ましかったよずっと
海と砂浜の満ち引きの狭間で僕なんか忘れて
踊り舞う呑気な君が
カメラ越しに映ってた
眩しすぎて
夕日を背にきみの外縁しか見えなくなった
僕には君が映るけど君にとって僕は砂粒と一緒
ただの背景なんだ

昔から僕はいつも天秤にかけていた
親や金、学歴、オリジナリティ、生きる価値
はっきり言うよ
誰かより優れてるのは快感だった

それがあったから自分を褒められた

蛙は空の広さを知った
自尊心は削られ続けた
心の弱さを知った
思考は海底の亡骸と一緒だった
このまま体ごと分解されてよかったのに
もう息ができない僕の横を海月が通った

ひらひら弱っちいベール
五感をもたない世界の理
主人公しかいない物語

多様性を知っていてもそれに飲み込まれていなかった
同じ生物になりたい
明確な転身願望
なれるはずはなかった

当たり前だ
僕は蛙なのだから


全部全部全部忘れたかった
幻想の天秤も投げ捨てたかった
この世界から誰か僕を抹殺して
形もないほど砕き散らして
最初からどこにもいなかった
それが理想だ


何回目を閉じても
血が滲むほど唇を噛んでも
頭部を強く殴っても
まどろみを溶かすだけで何も起きなかった
君を見続けることにした
なれないならせめて隣にいることを頑張るから

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?