「愛」への執着と諦観
人間は愛に飢えている。それは孤独の治癒には必ず愛が必須条件であるからだ。しかし「愛」は他者(自分ではない何か)の眼差しなしには成立しない。すなわち持たざる人間の多くはそれを求めても逆に孤独の輪郭を削り一層一人を自覚する。とても恐ろしい特効薬なのである。
「愛」の厄介な点は他者に由来することである。大事なので重ねて強調する。社会的動物である人間は、個人だけでは自立していくことが非常に困難な生物なのだ。唯一無二性を持つ「個」の人間は、その性質ゆえに社会を営みながらに孤独しがちであ