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KASANEというブランド

2017年11月にスタートさせたKASANEというブランド名で革製品の製作と販売を行っております。KASANEのコンセプトは「ともに同じ時間を重ね、いつか自分の姿と重ねるモノを提供したい」という思い。このコンセプトへの思いは、僕が会社員になって初めて買った革財布がきっかけになっています。


社会人成りたての春に研修で東京に何ヶ月か暮らしていたとき、銀座の革製品専門店の財布(普通の長財布や二つ折り財布は3・4万くらいして高くてどうしても手が出ず、悩んで選んだのが1万くらいの小型財布)を買いました。このブランドは北海道には店舗がなくて、たしかWEBで紹介されているのを見て現物を見てみたくなったんだと記憶しています。オイルドヌバックってタイプの革で、スエードみたいに起毛している革だけど、オイルがたくさん含まれているので触り心地がしっとりしていて気持ちいい革です。この革の特徴はエイジング(革の経年変化で、色が濃くなったりツヤが増したりすることをよくこう言います)による変化がものすごいこと。これが僕自身に「僕は革が好きだ!」と認識させてくれたきっかけでした。

中高生のときから、なんとなく革は良いもの、と親の教えか何かわかりませんが思っていました。ただし高い、ということも。いまでも覚えているのは、中学生くらいのときに隣町の商業施設で黒い二つ折りの革財布を買いました。たしか5千円もしなかったはず。これ、確かに革でしたが、今思えばおそらく顔料染めの安ーいクロムレザーで作られたものだったのでしょう。2年くらい気に入って使っていましたが、最後の方は革の表面がポロポロめくれてボロボロでした。

それ以降も高いものは買えないから、本革!と書いてはいるけど安い靴や財布を高校・大学と買ったりしました。でも、やっぱり思っている革じゃなかった。そんな革製品と社会人になって背伸びした小さい革財布の違いは一目瞭然でした。使っていて2ヶ月くらいで、買った当時と明らかに違う色の濃さに感動したのを覚えています。そしてその変化がすっごくカッコよかった。僕にとっての革の良さはこの変化なのです。

ただ、その革財布はとても傷がつきやすいものでした。爪で引っ掻いてしまったり、手が滑って落としてしまったときなんかは、表面に擦り傷がついてとても気分が落ちたことを覚えています。それと一緒に、社会人生活もかなりしんどく、辛かった時期が重なっていました。慣れない営業、怖いクライアント、上がらない売上、ノルマ…思い出したら吐きそうになりますね笑

あの財布を買って2年半くらいたって、結果的には営業を離れて違う業務をすることになっていましたが、あの当時は今までやってきたことが帳消しになってしまったような、すごい焦りと虚無感とが襲っていました。でも、ふと財布を眺めると、いままでたくさん傷をつけてしまっていたりしていた財布はツヤツヤに輝いていました。昔つけた傷は色の濃淡になり、味わいへと変化していました。そのとき、なんとなく気休めではあったのかもしれませんが「あのときの失敗やつまずいたことも味に変わっていくのかな」と思えた気がしました。傷つきつつも変化して使っていく人によって違う味わいを増していく革を、自分と重ねたのでした。

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KASANEは日本語の「重ねる」という言葉から取っています。単純に紙や本など、ものを重ねるという使い方もありますが、重ねるという言葉には「経験を重ねる」「愛を重ねる」「時間を重ねる」といった使われ方もあります。そして、何かと何かを写し「重ねる」といった使い方も。あのときの自分のように、自分の分身のような気持ちになれる。他の誰かにとってもそんな気持ちになれる。そんな革製品を作りたいと思ったのがKASANEの根源となっています。

初めてこんなふうに文章を書いてみたので、拙い限りですが、なるべく気負わないように思ったまま書いてみました。今後は革の魅力についてもっと思い切り書いていこうかと思っております。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。



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