2024.05.11

デパートに行って母の日のプレゼントを購入した。同時刻に母が近くの美容院に行くというので、終わるまでの間休憩スペースで読書をして待つことにした。休憩スペースは一部ガラス張りになっており、母が通う美容室が見えるので、丁度良いなと思ったのだ。休憩スペースにはソファとテーブルがあって、ちょっとした喫茶店のような雰囲気になっている。足りないものはマスターだけだ。

壁沿いには長テーブルが置かれていて、一人用の椅子が並んでいる。隅っこの席が良くて私はそこに座ろうと向かった。丁度反対側の隅におじいさんが座っていて、何やら書き物をしているのが目に入った。ピンク色のビニール袋の中に手を突っ込んで、こそこそと何かを書いているのが気になって、後ろを通る際に横目で見ると、手本のようなものを横に置いて、マスを埋めているのが見えた。写経だった。
こんなところで精神統一ができるのかという疑問の前に、わざわざ硯と筆を持ってデパートにやってきて写経をしている意味がわからなくて怖かった。絶対に家でやった方がいい。少ししてカリカリカリカリと何かを削るような音がして、見れば、そのおじいさんが硯を何か棒のようなもので削り始めていた。書道の過程にそんなものはないだろう。こんな環境の中、途中でやってきたおじさんはソファに座ってしっかり眠っていた。なんだか羨ましかった。

平日に作業のためによく行くドトールの二階には必ず同じ席に座ってiPadを見ながら絵を描いているおじさんがいる。絵を描いていると知ったのは最近のことだ。お手洗いへ行くためにそのおじさんの脇の通路を通った際、スケッチブックに向かいiPadにうつる水着姿のグラビアアイドルを一心不乱に模写する様を目撃してしまったのだ。ドトールで? 朝十時に?
画面の中の女性は水着をまとっているのに、スケッチブックに描き起こされている女性は裸なのも怖かった。ドトールの真ん中で早朝に裸婦画を描くおじさんは、時折大きな声を上げて紙をまるめて捨てている。納得するまで描き続けるのだろう。家でやってくれ。頼む。

おじいさんが休憩スペースから居なくなるのとほぼ同時に本屋に向かった。
様々な公募に投稿し続けていると、本を見るのが苦痛になる時間もあるのだけれど新刊を見る癖はなくしたくない。いつもなんとなく眺めるだけなのだが、公募ガイドを初めて購入した。小説を書く人間もポートフォリオを持つと良いだろうという内容の特集があった。noteにしか投稿をしていないが、過去に出版した本のリンクなどを載せるのもいいかもしれないなんて思った。普段は表に名前を出すことのできないものを担っているので公表ができないのだが、自分の作品を見やすく提示することができる方がいいのかもしれない。サイト作りは古傷をえぐる記憶と共にあるが(察してください)上手に付き合って、自分の武器のひとつにしたいなあと思った。今月中にはどうにかあげようと思うので、見守っててください。

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