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ファンタジー小説の経歴

あらすじ:ファンタジー小説をこれまであまり読んでこなかった傘籤だったが、最近『レーエンデ国物語』を読み始め、徐々にファンタジー小説の魅力に気づきつつあった。傘籤は自身のファンタジー小説の経歴を振り返り始める――

「傘籤物語」より

ファンタジー小説、と一言に言っても色んなタイプのものがある。
剣と魔法とドラゴンが出てくる中世ヨーロッパっぽい雰囲気のものもあれば、現代日本を舞台としながら陰陽道や妖怪が出てきて不思議なことが起こる話もある。あるいは平凡な学生が異世界に行って活躍する話や、逆に異世界のモンスターとか騎士が現代に来てあら大変、な話も探せばわりとあるはずだ。

でもこれまで私はあまりファンタジー小説を読んでこなかった。『十二国記』を読んだのも『はてしない物語』を読んだのもここ1年以内くらいのことだし、その他有名なタイトルの多くを実は読んだことが無い。
ゲームや漫画だと結構たくさん摂取してきた気がするのだけどなんでだろう。何故か活字のほうはあまり興味を持ってこなかった。

んでホラー小説ブームがとりあえず一段落つき、次は何読むかなーと考えていたところ、『レーエンデ国物語』が面白いとの噂を聞きつけ、どれどれと読んでみた次第。

『レーエンデ国物語』面白いじゃん……

おお、なんだこれは、竜や魔法は出てこないのにまごうこと無きファンタジーだ。レーエンデに暮らす人々が一所懸命に自分たちの使命を全うしようとしている姿がかっこよくて熱くて泣けるじゃないか。なんだか読んでるともっと誠実にもっと必死にもっと愛を持って生きなくては……!!って気分になるぞ。これがファンタジーの効能というやつだろうか。それともレーエンデ国物語に特有のものなのだろうか。

いや、たぶんファンタジーってそういう力を持ってるものなのだと思う。読むと背筋が伸びる気がしたり、登場人物を自分に重ね合わせて癒やされたり、そういう鏡みたいな機能が。あるいは現実の在り方を見つめ直す力とでもいうか……。

例えば『モモ』。灰色の男たちに時間を盗まれる話。読み解き方は読む人次第でいろいろだろうけど、「時間」や「人間らしさ」について考えさせてくれる本だと私は思う。全体を覆う夢みたいな感触は子ども心に「なんかすごいもの読んでる!」と感じたのを覚えてるし。

あと佐藤さとるのコロボックル物語シリーズ。あれも好きで読んでた。『だれも知らない小さな国』ってタイトルがまず良い。コロボックルたちは動くのもしゃべるのもすごく早いから人間に合わせてゆっくり動いてくれてるんだよな確か。

『不思議の国のアリス』とか『星の王子さま』はファンタジーだよね? 幼い頃に読んでたものほど線引きがよく分かんなくなるな。

というか宮沢賢治もファンタジーっちゃファンタジーなのか。『セロ弾きのゴーシュ』『ポラーノの広場』も、その他のあれもこれもたぶんファンタジーなのだろうきっと。宮沢賢治は好きだったなあ。いまでも好きだけど。

あとやっぱり『ハリー・ポッター』シリーズ。小学校の図書室に置いてあって夢中になって読んだ思い出。ダーズリー家の面々がムカつくんだよなあ。なんじゃこいつらって思いながら読んでたわ。授業とか受けるなら魔法薬学。マンドコブラの実験とかわくわくする。あとフクロウ飼ってみたい。魔法界のお菓子食べてみたい。ってなったな。
でもハリーのことはあまり好きでは無かった。なんでか。

って感じで書いてくと「ファンタジー小説読んでるじゃん」と思われそうだけど、子どもの頃読んだ中でパッと思い浮かぶのはここくらいまでで、やっぱりさほど読んでない方だと思う。

図書室や図書館に置いてあったハリポタシリーズの近くには、決まって『ナルニア国ものがたり』とか『ダレン・シャン』が置かれてたのだけど、そっちには手を出さなかったし。

『モモ』は読んでたけど『はてしない物語』は長げ~と思って読むの途中でやめたし。

そんな感じなので日本で人気な(有名な?)ファンタジー小説に対する知識が薄い。『精霊の守り人』『ブレイブ・ストーリー』『ゲド戦記』『ハウルの動く城』『グイン・サーガ』エトセトラエトセトラ……。いずれも未読。私のファンタジー筋力はよわよわだ。

でもSFは好きだったから作者つながりで手に取った作品はわりとあるかも。筒井康隆の『旅のラゴス』とかチャイナ・ミエヴィルの『都市と都市』とか貴志祐介の『新世界より』とかいずれも好き。すごく面白い。

ジャンルがまたがってる作品で思い出すのは『折れた竜骨』だろうか。魔法が存在する世界で起きた殺人事件ってどんなもんやろって読み始めたら面白かったやつ。なるほどそうなるかあ!って驚きのラスト。細かいことは忘れたけど犯人だけはちゃんと覚えてる。

『忘れられた巨人』はストレートなファンタジーって言うよりはファンタジーの舞台装置を使った文学って印象のが強い。というかメタファーとして色んなものに置き換えられるよう書いてるんだろうな、と思いながら読んだ。

『夜市』はホラーとファンタジーどっちの良さもある小説だった。夜市好き。夜市に行きたい。いや行きたくない。

『かがみの孤城』『西の魔女が死んだ』『RDG レッドデータガール』『有頂天家族』『カラフル』あたりはファンタジーに分類していいものなのかしら。すこし不思議なお話、という手触りの本なのでいずれも好きだけど、騎士や魔法やモンスターが出てくるわけじゃないのでここら辺の区分けは正直よくわからない。ライトファンタジー? うーん「ライト」って言葉の印象がなんとなく引っかかる。なんか違う気がする。

あ、ていうかそれを言うなら村上春樹の小説ってあれはファンタジーなのかな。幻想文学? 『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』はかなりファンタジーっぽいけど、どうなんだろ。海外ではファンタジーとして受け入れられてる気がするのだけど果たして。

そういえばボルヘスの小説はジャンル分けすると何になるのかな。ファンタジーっぽくもあるけど、違うよって言われたら違う気がするしよくわからん。よくわからないから好きなのでよくわからないままで良いのだけど。

というか明確な定義づけはファンタジー初心者の私の手に余る。現実とは異なるルールに基づいて動いている世界での話(でもそこに科学的な説明は持ち込まれない)。という法則はだいたい当てはまると思うけど。でもそれ以外にも「心の成長」あるいは「変化」に重きが置かれている気もするし。

個人的には『アラビアの夜の種族』がめちゃくちゃ好きだったな。ページをめくる手がとまらず、もどかしさすら感じるほど熱中して読んだのを覚えてる。魔書みたいな本で最高なんだー。

あと最近読んだ中ではエストニア発のファンタジー『蛇の言葉を話した男』が面白かった。一人称でつづられる神話的な森林世界がすっごい魅力的でねえ。文章の密度が高い小説ってなぜか興奮してしまう。

……なんだかだいぶ散文的になってしまった。つまり何が言いたいかというと、ファンタジー小説がこれまでよりも好きになりつつありますよ、ということなのです。

だからレーエンデ国物語を読み終わったら『指輪物語』を読んでみようかなーとか考えてる。ゲーム・オブ・スローンズ原作の『氷と炎の歌』も面白いらしいからドラマ見ながら並行して読もうかなーとも。

はじめはファンタジー小説の魅力、というか効用について言語化するつもりで書き始めたのだけど、無理に言葉にするのは無理矢理魔法を解こうとするような、ひどく無粋なことをしている気がしてきたのでこれくらいでもうやめとく。




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