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2023年 今年の映画の思ひ出

気付けば今年もそろそろおわり。年の瀬ですね。
今年はコロナが5類に移行したことで、映画館にかつての客足が戻り、私自身昨年に比べて劇場に足を運ぶ頻度が多かったです。おかげで劇場で観るからこその感動をたくさん味わえましたし、良い作品とめぐりあうことも出来ました。『オッペンハイマー』の公開が先延ばしになったり、『ゴジラ-1.0』がアメリカでヒットしたり、その他今年は巨匠と言われるような有名な監督の作品がたくさん公開され、映画ファンとして楽しい年だったなあと感じています。っていうか20世紀の名匠たちがいまなお現役で、その最新作を観れるってよく考えるとすごいことだよなあ。それだけで映画好きでよかったと思えるよ。
というわけで今年の映画の振り返りです。選別基準として、基本的には「2023年に日本で劇場公開した作品」の中から選んでいます。


1位.『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』

目を見張る美しい映像と、斬新な脚本、次々に登場する多元宇宙のスパイダーマン達、これらがもたらす興奮と陶酔は凄まじく「い、いまわたしはあにめをみている」と圧倒されながら、アニメを観る純粋な感動と、新次元の楽しさをたっぷり味わえた作品です。
登場するスパイダーマンの数は200人を超え、1000人近くのアニメーターに発注した映像表現には、アイデアと感性がこれでもかと注がれており、目が潤う潤う。
"全ての人は救えない"という命題に立ち向かうマイルスや、個性豊かなスパイダーマン達の姿からは、従来の「型」を打ち破ろうとする作り手の気概が感じられ、その高い理想を見事に成し遂げているんだからまあすごいです。
『ブレードランナー』『トロン』「AKIRA』『ヒート』といった映像作品へのリスペクトも熱いし、それぞれの世界、それぞれのキャラが、それぞれの”アートスタイル”を持っていて、スペクタクル満載にもかかわらず、日常と社会に寄り添った物語ともなっている。
私がこの映画を愛する大きな理由は、いわゆる「完璧な映画」が持つ”息苦しさ”が皆無な点で、良いアイデアならどんどん注ぎ込み、新しい何かを創ろうぜ!って想いを至るところから感じられるからなんですよね。はじけるような楽しい「体験」を味わえる作品でした。

2位.『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』

ディカプリオ史上もっともかっこ悪い役なんじゃない?このアーネストって男。3時間半という長丁場にもかかわらず、脚本・構成により飽きることがないってのも凄いんだけど、それ以上にこの映画は、これだけ長い時間をかけて「アーネスト」って男とその周りのことを描いているのに、彼が「空っぽ」なのか、それとも「欲に塗れている」のか、あるいは「別のなにか」に突き動かされているのかがわからず、最後のシーンに至るまでただただかっこ悪いってのが私的には一番惹かれる点。
そして彼と彼の叔父が関わる凶悪な事件は”かっこ悪い”なんて言葉では到底片づけられるものでは無く、余計に彼の醜悪な面が強く脳にこびりつく。ディカプリオの演技は、そんなアーネストという愚かで、薄っぺらな男を見事に表現していて素晴らしかった。
原作は2017年に出版されて話題になったノンフィクションで、100年前の事件をわかりやすく、迫真の筆致で書いており、人間が己の欲のためにどこまで醜悪な存在となれるのか、「アメリカ」という国の歴史を”暴く”かたちで綴られており、読みごたえがあります。
なので映画を鑑賞した後に本書を読んでみると、マーティン・スコセッシによって作られた映画が非常にリアリティや整合性を重視して製作されたのだということがわかり、その上で、中心人物を「アーネスト」という人物にして映画を撮ろうと決意したセンスや、その意思にマーティン・スコセッシ監督の作家性や問題意識が感じられました。
一番印象に残ったのは最後に妻のモーリーから問いかけられた言葉に返答したときのディカプリオの顔ですね。あれ最高。

3位.『ザ・クリエイター/創造者』

アジアのどこかにある田園風景の中でAI対人間の戦争を描いたSF映画です。まあ細かいことは置いといて、なによりまずは突進自爆ドロイド「G13」の勇姿をみんな見てくれ。あのドラム缶に手足を生やした無骨なデザインのロボットが、銃弾の雨をものともせず、ガシンガシンと凄まじい勢いで駆け抜けていく光景。私を歓喜させたSFの風景ってやつをみんなに見てもらいたい。

4位.『ジョン・ウィック:コンセクエンス』

ドニー・イェンですな。ドニー・イェン演ずる盲目の殺し屋ケインのためにある映画と言っても過言ではないと思います。現代版座頭市といったこのキャラ、映画小僧である監督の「俺が考えた最強のキャラ」ってやつを臆面も無く堂々と見せられほんと最高。
あと世界最長222段の階段落ちを見せたキアヌ・リーブスにも拍手。高速で車が行きかう凱旋門の前で車に追突されながら駆け抜けたアクションも凄かったし、大阪のコンチネンタルホテルで無尽蔵に湧いてくる敵をヘトヘトになりながらヌンチャクで撃退していく戦いも見事。ってなんかキリないですが、要はすべてのアクションに作り手の拘り・信念・アート性が感じられていて心が満たされました。
あと配給さん、ケインの使ってた杖やサングラスを商品化してください。買うんで。

5位.『イニシェリン島の精霊』

話としては至ってシンプルで、おじさん2人が仲違いするだけ。ただそれだけの映画なのだが釘付けにされた。観る人によっては退屈に映るのかもしれないけど、私はどんどん過熱し、悪化していく二人の関係から目を離すことが出来なかった。
もはや修復することが不可能なほど二人の間に亀裂が入ったとしても、空は限りなく青く、緑が広がる雄大な景色は美しい。
あと犬が生きててよかった。本当によかった。

6位.『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』

マルチバース×カンフー×家族愛×コメディ×etc.……書ききれないほどの要素を乗せながら「映画を観る」ということの原初的な歓びを、新たな地平で感じさせてくれる、そんな作品。
根本は娯楽大作でありながら、移民、LGBTQ+、母と娘、女と男、そして人生についても描いている。観客が想定する「ここら辺が落とし所だろう」という地点から、二転三転し展開していくストーリーはとびきりのグルーヴを我々に与え、かつ少しも散逸しない脚本が素晴らしい。
バカバカしいほど壮大な物語ではあるが、同時にありふれた小規模お話でもあって、きっと多くの人が「自分の物語だ」と感じるはず。
下品なギャグも満載で、そこも含めて愛してる。

7位.『ザ・キラー』

殺し屋映画って犬は殺しちゃいけないというルールでもあるんでしょうか(もちろん動物が死ぬシーンなんて見たくありませんが)。この映画も『ジョン・ウィック』や『SISU』と同じで犬はしっかり生き延びます。つうか恐いです。イッヌつおい。(∪^ω^)わんわんお!

8位.『リバー、流れないでよ』

今年の可愛い映画部門大賞。
ぐるぐるぐるぐる、京都の老舗旅館で2分間がループしていくすこしふしぎなシチュエーションコメディ。繰り返される時間はやがてみんなが求めていた「余暇」となり、少しだけ身を軽くしていきます。わちゃわちゃ感が楽しい愛すべき映画であると同時に、観客を飽きさせない展開の妙が光る佳作でした。

9位.『アステロイド・シティ』

カメラを向けるとちゃんとポーズを取ってくれる宇宙人が出てくる映画。
私はこの映画を2回観に行ったのですが、1回目の鑑賞の際、途中で少しウトウトしてしまったことを告白しておきます。まあでも、2回目の鑑賞の際は覚醒して観ることができたので、映画の台詞「目覚めたいなら眠れ」の意味を身をもって知ることができました。ラッキー。

10位.『宇宙探索編集部』

中国の大学生が自主制作したドキュメンタリー風ロードムービー。タイトルから想像するイメージより映像のスペクタクルは少ないですし、登場人物も絞っている割に活かしきれていません。じゃあなんでこの順位かって言えば、主人公のタンが好きだから。おじさんになってもひたむきに宇宙人の存在を信じつづけてるところとか、内に抱えている悲しみとか、自分が大人になりきれていないことを半分自覚してるところとか、それでも旅を続けようとする不器用なところとか、作品全体に流れる穏やかで間の抜けた空気感は間違いなく彼を中心として作られているもので、その優しく”平凡な人へ”の視点が胸に刺さりました。可笑しくて、楽しくて、物悲しい、心の折り合いについての映画。これはそんな愛おしい作品です。

次点.『君たちはどう生きるか』

絵の魅力、ミステリアスな雰囲気の魅力、ゴシックの魅力、そうしたこれまで宮崎駿が作ってきたファンタジーとしての魅力は確かにあるのだけど、同時にそれらすべてを「儚い」ものとして位置付けている作品で、過去作にあった"了解されやすい形態"を拒むことで、そこはかとなく「死の匂い」を漂わせている。
眞人が訪れるあの世界もまた、構造が取り払われた世界で、それはまるでアニメーションの虚構性を強調するかのようだ。しかし、いまこの時代に「宮崎駿」が提示する作品としては、逆に説得力があるものに私は感じたし、それは映像作家としてとても誠実な態度な気がした。
余談だが、この作品を観る数日前、先に映画を観てきた姉から電話がかかってきて、私はまだ観ていないにもかかわらず、親切な姉はどんなお話なのか大体教えてくれた。ありがとう姉。すごく感謝してる。すごく。

以上、今年観た映画作品11選でした。
X(旧Twitter)やnoteを始めたことで、感化をもらえることも多く、楽しい映画ライフを送ることができました。ひとえに相互になってくださった方や、感想を読んでくださる方たちのおかげです。
あと、映画のニュースで言えば、小島監督の『デス・ストランディング』がA24で実写化される企画が進行中らしくすっごい楽しみ。ノーマン・リーダスやマッツ・ミケルセンをそのまま起用するのは難しいだろうけど、デル・トロ監督だけはそのまま登場させてほしいなと、そんなことを思う今日この頃です。

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