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#メンタルエッセイ33

アイドル

病院の夕御飯は早い。消灯まですることがない。広いロビーのテレビを見ているとき、普段出入りがない時間にドアが開いた。
賑やかな声が、退屈な私達は一斉に振り向く。
両手両足を四人の男性看護師に掴まれて、奥の保護室に。
若い青年が入院。
「元気な兄ちゃんだな」とか「頑張れ」と応援をする人もいました。

喫煙室の横が保護室、壁を蹴っているのかドンドン音がする。

先輩患者さんの話では、二、三日で静かになると教えてくれました。
でもとっても元気で、静かになりそうにもありませんでした。

五日目、喫煙室に若者の姿がありました。みんなと楽しそうに話をしていました。
若者が言うには「看護師さんの話を聞いて、薬もちゃんと飲んだら出してくれた」そうです。
暴れていたのは、「アイドルになりたい」その為に歌とバクテンを練習していたそうです。

その日から、喫煙室は彼のステージになりました。
喫煙室で長く歌っていると、看護師さんが病室に連れていきます。
彼は手を降りながら、はけていきます。

入院中は、可愛い顔でニコニコしていて、病棟のアイドルになりました。
若い人の闘病の姿を見ていると、なにか切なくなります。



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