#メンタルエッセイ58
拍手
思い起こせば、あのような拍手を頂いたのは最初で最後でした。
六人部屋で廊下側のベッドから毎日一人づつ手術室へ、ところてんのように押し出されます。
手術前日は「明日頑張ってね」と賑やかな笑い声がします。
手術当日は旦那様が手術時間まで静かに過ごしています。手術室まで旦那様は付き添って行きます。
残り五人はあんなに良い旦那様いないよね。
昨晩六人は、麻酔がさめるとき思いもよらない事を口走るらしいと真剣に話をしました。
先ほど手術へ向かった、上品な奥様が話に入ってきました。
「わたくし一度でいいから、主人にうるさい」と言ってみたいと恥ずかしそうに笑っていました。
手術室へひとりで向かう私に、病室のみんなが拍手で送ってくれました。
勇気をもらったとか、後光が見えたとか、からかわれました。
回復室から病室まで「歩いて行きましょうね」「痛い、痛いです」のやり取りをしながら病室に着きました。
何かおかしい?
皆は車イスで帰ってきている。
前のベッドの同年代の女性が教えてくれました。
「声が大きいから、元気だと思われるのよ」
そう言えば、前のベッドの女性は看護師さんがくると、声が小さくなっていました。
その手があったのか。
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