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その人らしさのリハビリテーション

リハビリテーションにおいて、その人らしさを知ることは最も重要なことではないでしょうか。でもそれを知ることは難しいことだとも思います。ある程度の時間もいるでしょう。急性期の短い関わりの中でも、その人らしいと思えることを一つでも見つけて次のステージへ繋げていきたいものです。

その人らしさとは

 リハビリテーションの中では、よく 「その人らしく生活することを支
援する」とか、「その人らしさを尊重して」などということが言われます。でも、何がその人らしいのか、理解することはとても難しいことだと日々思います。

 「その人らしさ」とは一般的には、「その人固有の生活背景・歴史そのもの」だといわれています。その人をつくってきたものの集合体とでもいうのでしょうか。

 その人を知らないとなかなか信頼関係を築くことは難しいし、「ただの機能訓練」だけになってしまう恐れがありますよね。難しいけれど、その人らしさを探求するところから関わりは始まるのではないかと思っています。

その人らしさを見つける

 患者さんとの関わりを重ねるうちに、少しづつこの方ってこういう人だなと気が付くことが増えてきます。

 緩めの内容のリハビリを好む方、みっちりした機能訓練を好む方、おしゃべり好きな方、あまりご自分からは話されない方。怒りっぽい方。良く笑う方。自主練習を一生懸命される方。宿題を望まれる方。

 ほとんど寝たきりで意思疎通を図ることが難しい患者さんの場合、その人らしさを見つける為に、私は病室の床頭台に置いてあるコップや時計やタオルや、そんな物からこの方ってこんな人かなと考えてみるようにしています。青っぽい色がたくさんあるなあとか。おしゃれっぽいコップの形だなあとか。

 お孫さんやご夫婦の写真が置いてあることもあります。

 あとは、やっぱりパジャマですね。着る物はその人を表すことが多いですから。

 ただ、その人が元々持っていた物ではなく家族が準備した物である場合も多いでしょうから、一概にこういった物からその人らしさを見つけることは難しいなあとも感じます。

嬉しかったあるひと言

 私は、昨年3月に右大腿骨骨幹部骨折の診断で約7カ月半の入院生活を送りました。その間回復期リハビリテーション病棟にも入院し、理学療法と作業療法を受けていました。

 私は元々、できるできないは別として何でもとにかくやってみたいタイプ。入院中のリハビリテーションでも、そんな感じだったなあと振り返りを今さらのようにしているわけですが。

 ある日私は担当セラピストに言いました。「○○さん、私イケイケゴーゴーにすぐなるから危なかったら止めてくださいね」と。

 担当セラピストはこう言いました。「笠井さんはこれまでからずっとそうやってこられたんだろうなって思ってました。大丈夫です、あんまり危なかったら言いますので」と。

 この言葉は嬉しかったですね。私らしさを分かってくれているのだなと。その元でのリハビリテーションなのだなと。

その人らしさを失わせないように

 その人らしさを見つける為には、ある程度時間がいるのかなとも思います。ほんの数日の関わりで、これはこの人らしいだなんてわかる方が無理だと。

 急性期病院では、患者さんと過ごす期間が短い為深くその方のことを知ることができない部分はあるのかなと思います。

 でも、急性期はこれからの患者さんの長い生活を支えていく為のスタートの時期です。より、その人らしさについて考え、そこを失わせないよう注意深い関わりをしていきたいものです。

 たとえ寝たきりで意思疎通が難しくとも、表情やしぐさなど、その人を感じ取れる何かがあるはずです。そこを見落とさないようにしたいですね。

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