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夕焼けを眺めながら帰る

 夕焼けで涙を流すのは、もう少し大人になってからだと思っていた。

 先月、人生初めての人事異動なる一大イベントを体験した。そして先週、終わりの見えない仕事の辛さと、毎日5時間残業といういわゆる仕事の山場というものを体験した。

 新しい職場になったら、近くの美味しいお店や面白いスポットを開拓しよう!とワクワクしていた異動前の私に言ってあげたい。帰る頃にはコンビニとガソスタくらいしかやってないよ、と。

 そして一昨日、ようやく山場を越え、異動してから初めて、日の沈む前に帰路に着くことができた。嬉しくて、思わず顔が緩むのをおさえながら「お先に失礼します」 と職場を後にした。「お先に失礼します」って、なんていい響き!まだ私たち以外に人がいる!!

 一緒に山を越えた上司たちと軽く挨拶を交わして、車を家に向かって走らせると、夕日が見えた。

 道路は帰宅ラッシュで混みあっていたけれど、帰宅ラッシュの一員になっていることさえなんだか嬉しくて、早く帰りたそうなドライバー達の中で、ひとりニヤニヤしてしまう。

 家に近づくにつれて、赤い夕日が山の向こうに落ちていく。その光景が、あまりにもきれいで、鼻の奥の方がツーンとしたと思ったらポロポロ涙が出ていた。

 遠くに出かけなくても、有名なスポットに行かなくても、絶景は見られる。心の奥に沁みわたる景色とは、実はいつもそこにあるものだったり、なんてことない光景だったりするのかとしれない。

 遠くに出かけて有名な「絶景」を見に行くのも楽しい。それに加えて、日々の生活の中でも絶景を見つけられる人生は、きっと豊かだと思う。



美味しいごはんが食べたいです