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中国産業スパイの近況(MARKETPLACEの記事)

写真出展:Julien TromeurによるPixabayからの画像https://pixabay.com/ja/users/julientromeur-3630051/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=5089721

 2021年12月9日にMARKETPLACEは、中国の情報機関職員である徐延軍の経済スパイ有罪判決に伴い、中国作業スパイの近況に関する記事を発表した。内容は、中国の産業スパイの手法やその性質、政府や企業の対策などについて概観するものである。特段目新しい情報というわけではないが、分かりやすく近況がまとめられていることから、その概要について紹介させていただく。

↓リンク先(China’s state-sponsored industrial espionage is part of a larger system)
https://www.marketplace.org/2021/12/09/chinas-state-sponsored-industrial-espionage-is-part-of-a-larger-system/

1.本記事の内容について
 ・11月、中国の情報機関職員である徐延軍は、貿易上の機密情報及び経済スパイの容疑で有罪判決を受けた。徐被告は、航空会社の職員からエンジン技術の情報を盗み、エアバスやボーイングのライバル企業に手渡そうとしたとされている。徐はベルギーで逮捕され、アメリカに引き渡されたが、これは中国情報機関職員としては初となる事例である。
 ・中国は、ソーラーパネル、金属、コンピューターチップ、航空機、医療、大学など多岐にわたる産業スパイを行っている。国家カウンター員鄭リジェンス及びセキュリティセンターのオーランドセンター長は、「中国政府が産業スパイを主導していることは間違いなく、製造2025や第14次5か年計画などで10の重要技術を指定している。」と述べており、合法、違法に関わらず全ての手段を使っているとしている。
 ・First SolarのCEOであるマーク・ウィドマーは、この動きを明確に認識していた。First Solarは、中国が模倣できない特殊な技術でソーラーパネルを生産しており、中国との競争に打ち勝ってきたことから、中国から様々なアプローチを受けてきた。ウィドマーは、「中国などからサイバー攻撃を受け続けていたことから、サイバーセキュリティに尽力してきた。また中国の関連企業から、賃料免除、高額の補助金、他の利益などをちらつかせて、中国に生産拠点を移転するよう申し出を受けたこともある。」と述べている。
 ・CSETのバイオテクノロジー責任者のパグリシは、「中国は国家安全保障と経済安全保障を一体のものと考えており、科学技術の発展を重要視している。習近平は、2017年の国家発展改革委員会の報告書において、科学技術が国家の武器であり、中国が強国になるためには、科学技術を強化する必要があるとしている」と述べている。
 ・中国企業と政府との関係は非常に特殊である。中国は科学技術外交官に海外企業との渡りを付ける支援を依頼することが可能であり、更に多額の補助金を受けられ、西側諸国の企業にはない優位性を持っており、結果として西側諸国企業は技術譲渡をせざるを得ない状況に追い込まれることもある。一例として、Icon Aircraftという航空機器のスタートアップ企業の知的財産を、中国の株主が、総会で譲渡するよう求めた事件がある。
 ・ハッキングも知的財産盗難の有効な手段となっている。2015年にオバマ大統領と習近平国家主席は、知的財産に対するハッキングをしないよう合意したが、中国は国家が支援するサイバー攻撃の主たる拡散者である。現在、個々の企業だけでなく、企業が利用している通信企業やサービスプロバイダーなども標的にされるようになっている。また中国は長期戦にも長けており、これが隠れた武器である。西側諸国の企業は四半期ごとの利益を追求しがちであるが、中国は何十年と耐える忍耐力がある。
 ・年間の知的財産の盗難に伴う損害は、6000億ドルと試算されている。OECDの試算では、GDPの1~3%程度に達するとされており、この損害の60~80%は中国由来である。

2.本記事読後の感想
  日本もようやと経済安全保障担当大臣が新設されたが、無任所で手足がない状態であり、実際の効果はそれほどでもない。せいぜい国民の認知を高める程度であるが、あまりニュースとしては注目されていないようで、インターネットですら露出が少ないと感じる。
  このため、各企業に努力してもらうしかないのだが、政府はこの動きをどの程度支援してくれるのだろう。金銭的な援助だけでもかなり違うが、実際には経産省の役人が取締役会などに介入するといった、社会主義的政策になってしまうだろう。先日の東芝の件でも明らかだが、経産省は経済安全保障を自己の権益拡大の手段として捉えており、企業を守るという観点はあまりないようである。
  岸田政権には期待できないため、他の責任野党から経済安全保障の法案を提出するなどして、政権を追い込んでもらうしかないだろう。

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