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暗号資産のマネーロンダリング対策(RUSIの記事)

写真出展:Tamim TarinによるPixabayからの画像https://pixabay.com/ja/users/tamimtaban-23119611/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=6601591

 2022年2月21日に英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)は、暗号資産のマネーロンダリング対策強化策を提言する記事を発表した。内容は、暗号資産の規制の遅れによる不利益を指摘し、今後の取るべき政策について提言するものである。
イギリスは掛け声だけは勇ましいものの、マネーロンダリング対策自体はそれほど進んでおらず、ジョンソン政権の経済重視の政策などにより、今後も進展が遅れることが懸念されている。この点規制が強い日本も同様の問題を抱えており、学ぶべき点が多いと思われることから、参考として本記事の概要を紹介させていただく。

↓リンク先(Why the UK Needs to Accelerate its AML/CFT Efforts on Cryptoassets)
https://rusi.org/explore-our-research/publications/commentary/why-uk-needs-accelerate-its-amlcft-efforts-cryptoassets

1.RUSIの記事について
 ・暗号資産によるマネーロンダリング及び金融テロ対策を公表してから2年が経過した。財務省の報告書では、民間企業のマネーロンダリング対策の暗号資産登録は遅々として進んでいないと指摘されているが、政策の進展はより幅広い観点から評価する必要がある。つまり、暗号資産の発展は日進月歩であるが、政策や規制の進展は牛歩であるということである。
 ・暗号資産はここ2年で飛躍的発展してきた。銀行ではなく自己完結のソフトにより運営される分散型金融は、ハッカーなどによる盗難などの金融犯罪のリスクの温床となった。非代替制トークン(NFTs)も、マネーロンダリングの危険性を高める可能性が指摘されている。その他、ブロックチェーンを活用した自律分散型組織(DAOs)は会社の所有権や社会組織といった既存のモデルを一変させる潜在力を持っている。
 ・現在の所、イギリス政府は150の暗号資産事業の申請のうち、31件しか登録を認めていない。これはイギリスの政治家が、新興技術によりもたらされる脅威に対して懸念を抱いていることの現われでもある。しかし政策や規制の遅れは、フィンテックの在り方に関する方向性を不透明にすることになり、結果としてフィンテックのリーダーとしての地位を危うくする。
 ・他国も同様に、暗号資産の対応に苦慮している。シンガポールは暗号資産事業を4つしか認可しておらず、ドイツは3つしか認可していない。日本は暗号資産の監視体制を構築しているものの、5年で28事業しか認可していない。こうして見ると、イギリスが決して遅れているとは言えない。しかも、申請そのものも不適格なものであることも多く、こうしたことも遅れの一因となっている。
 ・暗号資産の違法な金融活動は比較的少ないものの、このことについての懸念は確かなものでもある。欧州警察組織によると、犯罪組織が暗号資産をマネーロンダリング作戦に組み込んでいるとされている。しかし、現在の状況は改善されなくてはならず、以下に示す4つの取組が必要である。
 ・第一に、政府機関職員の研修が必要である。適切に違法金融を監視するには、フィンテックの動向を理解するだけでなく、技術、ツール、分析能力を備える必要がある。
  第二に、官民パートナーシップが重要である。このことにより民間の専門性を活用しつつ、政府側の提案を適切に民間企業に周知することが可能となる。
  第三に、マネーロンダリング対策に失敗した企業に対して、強力な説明責任を課さなくてはならない。違法金融が見逃されれば、規制当局の信頼と権威を損なうことになる。
  第四に、政府全体の取組が必要である。マネーロンダリング対策を単体として見るのではなく、取り締まり、税制、他の問題も含めて見ることにより、省庁間での連携を強化するべきである。
 
2.本記事についての感想
 イギリスは現実的であり、トライアンドエラーを繰り返しながら改善を進めていく国である。しかしそのイギリスであっても、暗号資産については手をこまねいており、有効な対策を打てていないのである。分散型金融などの技術は、中央集権への挑戦であり、地方分権ならぬ個人・組織分権といった状況変化をもたらしている。このことへの対応は容易ではなく、前例も泣かないことから、今後のイギリスの取り組みに期待したい所である。
日本に目を向けると、トライアンドエラーや適切な水準での規制が最も苦手な国であることから、暗号資産については過剰とも言えるような規制を強いている。マウントゴックス事件やコインチェック事件を受けて、羹に懲りてなますを吹くといった状況となっている。事件の発生を受けて対処するのはいいのだが、病理現象を見て全体を否定するといった悪癖が、日本の発展を妨げているとも言える。ドローンについてもそうであるが、日本ははじめは規制しないものの、一つの事件をきっかけに極端な規制に走ってしまう。こういった精神性を改革する必要があるが、お上意識が強く、パターナリスティックな政府を好む日本人には多くを期待できないだろう。こういった状況を克服するには、強い指導者が必要である。岸田政権には全く期待できないため、今度の参議院選挙で自民党を大敗させるしかないだろう。

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