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攻撃的サイバー作戦とNATOの戦略(CSCの記事)

写真出展:Vik MによるPixabayからの画像https://pixabay.com/ja/users/4508513-4508513/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=3703161

 2022年1月25日にサイバー空間ソラリウム2.0プロジェクト(旧サイバー空間ソラリウム委員会)が、ウクライナ侵攻を巡るNATOのサイバー作戦に関する記事を紹介した。内容は、ロシアの戦争未満のサイバー作戦にNATOがどのように対処するべきかを低減するものである。一般的にサイバー作戦は戦争未満の活動であるとされているが、その影響力は戦争に匹敵するものであり、サイバー作戦の抑止のためには攻撃的サイバー作戦をいかに活用するのかが重要になる。攻撃的サイバー作戦は日本ではほとんど議論されておらず、最新の議論については全くと言っていいほど情報がない。しかしサイバー作戦の重要性はますます増大しており、本件に関する状況把握が必要不可欠である。今回の記事は最新の状況を紹介した優良な内容であることから、本記事の概要を紹介させていただく。

↓リンク先(PRESSING QUESTIONS: OFFENSIVE CYBER OPERATIONS AND NATO STRATEGY)https://mwi.usma.edu/pressing-questions-offensive-cyber-operations-and-nato-strategy/

1.記事の内容について
 ・ロシアがウクライナ侵攻の気配を見せており、その前段としてグレーゾーン領域のサイバー作戦を展開している。報復軍事行為に至らない閾値以下でのサイバー作戦によりウクライナ政府を機能不全にしようとしており、政府のウェブサイトを改変するなどの攻撃を行っている。マイクロソフトによると、政府システムに破壊的なマルウェアを感染させるなどの攻撃も行っており、ベラルーシのゴーストライターという犯罪集団が関与しているとしている。
 ・ウクライナはNATO加盟国ではないものの、NATO諸国はこの危機にどのように対処するのかという課題に直面しており、特にサイバー作戦をどのようにして抑止力として活用するのかが問われている。NATOのサイバー防衛の取組はごく最近のことであり、2007年のエストニアに対するロシアのサイバー攻撃を受けて本格化した。しかも戦時におけるサイバー作戦に着目しており、戦争未満のサイバー作戦については検討が遅れてきたが、同盟を強化するためには平時におけるサイバー作戦を考慮に入れるべきである。
 ・NATOのサイバー戦略は、主に防衛と強靭性に重きが置かれてきた。ネットワークの保護と強靭性の強化が重視されており、2014年の高度サイバー防衛方針、2016年の共同宣言などで、集団的サイバー防衛、サイバー防衛訓練、情報共有などが謳われてきた。しかしNATOは攻撃的サイバー作戦を徐々に組み込んできており、2018年のブリュッセルサミットにおいて、サイバー空間作戦センターを創設し、各国が協調して攻撃的サイバー作戦を実施する仕組みを構築した。2021年6月、NATOは包括的サイバー防衛方針を策定し、サイバー攻撃作戦の防衛果たす役割を明確化した。
・しかし紛争シナリオにおけるサイバー作戦の活用については限定的であり、ロシアの継続的な攻撃などの新しい脅威に対して有効なものとはなっていない。具体的には、NATO加盟国のグレーゾーン領域の攻撃的サイバー作戦への関与と軍事方針に不一致があるのである。
 ・このような状況下において、NATO加盟国各国は、攻撃的サイバー作戦についての定義を明確化している。2020年、イギリスは国家サイバー軍に多額の予算を計上することを発表し、2022年国家サイバー戦略において攻撃的サイバー作戦の役割を強調した。2021年11月、国家安全保障局長のポール・ナカソネ将軍とイギリスのGCHQは、サイバー空間における敵対的作戦を抑止するために、両国が協調して報復するという共同声明を発表した。
 ・現状を鑑みるに、NATOは戦争未満の抑止戦略に攻撃的サイバー作戦を組み込むべきだろう。また攻撃的サイバー作戦の実行に伴う損害や結果などについても同時に議論するべきである。しかし今の所、攻撃的サイバー作戦についてNATO加盟国は合意に至っていないことから、このことに取り組まなくてはならない。攻撃的サイバー作戦は、同盟国が管理するネットワークを通じてなされることから、各国が協調できなければ、実施不可能となるのである。
  その他の問題として、サイバーインテリジェンス作戦についても合意形成するべきである。同盟国であっても機密情報の共有には極めて慎重であり、インテリジェンスと軍事的優先順位との調整は容易ではない。どの国がサイバー作戦を指揮するのか、いつの時点で除法共有するのかといった課題に対処しなければならない。
  最後に、攻撃的サイバー作戦はエスカレートする危険をはらんでいることから、サイバー作戦の基準を明確化する必要がある。特にロシアとの対話によりサイバー作戦を巡る不確定要素を軽減する必要があり、サイバー作戦の位置づけについて各国での合意形成に努めるべきである。

2.本記事についての感想
 サイバー空間ソラリウム委員会(CSC)は1月末をもって解散されることになったが、事業自体はサイバー空間ソラリウム2.0プロジェクトに引き継がれており、今後もサイバー政策関係の記事を紹介していくことになっている。委員会のメンバーが多数残留し、サイバー政策についての優良な提言がなされることが期待されていることから、今後も関連記事を紹介することとしたい。
さて本記事の内容に入るが、今回はロシアのウクライナ侵攻にちなんだサイバー作戦を巡るものとなっている。ロシアはしばしばサイバー作戦により周辺国に影響を及ぼしており、戦争を回避しつつ戦略目標を達成しようとしている。言わばいやがらせによる戦略目標達成ということであるが、これに対してNATOは有効に対処し得ていない。攻撃的サイバー作戦は民主主義国と相性が悪く、たとえ威嚇目的であってもサイバー公的を用いることは、国民に不安を与えることになり、各国の国民から支持を得られなくなる。このような事態に対処するためには、情報公開と作戦の明確化が最重要である。どのようにしてこのことを成し遂げるのかは今後の課題であるが、現状を鑑みるにこのことは急務であり、今後のNATOの対処を見守ることとしたい。また日本も積極的に情報収集に努めるべきであり、来るべきデジタル社会の実現において、サイバー作戦を軍事方針に組み込めるようにするべきである。
最後にウクライナ侵攻について言及しておきたい。本件についてはアメリカとイギリスが盛んにロシアが侵攻すると宣伝しており、実態が見えなくなっているように思う。冷静に考えれば、ロシアは大規模に軍をウクライナ国境に配備することを繰り返しており、今回だけ特別に考える必要性はないはずである。また地政学的にも軍事的にもウクライナを侵攻する利益があまりなく、せいぜいクリミア併合のようにドンバス地区を併合する程度の軍事行為しか成し得ないだろう。
アメリカがウクライナ侵攻を煽っているのは、バイデン政権の支持率上昇やネオコンの台頭などが指摘されているが、正直な所良く分からない。英語メディアに頼りきりになると、アメリカやイギリスのプロパガンダに染まってしまうため、情報は多様に収集するべきだろう。

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