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香港は金融センターとして生き残れるのか?(ハドソン研究所の記事)

 ハドソン研究所の2021年7月9日に、香港のオンラインイベントに関する記事を発表した。内容は、香港の現状及び今後の金融センターとしての行方を議論するものである。最近香港の話が下火であり、改めて注意喚起が必要と考えられることから、本記事の概要を紹介させていただく。

↓リンク先(Can Hong Kong Remain a Global Financial Center?)
https://www.hudson.org/research/17086-transcript-can-hong-kong-remain-a-global-financial-center

1.記事の内容について
・香港は、国家安全維持法の施行により、完全に中国共産党の権威主義的体制下に置かれることになった。2020年8月のリンゴ日報のジミー・ライの拘束は、この象徴である。今年5月にはジミー・ライの金融資産が凍結され、リンゴ日報の親会社のネクストデジタルの株も凍結されたのであり、出版社のオーナーを標的とした初の事例となっている。6月にはリンゴ日報本社の資産が凍結され、複数のジャーナリストが逮捕されるに至った。米国商工会議所の調査によると、所属企業の40%が国家安全維持法を理由として香港から撤退する意向を示している。
  ・香港には85000名ものアメリカ人が住んでおり、1200以上の企業が香港でビジネスを行っている。香港では経済的な脅迫行為が横行しており、航空会社へは台湾人の顧客リストについて調査が入り、衣服関係企業へはTシャツにどのような言葉をプリントするのかについて調査が入った。香港警察はシティ銀行やHSBCに対して、りんご日報の株を取り扱わないよう指示している。このような状況から、香港でのビジネス環境は非常に厳しいものになっている。
  ・ジミー・ライの逮捕に至たるまでの過程は次の通りである。2019年に中国の報道官などに名指しで標的にされた。リンゴ日報の本社で逮捕されたが、48時間で釈放された。その後も主任編集者や複数の職員が拘束された。次に資産が凍結され、株からの配当金を受け取ることができなくなった。シンガポールの銀行口座も凍結され、親族や銀行員が口座を利用した場合に、7年の懲役刑になり、かつ罰金を科されると脅迫された。
 次にリンゴ日報の資産や銀行口座も凍結された。取締役会途中に記者が逮捕され、多くのメディアが操業停止に追い込まれた。
その他資産の停止により支払いが滞り、ビルのリースについても違反として摘発されることになった。
・香港ではビジネスと政治が一体化してしまっている。これに対抗するために創設されたのが、マグニツキー法であり、人権の侵害者や政治を私物化する政治家の資産を凍結するものである。本法により、ジミー・ライの銀行口座を凍結すれば、キャリー・ラムの銀行口座も凍結されるのである。中国共産党は本法に協力に反発しているが、これはいい兆候である。中国共産党員を民主主義国に請願することにより、マグニツキー法の制裁対象リストに加えられることになり、中国共産党の注意は香港から西側諸国に向けられるのである。また、キャリー・ラムの制裁後に、海外の銀行のみならず、中国の銀行も取引を停止することになったことからも、効果的であることがわかる。
・数か月前に、香港にて自由委員会が設立された。これは、中国の圧政に対して企業集団が抵抗することを支援するものである。ではこれから可能なことは何か?まずは、オリンピックの開催地を変更する運動である。そして、収容されている政治犯の釈放を求めることも重要である。更に、政務司司長や香港警察長官、統一戦線の構成員などへの制裁も強化する必要がある。その他の制裁対象として、制裁対象者の親族や受益者も含まれるべきである。
・中国ビジネスは今後うまくいかなくなる。中国で大儲けした後、突然に中国共産党に利益を接収されるのであり、権力と融和することなくして生きられない。では今後金融センターとして生き残れるのか?企業と政治で不和があっても共存するという希望的観測もあるだろうが、その見込みは暗い。中国は香港をある種国内の都市と同等として扱いつつ、マスコット的に利用しようとしているが、一国二制度が崩壊した現状では、金融センターとはみなさないだろう。


2.本記事読後の感想
  中国はこれまでも香港への支配力を強めようとしてきたが、なぜ2020年に急速に動いたのか。第一の理由は、香港の報道の自由により、中国共産党を批判する情報が出回ることである。第二の理由は、香港が金融センターであることから、中国本土の資産が海外に流出することを防ぐためである。海外に資産が流出するということは、中国本土の富裕層も海外に逃げ出すということも意味しており、抜け穴を塞がなければ、中国共産党が持たないということなのだ。
  中国は革新的利益を着実に手にしつつあり、チベット、新疆ウイグル、香港と次々に支配下に置いてきた。次は台湾、台湾の次は尖閣・沖縄であることは明白であり、香港は明日の沖縄であるという緊張感を持たなければならない。
  クアッドなどで中国の封じ込めに取り組んでいるものの、日本の軍事的コミットはあまりにも弱い。防衛費は増額してきているが、韓国よりも少ない額であり、海保についてもそれほど増強されておらず、実効性を担保する内容はほとんどない。そこを外交により補う必要はあるが、残された時間はほとんどない。冬季北京オリンピックが開催された後は、中国は遠慮する必要はなくなるのであり、今からでも補正予算で防衛費を増額する必要がある。防衛費も今回の衆議院選挙の争点の一つになって欲しいものである。
  その他重要な論点としては、最近聞かなくなっていた、金融センターの招致である。日本では大阪がいち早く受け入れを表明したが、その後の具体的な動きがみられないように思われる。変化の急速なこの時代に対応しきれていないように思われ、このような点からも日本の覚醒が必要だろう。

 
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