見出し画像

高温及び低温による死亡リスク:各国比較(3)(Lancetの論文)

写真出展:Dr StClaireによるPixabayからの画像https://pixabay.com/ja/users/matryx-15948447/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=5059839

今回の記事は続編である。前回までの記事は、以下のリンクを参照

https://note.com/karzy_kemaru/n/n5f28d0a084c7

https://note.com/karzy_kemaru/n/n90412917faea

2.記事投稿者のまとめ
  本記事執筆時点において、6月に梅雨明けし、7月初旬としては記録的な猛暑となっており、そこに電力不足が重なって熱中症や死亡などのニュースがメディアを賑わせている。こういったニュースを見ると地球温暖化が脅威であるように見えるが、実際には低温の方が脅威であることが論文により証明されている。
 今回の論文は医学雑誌に掲載されたものであり、内容は医療統計学を駆使したものとなっていることから、非常に難解なものとなっている。おそらく原文を当たってもほとんど理解できないと思われ、統計学の素養は最低でも準一級程度の理解は必要だと考えられる。従って、今回の記事ではなるべくわかりやすくまとめたものの、やはりわかりにくさは否めないと考えられることから、以下にポイントをまとめておきたい。

 ①     死亡率の数値について
   表1に示されている数値は、全体の死亡のうち、どれだけの人数が気温要因で死亡したのかを示している。カッコ内の数値は死亡率の現実的な振れ幅を示しており、下限と上限の幅を提示している。(本表はパーセンタイル表示であり、単純な%表示ではないが、イメージとしては%として考えても問題ない。)
   例えば日本で言うと、高温の場合は0.27%~0.36%の間に留まり、低温の場合は9.32%~10.22%の間になるということである。つまり、どんなに高温の影響が大きくても0.36%に留まるのに対し、どんなに低温の影響が低くても9.32%になるということを示している。この大きな差を見れば、低温が高温よりも危険であることは一目瞭然である。また低温の死亡率が高温の死亡率を下回った国が存在せず、国による差異も少ないことから、低温が高温よりも脅威であることは疑いないだろう。

 ② 気温とその影響について
   生存最適気温というものが各国で設定されており、グラフの縦棒線で示されてい
る。この数値を基準として高温と低温を分けて数値を分析している。このグラフを見ると、全体として低温の方が影響力は振れ幅が大きくなっていることがわかる。(オーストラリアやスウェーデンのように、高温の振れ幅が大きい国もあるが、これらの国は低温における振れ幅も大きく、温度の影響の受けやすさを示しており、単純に高温の死亡率が高いとは言えない。)
   時期により温度の幅が異なることから、特定の時期における最適生存最適気温が具体的に何℃になるのかといったことは不明であるが、少なくとも極端な気温(平均最高気温や平均最低気温)があった場合における死亡率の振れ幅(灰色の網掛け部分)は、それなりに大きく、低温については中度のものであっても、振れ幅がそれなりに存在し、相対危険度を高める傾向にあることがわかる。

 ③ その他参考点について
   まず、どの病気が気温によるものとしているのかという選別の部分については不明だった。例えば心筋梗塞については、高温の時期と低温の時期を比較した場合において質的な差異があるが、その差に着目して統計的に死亡率の範囲を求めたと考えられる。
   ただ、心筋梗塞については遺伝的要素や気温以外の生活環境などについても考慮されるべきと考えられ、低温を要因とすることがそもそも可能なのか疑問が残った。
   最も、大量の死亡数を取り扱っている以上、直接的な死因を詳細に取り扱うことはできなかったものと考えられ、また先行研究や経験則で死因と気温との関係性についてある程度あたりを付けるといったことをしていたと考えるのが妥当だろう。
   医学者が死因を判定しているということなので、選別の仕方について素人がとやかく言える部分ではないと考えられることから、前提について議論したとしても結論に変更がない範囲の影響に留まるだろう。

 ④ 論文読後の感想
   今回の論文は、気象学や地球環境などの論文ではないことを強調しておきたい。つまり、医学的に気温の影響を検証したということであり、定性的に高温や低温が健康被害をもたらすといった曖昧な内容ではない。よくテレビをはじめとしたメディアは、自称専門家のような方々を起用して専門外のことまで発言させるといったことをするが、今回はそのようないい加減な内容ではないのである。気象学者や環境学者がどのような説明をしようと、気温変動に伴う死亡者についてこれ以上厳密かつ正確な説明はできまい。もし地球温暖化に伴う死亡率が深刻になるというのであれば、数値で医学的に証明してもらいたいものである。ただ厳密な議論では勝てないということで、下らない扇動をしてくるだろう。1件の死亡例をさも数万件のごとく宣伝するだろう。
   ただ本論文は非常に難解であり、医療統計について十分に把握していなければ説明することもできない。
   低温が高温よりも被害をもたらすという結論が、統計的に示された意義は大きいだろう。考えてみれば簡単なことで、高温の地域は既に存在しており、エアコン以外の対策はそれほど必要ない。対して低温は、燃料を必要とする多様な暖房が必要となり、防寒着の着用、免疫力低下のための対策など、高温よりも多くの対策が必要となる。こういった観点からすると、やはり低温の対策を優先するべきであり、温暖化対策の下で誤った政策を策定してはならない。
 
   ただこの論文の結論について、地球温暖化論者が2015年以降に過去最高気温を記録しているなどとして、下らないレッテル貼りをしてくる可能性も否定できない。そうは言っても問題は人の生死であり、命が危険にさらされるという状況が明白になれば、こういった議論も説得力を失うだろう。例えば、高温の方が脅威であるとすると、1990年代前半の死亡率が大幅に増加していなくてはならないが、スウェーデンの死亡率には顕著な増加は見られない。エアコンの導入によるものであるという反論があるかもしれないが、死亡率の幅を見ても大きな外れ値が生じる可能性は少ないと見込まれ、単なる仮定の話でしかないだろう。
  
 英文を読んでわからないという方は、メールにて解説情報をご提供させていただきます。なにぶん素人の理解ですので、一部ご期待に沿えないかもしれませんので、その場合はご容赦願います。当方から提供した情報については、以下の条件を守ったうえで、ご利用いただきますようよろしくお願いいたします。

(1) 営利目的で利用しないこと。
(2) 個人の学習などの目的の範囲で利用し、集団での学習などで配布しないこと。
(3) 一部であっても不特定多数の者が閲覧可能な場所で掲載・公開する場合には、出典を明示すること。(リンク先及び提供者のサイト名)
(4) 著作元から著作権侵害という指摘があった場合、削除すること。
(5) 当方から提供した情報を用いて行う一切の行為(情報を編集・加工等した情報を利用することを含む。)について何ら責任を負わない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?